渋幕の年号問題 – 2021年渋幕 数学 問1(3)
2021年渋幕 数学 問1(3) は年号を絡めた整数の問題です。問題文は以下の通りです。
2a^2 + (8-b) a -4b = 2021
を満たす自然数の組 (a,b) をすべて求めよ。
2021年は奇しくも東大でも、年号を絡めた問題が出題されました。東大のほうは確かに難しいですが(そりゃ東大だし)、無茶振り感はそれほどありません。
一方本問は、前座の一山いくら問題なのにもかかわらず、鬼畜度マシマシです。さすがは天下の渋幕。情け容赦のなさは一本筋が通っています。
それでは、早速見ていきましょう。
2021年渋幕 数学 問1(3) の解法
この手の問題は、左辺を因数分解して、それぞれの1次式が右辺の約数に等しくなることから、答えを出します。
と言うわけで因数分解ですが、
\begin{aligned} & 2a^2 + (8-b) a -4b \\ & =2a^2 + 8a- ab -4b \\ & = 2a(a+4) -b(a+4) \\ & = (a+4)(2a-b) \end{aligned}
と、比較的すんなりと出来ます。
問題は右辺です。ぱっと見、2021は3で割り切れないので、7や11で割れないか試してみましたが、割り切れません。17まで試したところで、これはらちが明かないと虱潰し戦略は放棄します。
2021が素数でないのなら、2つの因数の1の位がそれぞれ何なのか、考察します。掛け算99で1の位が1になるのは、3×7=21と、9×9=81です。まず、21のほうをあたります。つまり、 n7 × m3 = 2021 を満たす自然数 n7 や m3 を探します。
1の位が7で17の次に大きいのは27ですが、これは3の倍数なのでパス。その次の37は2021を割り切りません。その次の47はビンゴで、47×43=2021であることがわかりました。
a,b が自然数であることから、連立方程式
\left \{ \begin{aligned} a+4 & = 47 \\ 2a-b & =43 \end{aligned} \right .
または
\left \{ \begin{aligned} a+4 & = 43 \\ 2a-b & =47 \end{aligned} \right .
が成り立ちます。これらを解けば a,b の値が得られますが、ここに落とし穴があって、2021の自然数掛け算表記にはもう1つ、 2021×1=2021と言うのがあるということを、往々にして見落としがちなので、注意しましょう。
このことに注意すると、解くべき連立方程式にもう1つ、
\left \{ \begin{aligned} a+4 & = 2021 \\ 2a-b & =1 \end{aligned} \right .
が加わります。ちなみに
\left \{ \begin{aligned} a+4 & = 1 \\ 2a-b & =2021 \end{aligned} \right .
は a が負になってしまうので、対象外です。
上記の3組の連立方程式を解くことで、求める自然数の組 (a,b) は
(a,b) = (43,43), (39,31),(2017,4033)
であることがわかります。
解法のポイント
与式左辺の因数分解ですが、
2a^2 + 8a-ab -4b
ではなく
2a^2 + (8-b) a -4b
と、 8a-ab をわざわざ a でくくって (8-b) a にしているのは、受験者をミスリードして幻惑しようとしているのではないか、と勘繰ってしまいますが、実は出題者の意図は与式左辺を a の二次式と見立てて、平方完成とかして見ろよ、という誘導である可能性もあります。
実際、
\begin{aligned} &2a^2 + (8-b) a -4b \\ =& 2 \left \{a^2 + \frac{(8-b) }{2}a \right\} -4b \\ =& 2 \left \{a^2 + \frac{(8-b) }{4} \right\}^2 - \frac{(8-b)^2 }{8} -4b\\ =& 2 \left \{a^2 + \frac{(8-b) }{4} \right\}^2 - \frac{(8+b)^2 }{8} \\ =& 2 \left ( a + \frac{8-b }{4} +\frac{8+b}{4} \right ) \\ & \text{ } \times \left ( a + \frac{8-b }{4} -\frac{8+b }{4} \right ) \\ =& 2 (a + 4 ) \left (a - \frac{b }{2} \right ) \\ =& (a + 4 ) (2a -b ) \\ \end{aligned}
と因数分解できます。
本問はむしろ、右辺の 2021 の素因数分解のほうが難解です。本稿のように1の位に着目するか、あるいは
a^2- b^2 = 2021
を満たす a,b を探す、と言うアプローチがあります。