ブラックジャック風カードゲームの勝率 – 2005年東大 数学 第5問

原理的に勝てないようになっている(englishlikeanativeによるPixabayからの画像)

 2005年東大数学 第5問 は、ブラックジャックに似たカードゲームの勝率を求める問題です。問題文は以下のとおりです。

  N を1以上の整数とする。数字 1,2, \cdots,N が書かれたカードを1枚ずつ、計 N 枚用意し、甲、乙のふたりが次の手順でゲームを行う。

(i) 甲が1枚カードをひく、そのカードに書かれた数を a とする。ひいたカードはもとに戻す。

(ii) 甲はもう1回カードをひくかどうか選択する。ひいた場合は、そのカードに書かれた数を b とする。ひいたカードはもとに戻す。ひかなかった場合は b = 0 とする。 a + b > N の場合は乙の勝ちとし、ゲームは終了する。

(iii) a + b \leqq N の場合は、乙が1枚カードをひく。そのカードに書かれた数を c とする。ひいたカードはもとに戻す。 a + b < c の場合は乙の勝ちとし、ゲームは終了する。

(iv) a + b \geqq c の場合は、乙はもう1回カードをひく。そのカードに書かれた数を d とする。 a+ b < c+d \leqq N の場合は乙の勝ちとし、それ以外の場合は甲の勝ちとする。

 (ii)の段階で、甲にとってどちらの選択が有利であるかを a の値に応じて考える。

 以下の問いに答えよ。

(1) 甲が2回目にカードをひかないことにしたとき、甲の勝つ確率を a を用いて表せ。

(2) 甲が2回目にカードをひくことにしたとき、甲の勝つ確率を a を用いて表せ。ただし、各カードがひかれる確率は等しいものとする。

 ゲームのプレイヤーは先攻、後攻に別れ、それぞれカードを最大2回引きます。引いたカードは戻します。引いたカードの合計の多いほうが勝ちですが、合計値が N を超えると負けというところがポイントです。合計値を多くしようとしてあまり欲をこきすぎると、頓死の可能性が有ります。

 引いたカードを戻すので、確率の計算がちょっと楽になってほっとします。では、早速見ていきましょう。

2005年東大 数学 第5問 小問1の解法

 まず記号の準備です。ある事象が発生する確率を p(事象) と表記することにします。また、甲が引いたカードの数字を k 、乙が引いたカードの数字を o とします。

 甲が1回だけカードを引き、その数字が a であるとき、甲が勝つ条件は、

  1. c \leqq a かつ c+d > N
  2. c+d \leqq a

のいずれかが成り立つことです。

 事象①と事象②は排他なので、甲が勝つ確率を P と置くと、

P = p( \text{事象①} ) + p( \text{事象②} ) 

です。

 次に、 p(事象①) について考察します。

 事象①は

c=1 \text{ かつ } c+d =1+d>N \\
\text{または} \\
c=2 \text{ かつ } c+d =2+d>N \\
\text{または}\\
\vdots \\
\text{または}\\
c=a \text{ かつ } c+d =a+d>N \\

と同値ですが、各事象は排他なので、

\begin{aligned} 
p( \text{事象①} ) =  &\sum_{i =1}^ap(c=i \text{ かつ }c+d > N  ) \\
 =  & \sum_{i =1}^a p(c+d > N |c =i ) p(c = i) \\
=  &\frac{1}N\sum_{i =1}^a  p ( N \geqq d > N-i) \\
 =  & \frac{1}N\sum_{i =1}^a   \frac{i}N \\
 = &  \frac{a(a+1)}{ 2N^2}
\end{aligned}
 

です。

 同様に事象②は

c=1 \text{ かつ } c+d =1+d \leqq a \\
\text{または} \\
c=2 \text{ かつ } c+d =2+d \leqq a \\
\text{または}\\
\vdots \\
\text{または}\\
c=a-1 \text{ かつ } c+d =a-1+d \leqq N \\

と同値ですが、各事象は排他なので、

\begin{aligned}
 p( \text{事象②} )  = &  \sum_{i = 1}^{a-1}  p(c=i \text{ かつ } c+d  \leqq a )\\
= & \sum_{i = 1}^{a-1} p(c+d \leqq a |c =i ) p(c=i) \\
 = &  \frac{1}N \sum_{i = 1}^{a-1} p(1 \leqq d \leqq a -i) \\
 = & \frac{1}N \sum_{i = 1}^{a-1} \frac{a-i} N \\
= & \frac{a(a-1)}{2N^2} 
\end{aligned}

です。

 ゆえに、

\begin{aligned}
P =  & p( \text{事象①} ) + p( \text{事象②} )  \\
 = & \frac{a(a+1)}{ 2N^2} + \frac{a(a-1)}{ 2N^2} \\
 = & \frac{a^2}{N^2}

