自分で得点を指定できる問題 – 1995年京大 後期 文系 数学 第4問

DIY自分で得点を決めてみよう

2023年2月27日

小問2の解法

  g(n) が最大になる n を求めるのが目的ですが、 g(n) がとりえる値の最大値は3×6=18なので、どうしたら g(n) が18に等しくなるかを考えます。

 ここで小問1が生きてきます。 n が7の倍数でないとき、 f(n^7)=f(n) なら当然、 f(n^6)=1 です。 a \ne 0 のとき、 ab = a なら b = 1 というのは剰余類の世界でも成り立つのですが、もう少し詳しく書くと、以下のとおりです。

  n^7 を7で割った余りと n を7で割った余りが等しいので、

 n^7-n= 7 \text{の倍数}  \\

ですが、 n は7の倍数ではないことと、7が素数であることから、

 n^6-1= 7 \text{の倍数}  \\

すなわち

f(n^6) =1

です。

 よって、少し考えると、

f( \sum_{k=1}^7 k^6 )  =  f( \sum_{k=1}^6 f( k^6 )) =f (\sum_{k=1}^6  1 )= 6

であることがわかります( 7^6 \equiv 0 \mod 7 に注意)。

 しかし、これが思いつかなくても、高々7の剰余群なので、力づくで書き下してしまうのもありです。大した手間もなく、以下のように計算できます。

k k^1 k^2 k^3 k^4 k^5 k^6
1111111
2241241
3326451
4421421
5546231
6616161
合計000006

 意外なことに、 n=6 以外は、 g(n) = 0 になりました。これはすなわち、間違えたら点数は1点もやらないよ、という出題者の強い意志の表れに他なりません。このことは実際に計算してみないとわからなかったので、その点では書き下しにも意味があったと言えるでしょう。

1995年京大後期文系数学第4問 を地道な計算で解く
地道な作業(Sasin TipchaiによるPixabayからの画像)

発展

 もう一つ、興味深い点は、ある k (今回の場合は3と5)については、0を除く任意の剰余類の要素 a に対し、ある自然数 n 1 \leqq n \leqq 6 )が一意に存在して、

a \equiv k^n \mod 7

が成り立つことです。 a n は1:1に対応します。これは7だけではなく、すべての素数 p の剰余類に対して、成立します。そのような要素を、 p を法とする原始根と呼びます。

 原始根の存在はあまり自明ではなく、その証明はガウスの登場を待つ必要がありましたが、覚えておくと、問題を解く際のヒントに使えることがあると思います。ただし、証明なしに引用すると減点されることがあるので、気をつけましょう。

 小問2において、 n \neq 6 のとき、 g(n) = 0 でしたが、原始根の存在とフェルマーの小定理を所与のものとしたとき、これが任意の素数 p の剰余類に対して成り立つことを証明できます。

 すなわち、任意の素数 p に対して、 g(n) を小問2のように定義したとき、以下が成り立ちます。

g(n) = 
\left \{
\begin{array}{ll}
0   & 1 \leqq n < p-1 \\
3(p-1)   &n = p-1 
\end{array}
\right.

\xi を、 p を法とする原始根であるとします。すると原始根の定義より、任意の自然数 k \in \{ 1,2,\cdot \cdot \cdot ,p-1 \} に対して、ある自然数 i \in \{ 1,2,\cdot \cdot \cdot ,p-1 \} が一意に存在して、

 k \equiv \xi^i  \mod p

 が成り立ち、しかも k i は1:1に対応します。したがって、 n < p-1 のとき

\begin{aligned}
& g(n) = 3f( \sum_{k=1}^p k^n ) \\
& = 3f( \sum_{k=1}^{p-1} k^n ) \\ 
& = 3f( \sum_{i=1}^{p-1}  \xi^{in}  ) \\  
& =3f( \xi^n  \frac{( \xi^n)^{p-1}  - 1 } { \xi^n - 1 } ) \\
& = 3f( \xi^n  \frac{ (\xi^{p-1})^n  - 1 } { \xi^n - 1 } ) \\
& = 0
\end{aligned}

 が成り立ちます。

  n = p-1 のときは、フェルマーの小定理よりただちに、

\begin{aligned}
& g(p-1) = 3f( \sum_{k=1}^p k^{p-1} ) \\
& = 3f( \sum_{k=1}^{p-1} k^{p-1} ) \\ 
& = 3 \sum_{k=1}^{p-1} f(k^{p-1} ) \\ 
& = 3 \sum_{k=1}^{p-1} 1 \\ 
& = 3(p-1)
\end{aligned}

を得ます。

 これらは大学の代数の時間で扱うような内容なので、入試にはまあ出ないと思いますが、興味がおありの受験生の皆さん、数学科があなたを待っています。

まとめ

 本問のポイントは、

  • 剰余類におけるべき乗の扱い
  • 剰余類の法が小さいときは、地道に全部書き下してみる

といったところになります。剰余類は実社会でも非常に役立つので、問題をたくさんこなして、解き方の考え方をしっかり身に着けておきたいところです。

京大1995年

Posted by mine_kikaku