等面四面体の問題 – 1999年京大 理系 後期 第4問

1999年京大 理系 後期 第4問 は空間図形の問題です。問題文は以下の通りです。
△ABC は鋭角三角形とする。このとき、各面すべてが △ABC と合同な四面体が存在することを示せ。
京大の入試にはよく、「そんな訳ないだろ」的な問題が出題されますが、本問もその系譜です。題意が真であると、にわかには信じられません。
解法その1(図形的アプローチ)
△ABCを描いてみる
とりあえず、鋭角三角形を描いてみます(図1)。

図1において、各頂点の角度を、以下のように定義しておきます。
\begin{aligned} & a = \angle \mathrm{BAC} \\ & b = \angle \mathrm{ABC} \\ & c = \angle \mathrm{BCA} \\ \end{aligned}
どうやったら △ABC と合同な面だけで出来た四面体が出来るか考えるため、まずは △ABC と合同な三角形を、辺 BC を共有するように、配置してみます(図2)。

すぐに気が付くことは、四角形 ABDC は平行四辺形であることですが、それはとりあえず置いておきます。
辺BCで折り曲げてみる
ここで、図形が描かれた平面を、辺BC で折り曲げてみることをイメージします。すると、 AD の長さは折り曲げた角度 \theta の連続関数なので、 \theta をうまく調整すれば AD = BC とできるはずで、このとき四面体 ABDC は確かに等面四面体になります(図3)(おおっ!)。

時間がないときには、上記の内容をつらつら記述しても、原理は正しいのでそこそこの点数はもらえると思います。
あとは、AD が \theta の連続関数であることを示し、中間値の定理を適用して AD = BC と出来ることを証明します。
平行四辺形ABDCにおいて BC < AD を示す
平行四辺形 ABDC において、 △ABC は鋭角三角形なので、頂点 A から辺 BC に向けて下した垂線の足は、 BC 上にあります。これを H と置きます。また、 D から BC に下した垂線の足を I と置きます。
さらに、
\begin{aligned} h &= \mathrm{AH} \\ l &= \mathrm{HI} \\ \end{aligned}
と置きます(図4)。

このとき、
\begin{aligned} & \mathrm{BC}^2 \\ & = \mathrm{AB}^2 +\mathrm{AC}^2 -2 \mathrm{AB} \cdot \mathrm{AC} \cos a \\ \\ & \mathrm{AD}^2 \\ &= \mathrm{AB}^2 +\mathrm{DB}^2 -2 \mathrm{AB} \cdot \mathrm{DB} \cos (b+c) \\ & = \mathrm{AB}^2 +\mathrm{AC}^2 -2 \mathrm{AB} \cdot \mathrm{AC} \cos (\pi - a) \\ & = \mathrm{AB}^2 +\mathrm{AC}^2 +2 \mathrm{AB} \cdot \mathrm{AC} \cos a \end{aligned}
ですが、△ABCは鋭角三角形なので、 \cos a > 0 です。したがって、
BC2 < AD2
が成り立ちます(図5)。

ところが、図4から明らかなように、
\mathrm{AD}^2 = 4h^2 + l^2
なので、
\mathrm{BC}^2 < 4h^2 + l^2
が成り立ちます。
辺BCで折り曲げた空間図形において、ADが \theta の連続関数であることを示す
次に、図6において、 AD2 は以下の式で表すことが出来ます。
\mathrm{AD}^2 = 2h^2 (1 -\cos {\theta} ) +l^2

すなわち、 AD2 は(ADも) \theta の連続関数です。
中間値の定理を適用して等面四面体が出来ることを示す
0 \leqq \theta \leqq \pi のとき、AD2 の値の範囲は
0 \leqq \mathrm{AD}^2 \leqq 4 h^2 + l^2
ですが、 0 < \mathrm{BC}^2 < 4h^2 + l^2 なので、中間値の定理により、ある 0 < \theta_0 < \pi が存在して
\mathrm{AD}^2 = 2 h^2(1 -\cos {\theta}_0 ) + l^2 = \mathrm{BC}^2
が成り立ちます。このとき四面体 ABDC は確かに等面四面体になります。
解法その2(直方体に内接する等面四面体が存在することを利用する)
任意の直方体には、等面四面体が内接しているという性質が知られています。図7において、四面体P-RUW は等面四面体です。

図7において、直方体に内接する四面体の各辺は、直方体の各面の対角線になっています。そこで、鋭角三角形ABCが任意に与えられたとき、三角形の各辺の長さが各面の対角線になる直方体を構築できれば、内接する四面体は各面が△ABCに合同な等面四面体になります。
鋭角三角形ABCが与えられたとき、各辺の長さを
\begin{aligned} \alpha &= \mathrm{AB} \\ \beta &= \mathrm{BC} \\ \gamma &= \mathrm{CA} \\ \end{aligned}
と置きます。
連立方程式
\left \{ \begin{aligned} x^2 + y^2 &= \alpha^2 \\ y^2 + z^2 & = \beta^2 \\ x^2 + z^2 & = \gamma^2 \\ \end{aligned} \right . \cdots(1)
を x^2, y^2, z^2 について解くと、
\begin{aligned} & x^2 = \frac{\alpha^2 - \beta^2 + \gamma^2 }{2} \\ & y^2 = \frac{\alpha^2 +\beta^2- \gamma^2 }{2} \\ & z^2 = \frac{-\alpha^2 + \beta^2 + \gamma^2 }{2} \\ \end{aligned}
となりますが、△ABCは鋭角三角形なので、
\begin{aligned} &\alpha^2 + \gamma^2 > \beta^2 \\ & \alpha^2 +\beta^2> \gamma^2 \\ & \beta^2 + \gamma^2 > \alpha^2 \\ \end{aligned}
が成り立ちます。したがって、連立方程式(1)は正の実数解
\begin{aligned} & x = \sqrt{\frac{\alpha^2 - \beta^2 + \gamma^2 }{2} } \\ & y = \sqrt {\frac{\alpha^2 +\beta^2- \gamma^2 }{2} } \\ & z = \sqrt{ \frac{-\alpha^2 + \beta^2 + \gamma^2 }{2} } \\ \end{aligned}
を持ちますが、この x,y,z を縦、横、高さとする直方体に内接する等面四面体は、各面が△ABCと合同になります。
ゆえに、各面すべてが △ABC と合同な四面体が存在することを示せました。
解法のポイント

直方体に等面四面体が内接するというのは、割と良く知られているようなので、これを知っていれば、解法その2のやり方で、比較的容易に解くことが出来ます。
それを知らなかった場合は解法その1の手法で攻めることになりますが、空間図形の存在証明問題において、本稿のように、2つの平面の成す角をいろいろ動かすことをイメージしてみるというのは、結構使えます(2008年京大乙第3問)。類似の問題に出くわしたら、試してみてください。