積分挟み撃ちで求める級数和の極限 – 2003年京大 後期 数学 第5問
Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像2023年2月27日
2003年京大 後期 数学 第5問 は級数和の極限に関する問題です。問題文は以下の通りです。
以下の極限を求めよ:
n→∞limk=1∑2n(−1)k(2nk)100
級数和の極限問題は、和を解析的に求められるケース( n→∞limk=1∑nk(k+1)1 など)の他は、積分挟み撃ちの手法を用いるケースが多く見られます。
特に本問は、級数の最終項が常に1になっているところから、積分挟み撃ちを適用する問題の公算が大きいと言えます。まずはその方向で検討します。
2003年京大 後期 数学 第5問 の解法
級数和の隣接2項をセットにする
級数和の形状をよく見ると、級数の値が振動していることと、足しこむ項目数が常に偶数であるところから、隣接2項をセットで扱うことが示唆されています。
そこで、隣接2項の和を
=−(2n2m−1)100+(2n2m)1002n1l=0∑99(2n2m−1)99−l(2n2m)l と変形してみます( m=1,2,⋯,n )。確かに積分挟み撃ちが使えそうな感じがしてきました。
級数和の上からの評価
まず、上から評価してみます。すると、
<==≦2n1l=0∑99(2n2m−1)99−l(2n2m)l2n1l=0∑99(2n2m)992n1⋅100(nm)99n50(nm)9950∫nmnm+1x99dx と評価できます。したがって級数和は、
==<=<=k=1∑2n(−1)k(2nk)100m=1∑n{−(2n2m−1)100+(2n2m)100}m=1∑n−1{−(2n2m−1)100+(2n2m)100}−(2n2n−1)100+150m=1∑n−1∫nmnm+1x99dx−(2n2n−1)100+150∫n11x99dx−(2n2n−1)100+150∫01x99dx−(2n2n−1)100+121−(2n2n−1)100+1 と上から抑えられ、しかもそれは n→∞ のとき、 21 に収束します。
級数和の下からの評価
一方、下方からの評価は、 m≧2 のとき
>==≧2n1l=0∑99(2n2m−1)99−l(2n2m)l2n1l=0∑99(2n2m−1)992n1⋅100(2n2m−1)99n50(2n2m−1)9950∫2n2m−32n2m−1x99dx なので、級数和は
==>==k=1∑2n(−1)k(2nk)100m=1∑n{−(2n2m−1)100+(2n2m)100}m=2∑n{−(2n2m−1)100+(2n2m)100}−(2n1)100+(n1)10050m=2∑n∫2n2m−32n2m−1x99dx−(2n1)100+(n1)10050∫2n12n2n−1x99dx−(2n1)100+(n1)10021(2n2n−1)100−23(2n1)100+(n1)100 と下から抑えられ、しかもそれは n→∞ のとき、こちらも 21 に収束します。
ゆえに
n→∞limk=1∑2n(−1)k(2nk)100=21 です。
解法のポイント
思いつければ、一気に解けます(Anastasia GeppによるPixabayからの画像) まず、積分挟み撃ちを適用しようと思いつくことが重要です。しかし本問では、級数の最終項が常に1になっていて、 [0,1] 区間の刻みを細かくして極限を取っているような感じすることと、そもそも他のアプローチをおいそれと思いつけないところから、無理なく発想できることと思います。
ただ、級数の各項に、積分挟み撃ちの定番である積分幅 n1 が掛かっていないところが、懸念材料です。これについては本稿で示したように、隣接2項をセットで扱うことに気が付ければ、突破できます。これに気が付くためのヒントとして、
- 級数の値が振動している(隣接項の正負が常に入れ替わる)
- 級数和の項目数が常に偶数である
のほか、級数の一般項がべき乗なので、
am−bm=(a−b)k=0∑m−1akbm−1−k の因数分解が使えそうだ、といったあたりがちりばめられていますので、見落とさないようにしましょう。