高次方程式の実数解の個数 – 2024年京大 特色入試 数学 第2問

2024年京大 特色入試 数学 第2問は高次方程式の実数解の個数を求める問題です。問題文は以下のとおりです。
x^{100} -3 x^{10} -2 x -1 = 0 を満たす実数 x の個数を求めよ。
簡単に求められそうな気もしますが、特色入試なのでそんなはずはありません。どの辺がやばいのか、早速見ていきましょう。
2024年京大 特色入試 数学 第2問 の解法
まず、 f(x) =x^{100} -3 x^{10} -2 x -1 と置いておきます。
x=±1 がf(x) = 0 の解になっていないかどうか調べる
まず f(x) の定数項が -1 であることから、 x = ±1 が f(x) = 0 の解かもしれない、と当たりをつけてみましょう。残念ながら、 f(±1) ≠ 0 でした。さすがは特色入試。そんなに甘くありません。
因数分解などの代数的手法は筋が悪いことに気づく
他に整数解がないか色々代入してみるとか、 f(x)=0 の複素数解は必ず互いに共役な対になるので、これをてこにできないかとか、ド・モアブルの定理が使えないかとか、色々考えてみましたがあまりうまく行きません。この手の代数的アプローチはあまり筋が良くなさそうです。
f"(x) の増減表を書いてみる
以上の考察から、ちょっと泥臭いですが導関数と増減表を使って攻めることにします。
\begin{aligned} f^{''}(x) & = 9900 x^{98} -270 x^{8} \\ &= 90x^8 ( 110x^{90} -3) \end{aligned}
なので、 \alpha = \left (\displaystyle\frac{3}{110} \right ) ^{\frac{1}{90} } と置くとき、
\begin{aligned} f^{''}(x) & = 0 (x=0, \pm \alpha) \\ f^{''}(x) & < 0 (0 <|x| < \alpha) \\ f^{''}(x) & > 0 (\alpha <|x| ) \\ \end{aligned}
です。これをもとに f' (x) に関する増減表を書くと
x | … | -α | … | 0 | … | α | … |
f'(x) | ↗ | ↘ | -2 | ↘ | ↗ | ||
f''(x) | + | 0 | – | 0 | – | 0 | + |
となります。
f’(0) = -2 < 0 であることと、f’(x) が 0 < x < α の範囲で単調減少であることから、 f’(α) < 0 です。一方 α < x のとき、 f’(x) が単調増加なのと x が十分大きいときに f’(x) > 0 なので、 f’(x) = 0 は 0 < x の範囲で実数解を1つだけ持ちます。その解を β と表記します。
次に x < 0 の範囲でどうなっているかを調べます。ポイントは f'(-α) の符号です。 \alpha ^{90} = \displaystyle\frac{3}{110} なので、
\begin{aligned} f'(-\alpha) & = 100(-\alpha)^{99} -30(- \alpha)^9 -2 \\ & = (-\alpha)^9(100 \alpha^{90}- 30) -2 \\ & = (-\alpha)^9( 100 \times\frac{3}{110} -30) -2 \\ & = -\frac{300}{11} \times (-\alpha)^9 -2 \\ & = \frac{300}{11} \alpha^9 -2 \\ & = \frac{300}{11} \times \left (\frac{3}{110} \right ) ^{\frac{1}{10} } -2 \end{aligned}
ですが、
\frac{300}{11} \times \left (\frac{3}{110} \right ) ^{\frac{1}{10} } >2
すなわち
\frac{3}{110} > \left (\frac{11}{150} \right ) ^{10}
が成り立てば、 f'(-α) > 0 です。
ところが、
\frac{3}{110} > \frac{1}{10^2} > \left (\frac{1}{10} \right ) ^{10} >\left (\frac{11}{150} \right ) ^{10}
です。
よって f'(-α) > 0 ですが、 f'(x) は x < -α の範囲で単調増加でかつ、 x が十分小さいときに f'(x) < 0 であること、およびf'(x) は -α < x < 0 の範囲で単調減少でかつ、 f'(0) < 0 であることから、f'(x) = 0 は x < -α の範囲に1つ、-α < x < 0 の範囲に1つ実数解を持ちます。それらをそれぞれ δ , γ と置きます。
f(x) の増減表を書いてみる
以上の考察から f(x) の増減表を書いてみると、以下のようになります。
x | … | δ | … | γ | … | β | … |
f(x) | ↘ | ↗ | ↘ | ↗ | |||
f'(x) | – | 0 | + | 0 | – | 0 | + |
α、β、γ、δ の大小関係は以下のとおりです。
\delta < - \alpha < \gamma < 0 < \alpha < \beta
