因数分解のたすき掛け解法

たすき掛け解法とは
二次式の因数分解のうち、二次の項の係数が1でないもの、たとえば
2x^2 -5x +3
を対象とする場合は、昔は中学校でたすき掛け計算法を教えてくれたものでした。
すなわち、整数係数の二次式
ax^2 +bx +c
において、
\begin{aligned} &a_1a_2 = a \\ &a_2c_1 +a_1c_2 = b \\ &c_1c_2 = c \end{aligned}
を満たすような a1,a2,c1,c2 を探します(下記参照)。
\begin{aligned} & \begin{matrix} a_1 & & c_1 & \longrightarrow & a_2 c_1\\ \times &\nearrow & \times & & + \\[-4mm] &\searrow \\ a_2 & & c_2 & \longrightarrow & a_1 c_2 \\ \end{matrix} \\[-3mm] &\underline{ }\\[-1mm] & \begin{matrix} a & & c & & b \\ & \text{ } & &\text{ } & \\ \end{matrix} \\ \end{aligned}
すると、
ax^2 +bx +c = (a_1x +c_1)(a_2 x+c_2)
とソッコー因数分解完了です。
冒頭の 2x2 – 5x + 3 の例だと、
\begin{aligned} & \begin{matrix} 1 & & -1 & \longrightarrow & -2 \\ \times &\nearrow & \times & & + \\[-4mm] &\searrow \\ 2 & & -3 & \longrightarrow & -3 \\ \end{matrix} \\[-3mm] &\underline{ }\\[-1mm] & \begin{matrix} 2 & & 3 & & -5 \\ & \text{ } & &\text { } & \\ \end{matrix} \\ \end{aligned}
なので
2 x^2 -5x + 3 = (x-1)(2x -3)
と因数分解できます。
この解法によりて勝て!

このようにたすき掛け解法は簡単に因数分解できて大変重宝なのですが、中学生の生徒さんに聞いたら学校でも塾でも教わっていないそうです。
ではどうやって解くのかと聞いたところ、解と係数の公式を使っているとのことでした。
因数分解でいちいち平方根を開かなければならないなど、なるべく楽して解きたい筆者はゾッとします。まあそれでも、「平方根の『根』は根性の『根』。思い込んだら試練の道だ!」と気合で何とかできるうちはいいのですが、以下のような問題が出てくるとちょっと厳しくなります。
a x^2 -(a^2 + a-2) x -2(a+1) を因数分解せよ。(2022年昭和学院秀英高校1(1))
こいつを解と係数の公式で解こうとすると、平方根の中に a の4次式が現れてげんなりします。ところがたすき掛け解法を利用すれば
\begin{aligned} & \begin{matrix} 1 & & -(a+1) & \longrightarrow & -a^2-a \\ \times &\nearrow & \times & & + \\[-4mm] &\searrow \\ a & & 2 & \longrightarrow & 2 \\ \end{matrix} \\[-3mm] &\underline{ }\\[-1mm] & \begin{matrix} a & & -2(a+1) & & -a^2-a+2 \\ & \text{ } & &\text { } & \\ \end{matrix} \\ \end{aligned}
なので
\begin{aligned} & a x^2 -(a^2 + a-2) x -2(a+1) \\ = &(x -a-1)(ax+2) \end{aligned}
と苦もなく因数分解できます。どう見ても本問は、たすき掛け解法を前提としているとしか思えません。
たすき掛け解法は知る人が少なくなっているので、これをマスターすれば強力なアドバンテージになります。たすき掛けでライバルに差をつけろ!