伝説のプール問題 – 2007年東工大 数学 第1類AO型 第2問

プールサイドから一番遠いのはどこか(Christian HänselによるPixabayからの画像)

2024年9月20日

点Pへの最短経路

 点 P に到る経路としては、辺 OA 経由の「南回り」ルートと辺 OC 経由の「北回り」ルートが考えられます。北回りルートのほうが水の中にいる距離が長いので、明らかに南回りのほうが所要時間が短くなります(図3)。

図3

 と言い切ってしまいたいですが、これはそれほど自明ではありません。とは言え、感覚的には南回りのほうが速そうなので、まずこちらのルートの所要時間を計算します。

 監視員は原点 O を出発して辺 OA 上の点 Q( α,0 ) ( 0 ≦ α ≦ a ) までプールサイドを移動し、点 Q からプールに入って点 P まで直線状に移動するものとします。

 このとき、所要時間 f(α) は

f( \alpha) = \frac{ \alpha}2 + \sqrt{(a - \alpha)^2 + b^2}

で与えられます。

 α を動かしてこれの最小値を求めると、それが南回りの最短時間となります。

 そこで f(α) を微分します。

\begin{aligned}
f'( \alpha)  & = \frac{ 1}2 -\frac{ a - \alpha}{ \sqrt{(a - \alpha)^2 + b^2}} \\
 & = \frac{ 1}2 -\frac{ 1}{ \sqrt{ 1 + ( \frac{b}{a- \alpha})^2}} \\

\end{aligned}

なので、 f'(α) は α の単調増加関数であることがわかります。また、 f'(a) > 0 です。 f'(0) の符号がどうなっているかですが、 ba なので

\begin{aligned}
f'( 0)  &  = \frac{ 1}2 -\frac{ 1}{ \sqrt{ 1 + ( \frac{b}{a})^2}} \\
 & \leqq  \frac{ 1}2  - \frac{ 1}{ \sqrt{2}} <0

\end{aligned}

です。

 したがって f(α) は、α が f'(α) = 0 を満たすときに最小値を取ります。

\begin{aligned}
f'( \alpha)  & = \frac{ 1}2 -\frac{ a - \alpha}{ \sqrt{(a - \alpha)^2 + b^2}}=0 \\
 

\end{aligned}

のとき、

\begin{aligned}
 \frac{ a - \alpha}{ \sqrt{(a - \alpha)^2 + b^2}}= \frac{ 1}2  \\
 

\end{aligned}

なので両辺を2乗して

\begin{aligned}
 \frac{ (a - \alpha) ^2}{ (a - \alpha)^2 + b^2}= \frac{ 1}4  \\
 

\end{aligned}

分母を払って

\begin{aligned}
4(a - \alpha) ^2= (a - \alpha)^2 + b^2  \\
 

\end{aligned}

よって

\begin{aligned}
3(a - \alpha) ^2=  b^2  \\
 

\end{aligned}

なので、 0 ≦ α ≦ a であることから

\alpha = a - \frac{b} { \sqrt{3}}

です。

 したがって南回りルートの最短時間は

\begin{aligned}
 & f( a - \frac{b} { \sqrt{3}})  \\
=  & \frac{1}2 \left ( a - \frac{b} { \sqrt{3}} \right ) +  \sqrt{ \left (a - a + \frac{b}{\sqrt{3}} \right)^2 + b^2} \\
 = & \frac{a}2 -\frac{b} { 2\sqrt{3}}  + \frac{2b}{\sqrt{3}} \\
 = & \frac{a}2 +  \frac{(-1 +4)b} { 2\sqrt{3}} \\
 = & \frac{a + \sqrt{3} b}2
\end{aligned}

です。

 次に北回りルートの最短時間を求めます。

 監視員は原点 O を出発して辺 OC上の点 R( 0,β ) ( 0 ≦ β ≦ b ) までプールサイドを移動し、点 R からプールに入って点 P まで直線状に移動するものとします。

 このとき、所要時間 g(β) は

g( \beta) = \frac{ \beta}2 + \sqrt{a^2 +( b - \beta)^2}

で与えられます。

 これを β で微分して

\begin{aligned}
g'( \beta)  & = \frac{ 1}2 -\frac{ b - \beta}{ \sqrt{a^2 +(b - \beta)^2 }} \\
 & = \frac{ 1}2 -\frac{ 1}{ \sqrt{ 1 + ( \frac{a}{b- \beta})^2}} \\

\end{aligned}

ですが、 g'(β) は単調増加関数であり、g'(b) > 0 です。g'(0) の評価はちょっと面倒くさくて、

\begin{aligned}
g'( 0)  & = \frac{ 1}2 -\frac{ 1}{ \sqrt{ 1 + ( \frac{a}{b})^2}} \\

\end{aligned}

\displaystyle\frac{a}{\sqrt{3}} \leqq b \leqq a のとき g'(0) ≦ 0 、 0 \leqq b < \displaystyle\frac{a}{\sqrt{3}} のとき g'(0) > 0 です。

 したがって g(β) は \displaystyle\frac{a}{\sqrt{3}} \leqq b \leqq a のとき、南回りルートの場合と同じ計算方法により、

\beta = b - \frac{a} { \sqrt{3}}

のときに最小値

 \frac{b + \sqrt{3} a}2

をとります。また 0 \leqq b < \displaystyle\frac{a}{\sqrt{3}} のとき、最小値

g( 0) =  \sqrt{a^2 + b ^2}

をとります。

 以上の結果を元に、南回りルートのほうが速いことを証明します。

 まず \displaystyle\frac{a}{\sqrt{3}} \leqq b \leqq a のとき、

 \frac{b + \sqrt{3} a}2 - \frac{a + \sqrt{3} b}2 = \frac{( \sqrt{3} -1)(a-b)}2 \geqq 0 

なので、南回りルートの勝ちです。

 また 0 \leqq b < \displaystyle\frac{a}{\sqrt{3}} のとき、北回りルートは原点 O からプール内を直接 P に向かうルートが最短ですが、これより南回りルートのほうが速いのは

\begin{aligned}
 & f( a - \frac{b} { \sqrt{3}})  < f(0) = g(0)\\

\end{aligned}

であることから明らかです。

 以上、南回りルートのほうが速いことが証明できました。

東工大2007年

Posted by mine_kikaku