鏡の国の難問 – 1997年東大 数学 第4問

岩崎宏美のヒット曲を思い出します(Dmitri PosudinによるPixabayからの画像)

 1997年東大 数学 第4問 は万華鏡のように鏡に囲まれた空間での光の進み方に関する問題です。問題文は以下の通りで、東大2次試験からの引用です。

 正 3 角形 ABC の頂点 A から辺 AB とのなす角が θ の方向に,3 角形の内部に向かって出発した光線を考える。ただし 0° < θ < 60° とする。この光線は 3 角形の各辺で入射角と反射角が等しくなるように反射し,頂点に到達するとそこでとまるものとする。また,3 角形の内部では光線は直進するものとする。
(1) \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}}4 のとき,この光線はどの頂点に到達するかを述べよ。
(2) 正の整数 k を用いて \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}}{6k+2} と表せるとき,この光線の到達する頂点を求め,またそこへ至るまでの反射の回数を k を用いて表せ。

読んだとおり、光の反射に関する問題です。頂点 A から出発した光が万華鏡の中で反射を繰り返して最終的にどこかの頂点に命中する、と言う内容で、脳みそが沸きそうです。

 しかしながら、この手の反射の問題には小学校からおなじみの「鏡像を描く」というやり方があります。その手法で何とかできないか、見ていきましょう。なお、本稿の内容は東大が発表したものではありません。

1997年東大 数学 第4問 小問1の解法

 小学校などで、「点 A から出た光が C で反射して B に到達するとき、移動距離が最短になるように C を決めてください」的な問題が出たとき、反射面に対して B と対称な点 B’ と A を結ぶ直線と反射面との交点が C です、みたいに解いたと思いますが(図1)、これを応用します。

図1

 すなわち、△ABC の鏡像、さらにその鏡像、…と鏡像を連鎖的にばあっと描いて、 A と鏡像の頂点のどれかを直線で結べば、それが光が反射しながら終点に至るまでの経路(の鏡像展開)です(図2)。

図2

  \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}}4 ということは「4行って \sqrt{3} 上がる」ということなので、三角形の1辺の長さを2にすると三角形の高さが \sqrt{3} になって、問題を考える際に都合がよくなります。

 以上の準備の下に、 \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}}4 が成り立つ鏡像頂点をまず図3の「第1列」の中から探します。

図3

 すると、第1列のどの頂点も \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}} { \text{奇数}} となってしまうので、第1列は対象外であることがわかりました(図4)。

図4

 次に第2列から探します(図5)。

図5

すると今度は、 \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}}4 を満たす鏡像頂点が存在します(図6)。

図6

 あとはこの頂点が何なのかを調べるだけです。これは直ちにわかって、頂点はBです(図7)。

なお、この頂点よりAに近い頂点がないことは、もしそのような頂点があるとすればそれは第1列に存在しなければなりませんが、第1列に \tan \theta = \displaystyle\frac{ \sqrt{3}}4 を満たす鏡像頂点は存在しないことから、明らかです。

東大1997年

Posted by mine_kikaku