n進法表記とべき乗の問題 – 2016年京大 文系 数学 第3問
今回取り上げるのは、 2016年京大 文系 数学 第3問 。 n 進法表記に関する問題です。問題文は以下の通りです。
n を4以上の自然数とする。数 2、12、1331が全て n 進法で表記されているとして、
2^{12}=1331
が成り立っている。このとき n はいくつか。十進法で答えよ。
なんか、難しめのパズルみたいです。ちょっと機転を利かせれば、サクッと解けるのではないかとの期待を抱かせます。早速取り組んでみましょう。
題意を満たす n の探索
まずはセオリー通り、 n 進法表記を普通の整数表記に書き換えます。
n 進法の12は 1 \times n+2 = n+2 です。また、 n 進法の1331は
\begin{aligned} & 1 \times n^3 + 3 \times n^2 + 3 \times n + 1 \\ & =n^3+3n^2+3n+1 \\ & =(n+1)^3 \end{aligned}
と、いい感じに因数分解できました。これらより、問題文の与式は
2^{n+2} = (n+1)^3 \text{ } \cdot \cdot \cdot (1)
と書き換えられます。
式(1)の左辺は2のべき乗なので、当然右辺もそうでなければなりません。したがって、ある自然数 m が存在して、
n= 2^m - 1 \text{ } \cdot \cdot \cdot (2)
が成り立ちます。
これを式(1)の右辺に代入すると、
2^{n+2} = 2^{3m}
となるので、これからただちに
n=3m-2 \text{ } \cdot \cdot \cdot (3)
を得ます。
すなわち、 n は2のべき乗より1少なく、3で割って1余る数です。そんな数としては7が割とすぐに思い浮かびます。つまり、答えは7です。
7が唯一の答えであることの証明
式(2)および式(3)から、自然数 m に関する以下の方程式を得ます。
2^m = 3m-1 \text{ } \cdot \cdot \cdot (4)
n \geqq 4 であることから、 m \geqq 3 です。 m=3 は式(4)の解でしたが、式(4)を満たす4以上の自然数 m は存在しないことを証明するか、存在するとすればその具体的な値を求めます。
まあ普通に考えて、式(4)を満たす4以上の自然数 m は存在しないと言い切って良い気がしますが(指数関数なめんなよ)、試験なのでもう少しきちんと証明することを考えます。
一般的には、関数
f(x) = 2^x -3x+1
の導関数が x \geqq 3 の範囲で正であることを示し、 f(x) > f(3)=0 であるから④を満たす4以上の自然数 m は存在せず、したがって題意を満たす自然数 n は7のみである、と言う流れで証明します。
ところが、文系では指数関数の微分が履修範囲外らしいので(なんだそれ)、別の方法で証明を試みます。
自然数 m \geqq 4 に対し
\begin{aligned} & f(m)=2^m-3m+1 \\ & =(1+1)^m-3m+1 \\ & = \sum_{k=0}^{m} {}_m \mathrm{C}_k -3m + 1 \\ & = 1 + m + \sum_{k=2}^{m-2} {}_m \mathrm{C}_k +m + 1 \\ & -3m +1 \\ & = \sum_{k=2}^{m-2} {}_m \mathrm{C}_k -m + 3 \\ & > \sum_{k=2}^{m-2} 1 -m + 3 = 0 \end{aligned}
f(m) が常に正なので、式(4)を満たす4以上の自然数 m は存在せず、したがって題意を満たす自然数 n は7のみであることを示せました。
解法のポイントと今後の学習方針
本問は、 n 進法の定義に従って式を立てれば、比較的容易に解答にたどり着けると思います。京大なので、処理しやすい形に式を変形できる(今回のケースでは、①の右辺)ことについては、期待してよいでしょう。逆に立式の段階で、扱いに困る式が出来たら、何か間違っていると考えたほうが良いと思います。
解のユニーク性を証明する段で、指数関数の大小を評価する必要があるのに、微分が使えないというのは、設問としてどうなのかと思います。ただ、 x \rightarrow \infty のとき、どんな多項式よりも指数関数 a^x \text{ } (a > 1) のほうが、最終的な増加スピードで勝るというのは、知識として知っておくと便利です。
n 進法に関する問題はあまり見かけません。もし遭遇したら、まずは定義に従って数式化してみましょう。まれに、そうでないアプローチを求められる問題もあります。
整数それ自体の具体的な値に関する問題なら n 進法の定義に従った数式化、そうでなくて、もっと大雑把な評価(3で割れる、とか)なら、問題の内容に応じた別のアプローチを試してみる、と言った感じで、問題に取り組んでみてください。