非線形関数方程式と多項式の難問 – 2011年東工大 AO 数学 Ⅱ-1
補足 – 多項式がある区間で一定の値を取る場合の性質
本稿の途中で出てきた、多項式がある区間で一定の値を取る場合は定数関数であることを証明します。
n次( n ≧ 1)の多項式 f(x) を
f(x) = \sum_{k=0}^n c_k x^k
と定義します。ここに ck は定数で、 cn ≠ 0 です。
この f(x) が開区間 (a,b) (a < b) で一定の値 c を取っているとします。このとき、 a < x < b である x に対し、δ を十分小さく取ると a < x+δ < b が成り立つので、
\frac{f(x+ \delta) -f(x)}{\delta} = \frac{c - c}{\delta} = 0
が成り立つので、
\frac{d}{dx} f(x) = \lim_{ \delta \rightarrow 0 } \frac{f(x+ \delta) -f(x)}{\delta} = 0
が成り立ちます。
したがってすべての自然数 m に対し帰納的に
\frac{d^m}{dx^m} f(x) = \lim_{ \delta \rightarrow 0 } \frac{ \frac{d^{m-1}}{dx^{m-1}}f(x+ \delta) -\frac{d^{m-1}} {dx^{m-1}} f(x)}{\delta} = 0
が成り立ちます。特に
\frac{d^n}{dx^n} f(x) = 0
が成り立つはずです。
ところが
\frac{d^n}{dx^n} f(x) = c_n \ne0
であり、これは矛盾です。
したがって、多項式 f(x) がある開区間で恒等的にある値に等しいなら定数です。これは区間が閉区間や無限区間の場合でも同様です(その区間に含まれる任意の開区間で同じことが言えるため)。
解法のポイント
本問のような多項式に関する問題では、係数が満たすべき性質を明確にするところから突破口を開くのが一般的ですが、本問ではそれが無理筋であることに早めに気がつくのが第一のポイントです。これは求める自然数が有限個かそれとも無限にあるのかを見極めることとほぼ同義です。ひと睨みで見抜けるのが最も素晴らしいですがなかなかそうも行かないので、試行錯誤して早めに見切りをつけましょう。
求める自然数が無限にありそうだと当たりをつけたら、帰納的に攻められないか考えましょう。本問の場合は本稿で示したように、条件を満たす多項式から別の(より高次の)多項式を具体的に生成できないか考えましょう。
ただし、本問の次数が奇数の場合がそうであるように、帰納的アプローチが取れないこともあります。こういうときは万事休すに近いですが、多項式の性質を用いて矛盾を導き出せないか、検討してみましょう。
多項式というのは x の値が大きくなれば絶対値もいくらでも大きくなるので、本稿で示したようにこれを突破口にするやりかたも結構見受けられます。入試問題なのでそれほど突拍子もない発想は要求されないでしょうし、もし埒が明かないならどうせみんな解けないので、いさぎよく捨ててしまうのが吉です。
なお、本稿の補足で示した、「多項式がある区間でべったり0なら全区間で0」という性質は多項式の基本的な性質の一つなので覚えておきましょう。多分無証明で引用しても問題ないはずです。また、無限箇所で同一の値を取る多項式は定数しかありえない、というのも当たり前ですが結構使えるので、多項式関連でなにか矛盾を導き出したいときには、適用できないか考えてみましょう。