γ ≦ x ≦ β の範囲で f(x) は単調減少なので、 f(β) < f(0) = -1 < 0 です。f(δ) についても正負を明らかにしたいのですが、 まず δ と -1 の大小を明らかにします。
-1 < -α ですが、x < -α の範囲で f'(x) > 0 となるのは δ < x < -α のときだけです。 f'(-1) = -72 < 0 なので、 -1 < δ でなければなりません。
-1 ≦ x ≦ δ の範囲で f(x) は単調減少なので、f(δ) < f(-1) = -1 < 0 です。よって f(β) 、 f(δ) は両方とも負であることがわかりました。
x の絶対値が十分に大きいとき f(x) > 0 なので、 f(x) = 0 の実数解の個数は f(γ) > 0 なら4つ、 f(γ) < 0 なら2つであることが、増減表から直ちにわかります。
f(γ) の正負を判定する
とは言うものの、γ や f(γ) の値を具体的に計算することなど、とてもできそうにありません。そこで、いろいろな値を f'(x) に代入して γ の値を絞り込んでいきます。判定ルールは以下のとおりです。
- x < 0 かつ f’(x) > 0 ならば、 x < γ
- δ < x < 0 かつ f'(x) < 0 ならば、 γ < x
判定ルールは f'(x) の増減表から導き出しています。 x < 0 のとき、f'(x) > 0 であるための必要十分条件は δ < x < γ なので、これらの条件は明らかです。
このように γ の存在範囲を具体的な値で絞り込んでいけば、存在範囲の両端で f(x) の値は具体的に計算できるので f(γ) の符号判定ができるはずです。早速取り組んで行きたいところですが、その前に f(γ) をなるべく少ない次数で表現しましょう。
f(\gamma) = \gamma ^{100} - 3\gamma ^{10} - 2 \gamma -1
ですが、
f'( \gamma) = 100 \gamma ^{99} - 30 \gamma ^{9} -2 = 0
なので、
\gamma^{100} = \frac{3}{10} \gamma^{10} + \frac{1}{50} \gamma
です。これを f(γ) の式に代入して
\begin{aligned} f(\gamma) & =\frac{3}{10} \gamma^{10} + \frac{1}{50} \gamma - 3\gamma ^{10} - 2 \gamma -1 \\ & = - \frac{27}{10} \gamma^{10} -\frac{99}{50} \gamma -1 \\ & = -\gamma ( \frac{27}{10} \gamma^{9} +\frac{99}{50} ) -1 \end{aligned}
です。
いよいよ当たりをつけに行きます。
f'( x) =100 x ^{99} - 30 x ^{9} -2
なので X = x9 と置いて
g( X) = 100 X ^{11} -30 X -2
と定義すると、g(X) と f(x) の正負は当然連動します。
まず、判定条件①である、 g(X) > 0 となる X を探します。X の絶対値が大きいほど右辺第2項の値が大きくなって、全体が正の値になりそうですが、あまり大きくしすぎると右辺第1項(負の値です)の絶対値が大きくなってまずい影響が出てきます。
そんなこんなを考慮して、まず X = - \displaystyle\frac{1}{10} で試してみます。すると
\begin{aligned} g( - \frac{1}{10}) = & -\frac{100}{10^{11}} +30 \times \frac{1}{10} -2 \\ = & -\frac{100}{10^{11}} +3 -2 \\ = & 1 -\frac{1}{10^{9}} > 0 \end{aligned}
なので、
f'(- \left ( \frac{1}{10} \right)^{\frac{1}{9}} ) > 0
であり、判定条件①より
- \left (\frac{1}{10} \right)^{\frac{1}{9}} < \gamma
であることがわかりました。
この評価を使って、
\begin{aligned} f(\gamma) & = -\gamma ( \frac{27}{10} \gamma^{9} +\frac{99}{50} ) -1 \\ & > -\gamma \left \{ \frac{27}{10} \times(- \frac{1}{10}) +\frac{99}{50} \right \} -1 \\ & = \frac{171}{100} \cdot (- \gamma) -1 \end{aligned}
を得ますが、ここでもし
\gamma < -\frac{100}{171}
が成り立てば、 f(γ) > 0 が成り立ちます。
これが成り立つかどうかは - \displaystyle\frac{100}{171} が判定条件②を満たすかどうかでわかりますが、判定のための計算がぞっとするようなものになりそうなので、
-\frac{100}{171} = -0.5847 \cdots
であることから、 - \displaystyle\frac{100}{171} より少しだけ小さい -0.6 で判定してみます。
