三次元空間内の平行四辺形 – 2008年京大 数学 乙 第3問

三次元空間内に平行四辺形を生成する問題です(Thanks for your Like • donations welcomeによるPixabayからの画像)

2023年3月2日

2008年京大 数学 乙 第3問 は、3次元空間内の点の分布に関する問題です。問題文は以下の通りです。

空間の1点 \mathrm{ O} を通る4直線で、どの3直線も同一平面上にないようなものを考える。このとき、4直線のいずれとも \mathrm{ O} 以外の点で交わる平面で、4つの交点が平行四辺形の頂点になるようなものが存在することを示せ。

 直感的には、「んなわけないだろ」と思えるような設問です。とりあえず、題意を図示してみます。

解法1(図を描いて解く)

Step1:直線を2本ずつに分けて、それらを含む平面を考える

  4本の直線をそれぞれ l,m,n,k とします。 直線 l , m が張る平面を \alpha 、直線 n,k が張る平面を \beta と置きます。

 平面 \alpha, \beta は平行でない(もし平行なら4直線がすべて同一平面上にあることになってしまう)ので、交線 g が存在し、 g は4直線の交点 \mathrm{O} を通ります(図1)。

図1

Step2:2平面の交線に平行な平面を導入する

 ここで点 \mathrm{A} を、直線 l 上に有って、 \mathrm{O} との距離が1であるものとします。また、平面 \gamma を、点 \mathrm{A} を通り、直線 g と平行なものとします。

 さらに、 平面 \gamma と平面 \alpha の交線を h 、平面 \gamma と平面 \beta の交線を j とします (図2)。

図2

 このとき、直線 h 、および j は、いずれも直線 g と平行になります(もし g h が平行でないとすると、それらは同一平面 \alpha 上にあるので交点を持ちますが、その交点で g と平面 \gamma が交わることになり、 \gamma g と平行であるという条件に矛盾します。 j についても同様です)。したがって、 h /\!/ j が成り立ちます。

Step3:導入した平面と4直線の交点が台形を形成することを示す

 直線 m,n,k と平面 \gamma の交点をそれぞれ \mathrm{B} ,\mathrm{C} , \mathrm{D} とおくとき、線分 \mathrm{AB} は直線 h 上に有り、線分 \mathrm{CD} は直線 j 上に有るので、

 \mathrm{AB} /\!/ \mathrm{CD} 

が成り立ちます(図3)。このとき四角形 \mathrm{ABCD} は2辺が平行なので、台形になります。

図3

Step4: 導入した平面と4直線の交点が平行四辺形になるように、平面の向きを調整する

 平面 \gamma を、直線 h を軸にして回転させます。

 平面 \gamma と平面 \beta の成す角を \theta と置きます。すると、線分 CD の長さは明らかに \theta の連続関数です。

 平面 \gamma が平面 \beta と平行になる角度を \theta_0 と置くとき、 \theta が 0 から \theta_0 まで変化すると、線分 CD は \mathrm{AB} /\!/ \mathrm{CD} のまま、長さが0から∞まで変化します。したがって中間値の定理より、ある 0 < \theta_1 < \theta_0 が存在して、 \theta = \theta_1 のとき、

AB = CD

が成り立ちますが、このとき四角形 ABCD は平行四辺形になります。

 時間がないときは以上のように言葉だけで押し切っても、筋は通っているので点数はもらえると思います。しかし、 CD の長さが \theta の連続関数であるというところがロジック的に少々弱いので、これをもう少し厳密にするなら、以下のようにします。

Step5: 線分 CD の長さが2平面 \beta , \gamma の成す角 \theta の連続関数であることを示す

 線分 CD の長さを \theta の関数として具体的に表します。

 直線 g と垂直な平面で全体を切断したとき、その平面と各平面 \alpha, \beta, \gamma との交線は三角形を形成します。

 その三角形において、各直線 g, h, j に対応する頂点をそれぞれ、 \mathrm{G} , \mathrm{H} , \mathrm{J} とおきます。

 このとき、 \angle H = \theta です。また、 \angle G = \phi とおきます(図4)。

図4

  0 < \phi \leqq \frac{\pi}{2} として一般性を失いません。もし \phi > \frac{\pi}{2} であったならば、 \mathrm{A} \mathrm{O} をはさんで反対側に移します。

 辺 JG の長さは2直線 j,g の距離ですが、明らかに CD と JG は比例するので、その比例定数を R とおきます。すなわち、

\mathrm{CD} = R \cdot \mathrm {JG}

です。

 一方、辺 JG , JH の長さは以下の連立方程式を満たします。

\left \{

\begin{aligned}
& \mathrm{JG} \sin \phi = \mathrm{JH} \sin \theta \\
& \mathrm{JG} \cos \phi + \mathrm{JH} \cos \theta = \mathrm{GH}
\end{aligned}

\right .

