バウムクーヘンはお好きですか? – 1989年東大 数学 第5問

989年東大 数学 第5問 はいわゆるバウムクーヘン積分に関する問題です。問題文は以下のとおりです。
f(x)=πx^2 \sin (πx^2) とする。 y=f(x) のグラフの 0 \leqq x \leqq 1 の部分とx軸で囲まれた図形をy軸のまわりに回転させてできる立体の体積Vは V=2 \pi \displaystyle\int_0^1 xf(x)dx で与えられることを示し、この値を求めよ。
本問のように、グラフを y 軸を中心に回転させて、出来上がった回転体の体積を求めることを、バウムクーヘン積分と呼びます。
そんな名前が付いているということは、グラフの微小部分 f(x + \Delta x ) \Delta x を y 軸の周りにぐるりと回転させて、出来上がった年輪状構造の体積和の極限をとれ、ということなのかも知れませんが、受験問題なのでそんな面倒くさいことはやっていられません。ここはもっとお手軽に、逆関数の積分を利用して値を計算します。
逆関数の積分を利用した体積算出
体積 V というのはざっくり言うと、 y = f(x) の逆関数 x =f^{-1}(y) を y の関数と見立てて、これを y 軸の周りに回転させた図形を y 軸に沿って積分することで、求めることが出来ます。
すなわち、
\pi\int | f^{-1}(y)|^2 dy
を計算することで、 V の値を求めようと言う発想です。
f(x) は増減するので、逆関数が一意に決まるように x の範囲を分割し、それぞれごとに積分を計算することにします。
y = f(x) の増減を調べる
普通に f(x) を x で微分して増減を調べても良いのですが、少しでも楽をしたいので、 t = \pi x^2 と置き、
y= g(t) = t \sin t \\ (0 \leqq t \leqq \pi)
の増減を調べます。
\begin{aligned} g'(t) &= \sin t + t \cos t \\ &= \cos t(\tan t +t) \end{aligned}
ですが、 0 \leqq t \leqq \displaystyle\frac{ \pi} 2 のとき g'(t) > 0 です。
\displaystyle\frac{ \pi}2 < t \leqq \pi のとき、 \cos t < 0 です。
また、
h(t) = \tan t + t
と置くとき、 \displaystyle\frac{ \pi}2 < t \leqq \pi の範囲で
h'(t) = \frac{1} {\cos ^2 t} +1 > 0
かつ
h( \pi) > 0
かつ
\inf_{t \to \frac{\pi}2 +0 } h(t) < 0
なので、 h(t) = 0 は \displaystyle\frac{ \pi}2 < t \leqq \pi の範囲で解を1つだけ持ち、その解を \alpha と表記すると、 \displaystyle\frac{ \pi}2 < t < \alpha のとき
h(t) < 0
\alpha < t \leqq \pi のとき
h(t) > 0
です。
したがって \displaystyle\frac{ \pi}2 < t < \alpha のとき
g'(t) > 0
\alpha < t \leqq \pi のとき
g'(t) < 0
です。
以上を増減表にまとめると、
t | 0 \leqq t < \alpha | \alpha | \alpha < t \leqq \pi |
g'(t) | + | 0 | – |
g'(t) | \nearrow | g(\alpha) | \searrow |
ゆえに、 \beta = \sqrt{ \displaystyle\frac{\alpha}{\pi}} と置くとき、 y = f(x) は 0 \leqq x < \beta の範囲で単調増加、 \beta < x \leqq 1 の範囲で単調減少です。
V を f(x) の増減範囲に応じて分割して求める
f^{-1} (y) が一意に決まるように、V を 0 \leqq x \leqq \beta の範囲と \beta \leqq x \leqq 1 の範囲に分けます。 前者をV1 、後者を V2 と表記します。
0 \leqq x \leqq \beta のとき、 \displaystyle\frac{dy}{dx} = f'(x) であることを利用して、
\begin{aligned} V_1 & = \pi \beta^2 - \pi \int_0 ^{f(\beta) } |f^{-1}(y)|^2 dy \\ & =\pi \beta^2 - \pi \int_0 ^{\beta} x^2 f'(x) dx \end{aligned}
です。
同様に \beta \leqq x \leqq 1 のとき、
\begin{aligned} V_2 & = \pi \int_0 ^{f(\beta) } |f^{-1}(y)|^2 dy - \pi \beta^2 \\ & = \pi \int_1 ^{\beta} x^2 f'(x) dx - \pi \beta^2 \\ & = - \pi \int_{\beta} ^{1} x^2 f'(x) dx - \pi \beta^2 \\ \end{aligned}
です。
よって、
\begin{aligned} V = & V_1 + V_2 \\ = & \pi \beta^2 - \pi \int_0 ^{\beta} x^2 f'(x) dx \\ & - \pi \int_{\beta} ^{1} x^2 f'(x) dx - \pi \beta^2 \\ = & - \pi \int_0 ^{1} x^2 f'(x) dx \\ = & -\pi [x^2 f(x)] _0^1 + 2\pi \int_0^1 xf(x) dx \\ = & 2\pi \int_0^1 xf(x) dx \end{aligned}
です。
V の値を求める
あとは積分計算するだけです。もう一度、 t = \pi x^2 と変数変換することにより、
\begin{aligned} V & =2 \pi \int_0^1 xf(x) dx \\ & = \int_0^{\pi} t \sin t dt \\ & = - [t \cos t] _0^{\pi} + \int_0^{\pi} \cos t dt \\ & = \pi \end{aligned}
です。
解法のポイント

y =f(x) をy軸を中心に回転させて、その面積を求めるという問題なので、これは逆関数の積分だと気がつくことができれば、本問は容易に解くことができると思います。
逆関数の積分というのにちょっとあせるかも知れませんが、単に変数変換だと思えば、どうということはありません。落ち着いて対処しましょう。