\end{aligned}

です。

2005年東大 数学 第5問 小問2の解法

 甲が2回カードを引き、1枚目の数字が a であるとき、甲が勝つ条件は、 a + b が N 以下でかつ、甲が1回だけカードを引いてその数が a + b であるときに、甲が勝つということとおなじです。すなわち、

  1. a+b \leqq N
  2. 甲が1回だけカードを引いてその値が a + b であるときに、甲が勝つ

の両方の事象が成り立つことです。これに気がつくと、後の計算が非常に楽になります。

 甲が勝つ確率 P

P = p(  \text{事象①} \cap  \text{事象②}) 

ですが、事象①は b が 1 から N -a までのいずれかであるということなので、事象① かつ 事象② は

b=1 \text{ かつ }  \text{事象②}  \\
\text{または} \\
b=2 \text{ かつ }  \text{事象②} \\
\text{または}\\
\vdots \\
\text{または}\\
c=N-a \text{ かつ } \text{事象②} \\

と同値です。ところが各事象は排他なので、

\begin{aligned}
P = & \sum_{i=1}^{N-a} p(b=i \text{ かつ 事象②} ) \\
 = &  \sum_{i=1}^{N-a} p( \text{事象②} \ |b=i)p(b=i) \\
 = &  \frac{1}N \sum_{i=1}^{N-a} p( \text{事象②} |b=i)
\end{aligned}

  b = i のときに事象②が成り立つというのは、甲が1回だけカードを引いてその値が a + i のときに、甲が勝つということと同値です。したがって小問1の結果により、

p( \text{事象②} |b=i) = \frac{(a+i)^2}{N^2}

が成り立ちます。

 ゆえに

\begin{aligned}
P = &  \frac{1}N\sum_{i =1}^{N-a} \frac{(a+i)^2}{N^2} \\
 = & \frac{1}{N^3} \sum_{i =a+1}^{N} i^2 \\
 = & \frac{1}{N^3}  \left ( \sum_{i =1}^{N} i^2 -\sum_{i =1}^{a} i^2 \right ) \\
 = & \frac{N(N+1)(2N+1) - a(a+1)(2a+1)}{6N^3} \\
 = &  \frac{ 2N^3 + 3N^2 +N - 2a^3-3a^2 -a}{6N^3} \\
 = & \frac{ (N-a)(2N^2 +2aN + 2a^2+ 3N +3 a +1)~}{6N^3}
\end{aligned}

です。

おまけ:甲の平均勝率を求めてみよう

 この勝負、甲にとって得なのか損なのかを計算してみましょう。

 まず、カードを1回しか引かない場合です。

\begin{aligned}
\frac{1}N\sum_{a=1}^N \frac{a^2}{N^2} & = \frac{(N+1)(2N+1)}{6N^2}  \\
 & = \frac{1}3 +\frac{1}{2N}+\frac{1}{6N^2}
\end{aligned}

となり、 N ≧ 4 のとき、 \frac{1}2 未満になります。本物のブラックジャックでは、後攻が胴元です。賭け事は基本、胴元が得するようになっていることが、ここでも明らかになりました(ていうか、胴元が損するようでは誰も賭博場などやらない)。

 次にカードを2回引く場合です。

\begin{aligned}
 & \frac{1}N\sum_{a=1}^N (\frac{N(N+1)(2N+1) - a(a+1)(2a+1)}{6N^3}  ) \\
= & \frac{N(N+1)(2N+1) }{6N^3} - \frac{1}N\sum_{a=1}^N \frac{a(a+1)(2a+1)}{6N^3}  \\
 = & \frac{(N+1)(2N+1) }{6N^2} \\ 
&- \frac{1}{6N^4}\sum_{a=1}^N (2a^3+3a^2+a)  \\
= & \frac{(N+1)(2N+1) }{6N^2} \\ 
&- \frac{1}{6N^4} (\frac{1}2 N^2(N+1)^2 +\frac{1}2 N(N+1)(2N+1) +\frac{1}2N(N+1))  \\
= & \frac{(N+1)(2N+1) }{6N^2} \\ 
 &- \frac{1}{12N^3} ( N+1) ^2(N+2)  \\
 = &\frac{1}4 + \frac{1}{6N} -\frac{1}{4N^2} -\frac{1}{6N^3}
\end{aligned}

 意外なことに、2枚引くほうが分が悪いです。

解法のポイント

複雑な事象には条件付き確率の公式を使おう(Michael SchwarzenbergerによるPixabayからの画像)

 問題の内容は一見複雑そうですが、甲が引くカードの値によって勝つ確率が変わることから、条件付き確率の公式を適用することが思いつければ、求める確率を最初から式として書き下せるので、場合分けなど面倒くさいことを考えずに済みます。

 また、小問2に小問1の結果をダイレクトに適用できることに気がつければ、小問2はかなり楽に解くことが出来ます。甲が引くカードの合計値のみがポイントだと言うことに注意すれば、これも容易に気がつくことができるでしょう。問題を解くにあたって本質的な情報は何なのか、常に考えるようにしましょう。

東大2005年

Posted by mine_kikaku