判別式だけが頼りです – 1997年東大 数学 第2問

1997年東大 数学 第2問 は2次不等式の係数に関する問題です。問題文は以下の通りです。
n を正の整数、 a を実数とする。すべての整数 m に対して、
m^2 - (a-1)m + \displaystyle\frac{n^2}{2n+1} a > 0
が成り立つような a の範囲を n を用いて表せ。
問題を一読しただけでは、解法の方針がさっぱり思いつきません。なんか脳髄が理解を拒絶するような文面です。
1997年東大 数学 第2問 の解法
基本方針
とはいえ、いつまでもフリーズしているわけにはいきません。何しろ1997年は、第4問に本問をもしのぐ訳分からんちん問題が控えています。本問を捨てる余裕は、実はありません。
これがもし、すべての実数に対して設問の不等式が成り立つ条件を求めよ、というのなら話は簡単で、判別式
D = (a-1)^2 - 4\frac{n^2}{2n+1} a
が常に負になるように、 a の条件を求めればよいのですが、すべての整数と言うのがミソで、
f(x) = x^2- (a-1)x + \frac{n^2}{2n+1} a
と置く時、判別式 D が正であっても、 f(x) = 0 の2つの実数解 \alpha, \beta (\alpha \leqq \beta) の間に整数が存在しなければ良いということになります。
そこで
[ \alpha] < \alpha \leqq \beta < [\alpha] +1
が成り立つような a の条件を求める([]はガウスの記号)などと、さかしらに掘り下げていくと、はまります。
ここ手堅く、部分点獲得も視野に入れながら(もらえるかどうかは不明ですが)、判別式 D が負になる条件を明らかにしていきます。
判別式 D が負になる条件
判別式 D を a の2次式ととらえると、
\begin{aligned} & D = (a-1)^2 - 4\frac{n^2}{2n+1} a \\ & = \frac{(2n+1) a^2 - (4n^2+4n+2)a + 2n+1}{2n+1} \\ & = \frac{ \{(2n+1) a-1\} \{a-(2n+1) \}}{2n+1} \\ \end{aligned}
なので、これが負になる必要十分条件は
\frac{1}{2n+1} < a < 2n+1\cdots (1)
です。 a がこの範囲の時、すべての実数 x に対して f(x) > 0 なので、当然すべての整数 m に対して f(m) > 0 です。すなわち、不等式(1) は設問の命題が成り立つための十分条件です。
a \geqq 2n+1 のときの評価
関数 y = f(x) は x = \displaystyle\frac{a-1}2 のとき最小値 -\displaystyle\frac{D}4 \leqq 0 をとります。 a が大きくなるとそれにつれて y = f(x) のグラフがどんどん「下」(つまり負の方向)にずれていくので、 \displaystyle\frac{a-1}2 の最寄りの整数 m に対し f(m) < 0 が成り立つ、すなわち設問の命題が成り立たないことが予想されます。
そこでまず、 a = 2n+1 のときにどうなるかを調べます。このとき、
\begin{aligned} f(x) & = x^2- 2nx + n^2 \\ & = (x -n)^2 \end{aligned}
なので f(n) = 0 です。 n は整数なので、設問の命題は成り立ちません。
次に、 a > 2n+1 のときです。 a = 2n+1 のとき f(n) = 0 だったのですから、 a が大きくなればますます f(n) < 0 になりそうです。実際
\begin{aligned} & f(n) \\ &= n^2- (a-1)n + \frac{n^2}{2n+1} a \\ & = n^2+n \\ & \text{ } +\left(-n+ \frac{n^2}{2n+1} \right )a\\ & = n^2+n - \frac{n^2+n}{2n+1} a \\ & < n^2+n -(n^2+n) = 0\\ \end{aligned}
です。 n は整数なので、やはり設問の命題は成り立ちません。
以上をまとめると、 a ≧ 2n+1 とき設問の命題は成り立たないので、その対偶を取って、 a < 2n+1 は設問の命題が成り立つための必要条件です。
a \leqq \frac{1}{2n+1} のときの評価
f(0) = \frac{n^2}{2n+1} a
であることから、 a \leqq 0 のとき、 f(0) \leqq 0 となって、設問の命題が成り立ちません。すなわち、 a > 0 は設問の命題が成り立つための必要条件です。
次に、 0 < a \leqq \displaystyle\frac{1}{2n+1} の場合を考えます。
関数 f(x) は x =\displaystyle\frac{a-1 }2 のとき最小値を取りますが、
\begin{aligned} -1 < -\frac{1}2 < \frac{a-1}{2} & \leqq \frac{ \frac{1}{2n+1 } -1}{2} \\ &= \frac{1-(2n+1)}{2(2n+1)} \\ & < 0 \end{aligned}
なので、 f(-1) > 0 かつ f(0) > 0 が成り立てば、設問の命題が成り立ちます。
ところが、 a > 0 なので明らかに f(0) > 0 です。また、
\begin{aligned} & f(-1) = 1+ (a-1) + \frac{n^2}{2n+1} a \\ & = a + \frac{n^2}{2n+1} a > 0 \end{aligned}
です。したがって、 0 < a \leqq \displaystyle\frac{1}{2n+1} は設問の命題が成り立つための十分条件です。
まとめ
以上をまとめると、以下のようになります。
a | 条件 |
---|---|
0 < a | 必要条件 |
0 < a \leqq \displaystyle\frac{1}{2n+1} | 十分条件 |
\displaystyle\frac{1}{2n+1} < a < 2n+1 | 十分条件 |
a < 2n+1 | 必要条件 |
したがって、設問の命題が成り立つための必要十分条件は、
0 < a < 2n +1
です。
解法のポイント

2次不等式がすべての整数に対して成り立つ、というところから、変に幻惑されてしまいそうですが、オーソドックスに判別式を使って条件を導き出すことがポイントです。これだけでも十分条件は導出できます。
その上で、すべての整数と言う条件から必要条件を求めていきますが、十分条件の導出によって検討範囲が絞られているので、何もないよりずっと検討方針を立てやすくなっています。
そんなわけで2次の多項式の正負を問う問題については、まずは判別式を適用するようにしましょう。