非線形関数方程式と多項式の難問 – 2011年東工大 AO 数学 Ⅱ-1

わからん!(Rebecca MartellによるPixabayからの画像)

n が2のべき乗以外の偶数である場合を考察する

 残りは n が2のべき乗以外の偶数である場合です。 n = 2mlm は自然数、 l は3以上の奇数)であるとします。

 n が偶数のとき、多項式 g(x) が与式を満たすなら f(x) = g(x)2 +1 も与式を満たす、といった議論をしましたが、この逆のプロセスで多項式の次数を下げられないか、考えてみます。

  f(x) は n = 2ml 次の多項式で与式を満たすとします。 n は偶数なので f(x) は x2 の多項式であり、

f(x) =\sum_{k=0}^{ \frac{n}2} a_{2k} x^{2k}

です。ここで

\begin{aligned}
m  & = \frac{n}2 \\
c_k & =a_{2k}(k=0,1,2, \cdots, m) \\
g(x)  &= \sum_{k=0}^m c_k x^k
\end{aligned}

と置くと、

f(x) = g(x^2)

が成り立ちます。また

f(x^2+1) = f(x) ^2+1

なので

f(x^2+1) = g(x^2) ^2+1

です。ここで X = x2 と置くと

f(X+1) = g(X) ^2+1

です。したがって x が正または0のとき、

f(x+1) = g(x) ^2+1

ですが、多項式が x が正の範囲で「べったり」等しいなら全区間で等しいので、上の式はすべての実数 x に関して成り立ちます。

 以上の準備のもとに

\begin{aligned}
g(x^2+1) & = f( \sqrt{x^2 +1}) \\
  &=  g( \sqrt{x^2 +1}-1)^2+1 
\end{aligned}

が成り立ちますが、

 g(x) = g( \sqrt{x^2 +1}-1)

などということは簡単に言えそうにありません(そもそも成り立つのか)。

 g(x) の変数に x2 + 1 を代入したためにこんな面倒なことになっているので、これをやめるために新しい多項式 h(x) を

h(x) = g(x-1)

と定義します。

 このとき

\begin{aligned}
h(x^2+1) = &  g(x^2) \\
 = & f(x) \\
= & g(x-1)^2 +1 \\
 =  & h(x)^2 + 1
\end{aligned}

が成り立つので、 h(x) はいい感じに与式を満たします。

h(x) の次数は 2m-1l なので、この操作を m 回再帰的に繰り返すことで、与式を満たす l 次の多項式を生成することができるはずですが、そういうものは存在しないことがすでに証明済みです。

 したがって n = 2mlm は自然数、 l は3以上の奇数)であるとき与式を満たす多項式 f(x) は存在せず、n が2のべき乗以外の偶数である場合は求める自然数ではありません。

 以上、求める自然数 n は2のべき乗すなわち

n = 2^m(m=0,1,2,\cdots)

です。

東工大2011年

Posted by mine_kikaku