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伝説の超難問の解法まとめ – 1998年東大 数学 後期 第3問

2022 4/01
東大
2022年4月1日2026年3月3日
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その他の解法その1:1998年東大後期理系数学第3問には超簡単な解法があるのです!(2022)

 本解法は他の解法とは異なり、証明に不変量関数を必要としません。驚くべき画期的な証明法ですが、どのようなものなのでしょうか。

 例によって、表記方法は本稿固有の表記にアレンジされています。

 使用する記号を、改めて定義します。

G = \{ 1個の白オセロを起点に、操作1および操作2を施して生成されるオセロ列 \}

G' = \{ 1個の黒オセロを起点に、操作1および操作2を施して生成されるオセロ列 \}

 また、オセロ列 g \in \mathfrak G に操作1または操作2を施すことを、「 \text{操作} (g) 」と表記します。

 このとき、 元記事は以下の段取りで証明を行っています。

  1. 操作1及び操作2には、それぞれ逆操作が定義できる
  2. G の各要素に操作と逆操作を有限回施して得られる集合を CG と表記するとき、定義から明らかに、 G \subset CG が成り立つが、 操作と逆操作は CG 上で閉じている
  3. したがって、 g \notin CG なら \text{操作} (g) \notin CG である
  4. CG は1個の白オセロから生成されるが、1個の黒オセロは CG の要素ではない。よって③により、1個の黒オセロにどのような操作を施しても CG の要素になることはない
  5. したがって CG \cap G' = \emptyset なので G \cap G' = \emptyset が成り立つ
  6. 長さ 3m+2,m=0,1,2,\cdots の白オセロ列 wg はすべて G’ の要素なので、 wg \notin G である。すなわち、長さ 3m+2 の白オセロ列は生成できない

 元記事では④の主張「1個の黒オセロは CG の要素ではない」を自明のこととして無証明で記述してありますが、これはあまり自明でない気がします。

 G’ の各要素に操作と逆操作を有限回施して得られる集合を CG‘ と表記するとき、1個の黒オセロ●が CG の要素ではないことと、 CG \cap CG' = \empty が成り立つことは同値です。まず、 CG \cap CG' = \empty なら1個の黒オセロが CG の要素ではないことは明らかです。

 逆に CG \cap CG' \ne \empty であるとき、 g_0 \in CG \cap CG' に対して一連の \text{操作}_{b\_1},\text{操作}_{b\_2}, \cdots , \text{操作}_{b\_k} が存在して、

g_0 = \text{操作}_{b\_k}(\text{操作}_{b\_k-1}( \cdots(\text{操作}_{b\_1}(\text{●}) \cdots))

が成り立ちます。

 したがって、

 \text{●} = \text{操作}_{b\_1}^{-1}(\text{操作}_{b\_2}^{-1}( \cdots(\text{操作}_{b\_k}^{-1}(g_0) \cdots))

が成り立ちます。 g_0 \in CG なので、1個の黒オセロ●は CG の要素です。以上、1個の黒オセロ●が CG の要素ではないことと、 CG \cap CG' = \empty が成り立つことが同値であることが証明できました。

 ここで再び項番④に戻ります。1個の黒オセロ●が CG の要素でないということは、●に有限回の操作、逆操作をどのように施しても○になることはない、ということで、一見自明に見えますが、実際は CG \backslash G は空集合ではないのでそれほど自明ではありません。

 たとえば ●-● は G の要素ではありませんが、操作2によって ○-○-○ ∈ G ⊂ CG になるので CG \backslash G の要素です。このような「G の要素でないが操作した結果 G の要素になる」 オセロ列が存在するので、そのようなオセロ列のすべてが CG‘ の要素でないことが証明できないと CG \cap CG' = \empty が成り立たず、これと同値である「1個の黒オセロ●が CG の要素ではない」ことは証明できません。

 以上のように、「1個の黒オセロ●は CG の要素でない」ための必要条件が「G の要素でないが操作した結果 G の要素になるすべてのオセロ列に対し、どのように操作、逆操作を施しても●にならないこと」という、あまり自明ではないかなり厳し目なものなので、やはり何らかの証明が必要であると考えています。

その他の解法その2:本質は3次の二面体群 – 1998年東大 数学 後期 第3問 小問2(2025)

 3次の二面体群というのは、正三角形を重心を中心として120度回転させる操作と、裏返す操作の組み合わせです。どのように組み合わせて操作しても元の正三角形に一致します(上下さかさまといったことは起きない)。

 操作の組み合わせのバリエーション(すなわち3次の二面体群の要素)には120度回転、240度回転、裏返し、裏返して120度回転、裏返して240度回転、および「何もしない」の6種類があります。回転と裏返しをどのように組み合わせても、これ以外にはなりません。

 解法1-2の回転行列 W と反転行列 B も3次の二面体群を生成します。ここで重要なのは、

W2 = BWB

が成り立つことです。これは実際に行列計算すれば確認できます。

 ここで、 \mathfrak{G} から3次の二面体群 D3 への写像 d を、

d(g) = g の白オセロに W を、黒オセロにB を対応させて、オセロ列の並びの通りに行列積を計算した結果

と定義します。 たとえば

\begin{aligned}
d(\text{○}) = &  W, \\
d( \text{○-●}) = & WB, \\
g(\text{○-○-○})= & W^3=I 
\end{aligned}

です。ここに I は単位行列です。

 このとき、W2 = BWB であることから g \in \mathfrak{G} に対し

d(\text{操作}2(g)) = d(g)

が成り立つことが導けます。さらに、  g \in G の左側から作用させる操作1の数を l 、右側から作用させる操作1の数を r と置くとき、

l r d(g)
偶数偶数W
奇数奇数I
偶数奇数BW
奇数偶数WB

が成り立ちます。

 長さ 3m+2 の白オセロ列 wg において d(wg) = W^2 ですが、 g \in G なら d(g) \ne W^2 なので、 wg \not\in G すなわち長さ 3m+2 の白オセロ列はできません。

 また、表の1行目、2行目から直ちに、解法3の必要条件が導出できます。さらに、拡張オセロ列において交代和が不変量関数になることも導出できます。

 オセロ列に二面体群を対応させる証明方法は、他の証明方法に比べて計算が楽(W2 = BWB の式変形だけで証明できる)なほか、他の証明で使用している必要条件も簡単に導出できるという優れた性質を持ちますが、

  • オセロ石に行列 W,B を対応させる
  • W2 = BWB が成り立つことに気づく

というハードルは決して低くありません。筆者は一番数学っぽいと思いますが、大学入試の回答としてどうよと言われると、少々アレな気がします。

本問の解法パターンは本質的に3種類

 以上のように、本問の証明の証明パターンは大体3種類です。

 史上最強と言われる本問も、必要条件の具体的な表現がわかってしまえばどうということはありません。結局のところ本問の難しさは、特段のヒントもない中、どうやってそれを着想できるかという点に有ります。

 後期試験なので、数学的才能に特に秀でた学生を採りたい、という意図が出題者にはあったのかも知れませんが、この難易度はどう見てもやり過ぎです。もしかして出題者は、現に今そうなっているように、後世に残る不滅の金字塔的ネタ化を狙っていたのかも知れません(そんな訳ない)。

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