バウムクーヘンはお好きですか? – 1989年東大 数学 第5問

大好きです(macroworldsによるPixabayからの画像)

 989年東大 数学 第5問 はいわゆるバウムクーヘン積分に関する問題です。問題文は以下のとおりです。

f(x)=πx^2 \sin (πx^2) とする。 y=f(x) のグラフの 0 \leqq x \leqq 1 の部分と軸で囲まれた図形を軸のまわりに回転させてできる立体の体積 V=2 \pi \displaystyle\int_0^1 xf(x)dx で与えられることを示し、この値を求めよ。

 本問のように、グラフを y 軸を中心に回転させて、出来上がった回転体の体積を求めることを、バウムクーヘン積分と呼びます。

 そんな名前が付いているということは、グラフの微小部分 f(x + \Delta x ) \Delta x を y 軸の周りにぐるりと回転させて、出来上がった年輪状構造の体積和の極限をとれ、ということなのかも知れませんが、受験問題なのでそんな面倒くさいことはやっていられません。ここはもっとお手軽に、逆関数の積分を利用して値を計算します。

逆関数の積分を利用した体積算出

 体積 V というのはざっくり言うと、 y = f(x) の逆関数 x =f^{-1}(y) y の関数と見立てて、これを y 軸の周りに回転させた図形を y 軸に沿って積分することで、求めることが出来ます。

 すなわち、

 \pi\int | f^{-1}(y)|^2  dy

を計算することで、 V の値を求めようと言う発想です。

  f(x) は増減するので、逆関数が一意に決まるように x の範囲を分割し、それぞれごとに積分を計算することにします。

y = f(x) の増減を調べる

 普通に f(x) を x で微分して増減を調べても良いのですが、少しでも楽をしたいので、 t = \pi x^2 と置き、

y= g(t) =  t \sin  t \\ (0 \leqq t \leqq \pi)

の増減を調べます。

\begin{aligned}
g'(t) &= \sin t + t \cos  t \\
 &= \cos t(\tan t +t)

\end{aligned}

ですが、 0 \leqq t \leqq \displaystyle\frac{ \pi} 2 のとき g'(t) > 0 です。

  \displaystyle\frac{ \pi}2 < t \leqq \pi のとき、 \cos t < 0 です。

 また、

 h(t) = \tan t + t

と置くとき、 \displaystyle\frac{ \pi}2 < t \leqq \pi の範囲で

h'(t) = \frac{1} {\cos ^2 t} +1 > 0

かつ

h( \pi) > 0

かつ

\inf_{t \to \frac{\pi}2 +0 } h(t) < 0 

なので、 h(t) = 0 \displaystyle\frac{ \pi}2 < t \leqq \pi の範囲で解を1つだけ持ち、その解を \alpha と表記すると、 \displaystyle\frac{ \pi}2 < t < \alpha のとき

h(t) < 0 

\alpha < t \leqq \pi のとき

h(t) > 0 

です。

 したがって \displaystyle\frac{ \pi}2 < t < \alpha のとき

g'(t) > 0 

\alpha < t \leqq \pi のとき

g'(t) < 0 

です。

 以上を増減表にまとめると、

t 0 \leqq t < \alpha \alpha \alpha < t \leqq \pi
g'(t) +0
g'(t) \nearrow g(\alpha) \searrow

 ゆえに、 \beta = \sqrt{ \displaystyle\frac{\alpha}{\pi}} と置くとき、 y = f(x) 0 \leqq x < \beta の範囲で単調増加、 \beta < x \leqq 1 の範囲で単調減少です。

V f(x) の増減範囲に応じて分割して求める

  f^{-1} (y) が一意に決まるように、V を 0 \leqq x \leqq \beta の範囲と \beta \leqq x \leqq 1 の範囲に分けます。 前者をV1 、後者を V2 と表記します。

  0 \leqq x \leqq \beta のとき、 \displaystyle\frac{dy}{dx} = f'(x) であることを利用して、

\begin{aligned}
V_1  & = \pi \beta^2 - \pi \int_0 ^{f(\beta) } |f^{-1}(y)|^2 dy \\
 & =\pi \beta^2 - \pi \int_0 ^{\beta} x^2 f'(x) dx

\end{aligned}

です。

 同様に \beta \leqq x \leqq 1 のとき、

\begin{aligned}
V_2  & =   \pi \int_0 ^{f(\beta) } |f^{-1}(y)|^2 dy - \pi \beta^2 \\
 & = \pi \int_1 ^{\beta} x^2 f'(x) dx - \pi \beta^2  \\
 & = - \pi \int_{\beta} ^{1} x^2 f'(x) dx - \pi \beta^2  \\

\end{aligned}

です。

 よって、

\begin{aligned}
V = &  V_1 + V_2 \\
   = & \pi \beta^2 - \pi \int_0 ^{\beta} x^2 f'(x) dx \\
 &  - \pi \int_{\beta} ^{1} x^2 f'(x) dx - \pi \beta^2  \\
= & - \pi \int_0 ^{1} x^2 f'(x) dx \\
= & -\pi [x^2 f(x)] _0^1 + 2\pi \int_0^1 xf(x) dx \\
= & 2\pi \int_0^1 xf(x) dx 
\end{aligned}

です。

V の値を求める

 あとは積分計算するだけです。もう一度、 t = \pi x^2 と変数変換することにより、

\begin{aligned}
V & =2 \pi  \int_0^1 xf(x) dx \\
 & = \int_0^{\pi} t \sin t dt \\
 & = - [t \cos t] _0^{\pi} + \int_0^{\pi} \cos t dt \\
 & = \pi

\end{aligned}

です。

解法のポイント

落ち着いて対処すれば大丈夫です(Charles RondeauによるPixabayからの画像)

  y =f(x) をy軸を中心に回転させて、その面積を求めるという問題なので、これは逆関数の積分だと気がつくことができれば、本問は容易に解くことができると思います。

 逆関数の積分というのにちょっとあせるかも知れませんが、単に変数変換だと思えば、どうということはありません。落ち着いて対処しましょう。

東大1989年

Posted by mine_kikaku