 これを JG について解くと、

\mathrm{JG} = \mathrm{GH} \frac{ \sin \theta}{\sin (\theta + \phi )}

 を得ます。

 したがって

\mathrm{CD} =R \cdot \mathrm{GH} \frac{ \sin \theta}{\sin (\theta + \phi )}

なので、 CD が \theta の連続関数であることが示せました。

解法2(ベクトルを使って解く)

  本問をググると出てくる解答の多くが、ベクトルを使っていて、こちらのほうがスマートに解けます。

 4直線 l,m,n,k 上の点をそれぞれ \mathrm{A}, \mathrm{B} ,\mathrm{C} , \mathrm{D} とし、4直線の交点を \mathrm{O} とします。 \mathrm{O} が原点であるとして一般性を失いません。

\overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } なら4点は同一平面にあって、しかも平行四辺形

 このとき、この4点が同一平面にあって、しかも平行四辺形になるための十分条件は、

\overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } 

 が成り立つことです。

  \overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } が成り立つとします。3点 \mathrm{A}, \mathrm{B} ,\mathrm{C} が決定する平面の法線ベクトルを \vec{u} とするとき、平面の方程式は

\vec{u} \cdot(\vec{x} - \overrightarrow{ \mathrm{OC} }) = 0

と記述できます。ここに 「 \cdot 」はベクトルの内積を表します。

 このとき、

\begin{aligned}
&  \vec{u}\cdot \overrightarrow{\mathrm{CD}} \\
& =\vec{u}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AB}} \\
& =\vec{u}\cdot \overrightarrow{\mathrm{CB}} - \vec{u}\cdot \overrightarrow{\mathrm{CA}} =0 \\
\end{aligned}

なので、 \mathrm{D} も同一平面上に存在します。

  \overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } なので明らかに

\begin{aligned}
& \mathrm{AB}  /\!/ \mathrm{CD}  \\
& \mathrm{AB}  = \mathrm{CD}
\end{aligned}

が成り立ちます。したがって、四角形 \mathrm{ABCD} は平行四辺形です。

\overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } となる \mathrm{A}, \mathrm{B} ,\mathrm{C} , \mathrm{D} を具体的に求める

 各直線の方向ベクトルを \vec{a}, \vec{b} , \vec{c} ,\vec{d} とし、点 \mathrm{A} \overrightarrow{ \mathrm{OA} } = \vec{a} と位置を固定します。他の点を

\begin{aligned}
& \overrightarrow{\mathrm{OB}} =t_1\vec{b}   \\
& \overrightarrow{\mathrm{OC}} =t_2\vec{c}   \\
& \overrightarrow{\mathrm{OD}} =t_3\vec{d}   \\

\end{aligned}

と表記します。ここに t_1, t_2, t_3 は実数です。また、4直線の中のどの3直線も同一平面上にないことから、 \vec{a}, \vec{b}, \vec{c} は線形独立であり、実数 p,q,r が一意に存在して

\vec{d} =p \vec{a}+q \vec{b} +r \vec{c}

が成り立ちます。このとき、 \vec{d}, \vec{b}, \vec{c} は同一平面上にないので、 p \ne 0 が成り立ちます。

\overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } を仮定すると、

t_1 \vec{b} - \vec {a} = t_3(p \vec{a}+q \vec{b} +r \vec{c}) - t_2 \vec{c}

です。各ベクトルごとに整理すると

( t_3p +1) \vec{a}+(t_3q -t_1)\vec{b} +(t_3r - t_2) \vec{c} = 0

となります。

 したがって、 \overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } が成り立つための十分条件は以下の連立方程式

\left \{

\begin{aligned}
&  t_3p +1 = 0 \\
&t_3q -t_1 = 0 \\
&t_3r - t_2 = 0
\end{aligned}

\right .

が解をもつことですが、この方程式は直ちに解くことが出来て、

t_1 = -\frac{q}{p}, t_2 = -\frac{r}{p}, t_3 = - \frac{1}{p}

を得ます。ゆえに、 \overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } となるように各点 \mathrm{A}, \mathrm{B} ,\mathrm{C} , \mathrm{D} を配置することが出来て、このとき \mathrm{A}, \mathrm{B} ,\mathrm{C} , \mathrm{D} は同一平面上で平行四辺形を構成します。

解法のポイント

ひらめきがポイント(Pete LinforthによるPixabayからの画像)

\overrightarrow{ \mathrm{AB} } = \overrightarrow{ \mathrm{CD} } なら4点は同一平面にあって、しかも平行四辺形になることに気が付くかどうかが、1つのポイントです。これに気が付ければ、解法2の方法に従って、比較的容易に解くことが出来ます。

 もしこれに気が付けなかったときは、(筆者のように)図を描いて頑張りましょう。2平面の交線に平行な第3の平面が、最初の2平面と平行な交線を形成するというのは、別の問題でも使いました。そちらの記事も是非ご覧ください。

京大2008年

Posted by mine_kikaku