非線形関数方程式と多項式の難問 – 2011年東工大 AO 数学 Ⅱ-1
n が2のべき乗以外の偶数である場合を考察する
残りは n が2のべき乗以外の偶数である場合です。 n = 2ml ( m は自然数、 l は3以上の奇数)であるとします。
n が偶数のとき、多項式 g(x) が与式を満たすなら f(x) = g(x)2 +1 も与式を満たす、といった議論をしましたが、この逆のプロセスで多項式の次数を下げられないか、考えてみます。
f(x) は n = 2ml 次の多項式で与式を満たすとします。 n は偶数なので f(x) は x2 の多項式であり、
f(x) =\sum_{k=0}^{ \frac{n}2} a_{2k} x^{2k}
です。ここで
\begin{aligned} m & = \frac{n}2 \\ c_k & =a_{2k}(k=0,1,2, \cdots, m) \\ g(x) &= \sum_{k=0}^m c_k x^k \end{aligned}
と置くと、
f(x) = g(x^2)
が成り立ちます。また
f(x^2+1) = f(x) ^2+1
なので
f(x^2+1) = g(x^2) ^2+1
です。ここで X = x2 と置くと
f(X+1) = g(X) ^2+1
です。したがって x が正または0のとき、
f(x+1) = g(x) ^2+1
ですが、多項式が x が正の範囲で「べったり」等しいなら全区間で等しいので、上の式はすべての実数 x に関して成り立ちます。
以上の準備のもとに
\begin{aligned} g(x^2+1) & = f( \sqrt{x^2 +1}) \\ &= g( \sqrt{x^2 +1}-1)^2+1 \end{aligned}
が成り立ちますが、
g(x) = g( \sqrt{x^2 +1}-1)
などということは簡単に言えそうにありません(そもそも成り立つのか)。
g(x) の変数に x2 + 1 を代入したためにこんな面倒なことになっているので、これをやめるために新しい多項式 h(x) を
h(x) = g(x-1)
と定義します。
このとき
\begin{aligned} h(x^2+1) = & g(x^2) \\ = & f(x) \\ = & g(x-1)^2 +1 \\ = & h(x)^2 + 1 \end{aligned}
が成り立つので、 h(x) はいい感じに与式を満たします。
h(x) の次数は 2m-1l なので、この操作を m 回再帰的に繰り返すことで、与式を満たす l 次の多項式を生成することができるはずですが、そういうものは存在しないことがすでに証明済みです。
したがって n = 2ml ( m は自然数、 l は3以上の奇数)であるとき与式を満たす多項式 f(x) は存在せず、n が2のべき乗以外の偶数である場合は求める自然数ではありません。
以上、求める自然数 n は2のべき乗すなわち
n = 2^m(m=0,1,2,\cdots)
です。