\begin{aligned} 0.6^3 & = 0.216 < 0.22 \\ 0.6^6 & < 0.22^2 = 0.0484 < 0.049 \\ 0.6^9 &< 0.049 \times0.22=0.01078<0.011 \end{aligned}
\begin{aligned} 0.6^3 & = 0.216 > 0.21 \\ 0.6^6 & > 0.21^2 = 0.0441 >0.044 \\ 0.6^9 &> 0.041 \times0.21=0.00924 > 0.0092 \end{aligned}
なので、
\begin{aligned} g(-0.6^9) & = 100 \times(-0.6^9) ^{11} -30 \times (-0.6^9) -2 \\ & < -100 \times 0.0092^{11} + 30 \times 0.011 -2 \\ & < 0 \end{aligned}
であり、したがって f(-0.6) < 0 です。
あとは δ < -0.6 であることを示せれば、判定条件②により γ < -0.6 であることがわかりますが、ここで
-\left (\frac{1}{10} \right)^{\frac{1}{9}} < -0.6
であることに着目します。
これが成り立つのは、
0.6^9< 0.011 < \frac{1}{10}
であることから明らかですが、 f'(- \left ( \displaystyle\frac{1}{10} \right )^{\frac{1}9} ) =g( - \displaystyle\frac{1}{10} )> 0 であることから、明らかに
\delta < - \left (\frac{1}{10} \right )^{\frac{1}9}
です。
したがって f'(-0.6) < 0 かつ δ < -0.6 なので、判定条件②により
\gamma < -0.6
であることがわかりました。
ゆえに
\begin{aligned} f(\gamma) &> \frac{171}{100} \cdot (- \gamma) -1 \\ & > \frac{171}{100} \times 0.6-1 \\ & = \frac{513}{500} - 1 > 0 \end{aligned}
であり、 f(x) = 0 を満たす実数解は4個であることがわかりました。
f(γ) > 0 導出の別解
ネット上の動画に載っていたやり方なのですが、増減表から明らかに δ ≦ x ≦ β の範囲で f(x) の最大値は f(γ) です。したがって、この範囲で f(x) > 0 となる x が存在すれば、当然 f(γ) > 0 です。
γ < 0 < β なので、δ ≦ x ≦ 0 の範囲でも f(x) の最大値は f(γ) です。したがって、この範囲で f(x) > 0 となる x が存在すれば f(γ) > 0 です。
-1 ≦ x ≦ δ の範囲で f(x) は単調減少であり、かつ f(-1) < 0 なので、この範囲で f(x) < 0 です。したがって、 -1 ≦ x ≦ 0 の範囲で f(x0) > 0 となる x0 が存在すれば δ < x0 ≦ 0 であり、この範囲での f(x) の最大値は f(γ) なので、 f(γ) > 0 です。
つまり、 f(γ) > 0 であることを証明するには、 -1 ≦ x ≦ 0 の範囲でf(x0) > 0 となる x0 が存在することを示せれば十分です。これは随分とハードルが下がりました。
f(0) < 0 であることから、 x の絶対値が大きいほうが f(x) が正になる可能性が高そうですが、その方向で当たりをつけてみましょう。
f(x) =x^{100} -3 x^{10} -2 x -1
ですが、 |x| < 1 のとき x100 は大抵すごく小さくなって当てにならないので、考慮から外してしまいましょう。右辺第3項と第4項の和が正になっていないとお話にならないので、その条件から x の範囲を考えると x < - \displaystyle\frac{1}2 です。
もう少し小さいほうが良いので、先程べき乗値を計算した -0.6 で試してみましょう。
\begin{aligned} f(-0.6) & =(-0.6)^{100} -3 \times 0.6^{10} +2 \times 0.6 -1 \\ & > -3 \times 0.6^{9} \times 0.6+0.2 \\ & > -3 \times 0.011 \times 0.6 +0.2 \\ & > 0 \end{aligned}
見事に正の値になりました。ゆえに f(γ) > 0です。
解法のポイント
本問は導関数と極値を利用した最大、最小値問題のバリエーションです。極値を具体的に計算できないところが難しいので、これをどう料理するかがポイントです。
本稿では極値を取る値 γ に近い値を具体的に見つけて、それを使って f(γ) の値を評価しましたが、別解は γ に近いかどうかなど考えなくて良いところが画期的です。筆者は何かの100乗を計算するのがおぞましくて、そちらの方向に進むのをやめてしまいましたが、よく考えてみると絶対値が1未満の数字の100乗は大抵すごく小さくて無視できるので、これはちょっとうかつでした(負け惜しみ)。
本問のように具体的に計算できない数字の評価を求められたら、計算できる数字で代替できないか、検討するように心がけましょう。