複素平面上のフィボナッチ数列 – 2001年東大 数学 第4問

複素平面上でフィボナッチを考えます(MPMPixによるPixabayからの画像)

2023年3月14日

 2001年東大 数学 第4問 は複素平面上の数列問題です。この分野は入試ではポピュラーなので、本番に備えて十分な準備をしておきたいものです。

 本問の大きな特徴は、あのフィボナッチ数列 a_{n+2} = a_{n+1} + a_n を複素数に適用しているところです。どんな興味深い結果が得られるか、わくわくしますが(おい)、早速見ていきます。問題文は以下の通りです。

複素数平面上の点 a_1,a_2, \cdot \cdot \cdot, a_n, \cdot \cdot \cdot を、

\left \{ \begin{aligned} & a_1 = 1, \text{ } a_2 = i, \\ & a_{n+2} = a_{n+1} + a_n \\ & (n=1,2,\cdot \cdot \cdot) \\ \end{aligned} \right.

により定め

\begin{aligned} & b_n = \frac{a_{n+1}}{a_n} \end{aligned}

とおく。ただし、 i は虚数単位である。

(1) 3点 b_1, b_2, b_3 を通る円 C の中心と半径を求めよ。
(2) すべての点 b_n \text{ } (n=1,2,\cdot \cdot \cdot) は円 C の周上にあることを示せ。

 複素平面の問題なので、図形に絡めてきました。円周上にあることの証明とか、計算が大変そうな予感がしますが、どうでしょうか。

小問1の解法

 図形の問題なので、セオリー通りに図に書いて、イメージをつかみます。

\begin{aligned}
& a_1 = 1 \\
& a_2= i \\
& a_3 = 1+i \\
& a_4= 1+2i \\
\end{aligned}

なので、

\begin{aligned}
& b_1 = i \\
& b_2= 1-i \\
& b_3 = \frac{3+i}{2} \\
\end{aligned}

です。これを図示すると、以下の通りです。

2001年東大 数学 第4問 初期3点の配置
図1

 明らかに(ていうか、あからさまに)、 \triangle b_1 b_2 b_3 は直角二等辺三角形であり、その外接円 C の中心は b_1 b_2 の中点 \frac{1}{2} 、半径は線分 | b_2 - b_1 | の長さの半分である \frac{\sqrt{5} } {2} であることが、難しい計算を要せずすぐにわかることと思います。

 後述しますが、初期値 a_1 a_2 をどのように選んでも、こういうわかりやすい結果になるというわけではありません。出題者の細やかな配慮が感じ取れます。

小問2の解法

 まず、記号の準備です。

\begin{aligned}
& b_n = u_n + iv_n &(u_n,v_n \in \mathbb{R} )
\end{aligned}

と置きます。このとき、証明したいのは

(u_n-\frac{1}{2})^2+v_n^2= \frac{5}{4}

です。式を変形すると、

u_n^2- u_n+v_n^2= 1 \text{ } \cdots (1)

です。すべての自然数 n に対して式(1)が成り立つことを、数学的帰納法で証明します。

 まず、 n= 1 のときは、小問1より明らかに式(1)が成り立ちます。

 次に、 n= m ( m \geqq 1 ) のときに、式(1)が成り立つと仮定します。このとき、

a_{m+2} = a_{m+1} +a_m

であることから、

b_{m+1} = 1+ \frac{1}{b_m}

が成り立ちます。よって、数学的帰納法の仮定より

\begin{aligned}
& u_{m+1}+iv_{m+1} = 1+ \frac{1}{u_m+iv_m} \\
& \text{      } =1+\frac{u_m-iv_m}{u_m^2+v_m^2} \\
& \text{      } =1+\frac{u_m-iv_m}{1+u_m} \\
\end{aligned}

が成り立つので

\begin{aligned}
& u_{m+1} = \frac{1+2u_m}{1+u_m} \\
& v_{m+1} = -\frac{v_m}{1+u_m}
\end{aligned}

が成り立ちます。したがって、

\begin{aligned}
&u_{m+1}^2-u_{m+1}+v_{m+1}^2 \\
& = \left (\frac{1+2u_m}{1+u_m} \right )^2 \\
& - \frac{1+2u_m}{1+u_m} +  \left (\frac{-v_m}{1+u_m} \right )^2 \\
& = \frac{1+4u_m+4u_m^2  } { (1+u_m)^2} \\
& -\frac{1+3u_m+2u_m^2  }   { (1+u_m)^2} \\
& + \frac{ v_m^2 } { (1+u_m)^2} \\
&  = \frac{u_m+2u_m^2 + v_m^2 } { (1+u_m)^2}  \\
& = \frac{(u_m + u_m^2)  + (u_m^2 + v_m^2)  } { (1+u_m)^2}  \\
& = \frac{ (u_m + u_m^2)  + (1+u_m)  } { (1+u_m)^2} = 1 \\
\end{aligned}

が成り立つので、 n= m+1 のときに式(1)が証明できました。ゆえにすべての自然数 n に対して式(1)が成り立ち、同一円 C の周上にあることが(わりとあっさり)証明できました。

発展

b_n が同一円周上に存在するための十分条件

  b_1 式①を満たせば、小問2で示したように、すべての b_n が同一円周上に存在します。ここで

\begin{aligned}
& a_n = s_n + it_n &(s_n,t_n \in \mathbb{R} )
\end{aligned}

 と置く時、

\begin{aligned}
& b_1 = \frac{s_2 +it_2}{s_1+it_1} \\
& = \frac{s_2s_1 +t_2t_1  } {s_1^2 + t_1^2} \\
& +i  \frac{(s_1t_2-s_2t_1) } {s_1^2 + t_1^2}
\end{aligned}

であるので、これを①に代入すると

\begin{aligned}
& \frac{|a_2| ^2}{|a_1|^2}- \frac{s_1s_2+t_1t_2}{|a_1|^2}  =1\\
\end{aligned}

分母を払って

\begin{aligned}
& |a_2|^2 -( s_1s_2+t_1t_2) = |a_1|^2 \text{ } \cdots (2)
\end{aligned}

を得ます。

  式(2)の幾何学的な意味を考察します。式(2)を以下のように変形します。

\begin{aligned}
& s_2^2 + t_2^2 -( s_1s_2+t_1t_2) = s_1^2  + t_1^2
\end{aligned}

 上記式の左辺を平方完成し、余剰項を右辺に移項すると、

\begin{aligned}
&  (s_2-\frac{1}{2} s_1)^2 +(t_2- \frac{1}{2}t_1)^2  \\
& =  \frac{5}{4}(s_1^2  + t_1^2)
\end{aligned}

となります。 a_1 a_2 で表記すると、

|a_2- \frac{1}{2} a_1| = \frac{ \sqrt{5} }{2} |a_1|

と変形できます。すなわち、 a_2 \frac{a_1}{2} を中心とし、半径 \frac{ \sqrt{5} } { 2} |a_1| の円周上にあります。

  a_1 が与えられたとき、 a_2 をこのように選べば、 a_1 a_2 は式②を満たし、すべての b_n は同一円周上にあります。たとえば、

\begin{aligned}
& a_1 = i \\
& a_2= 1+i \\
& a_3 = 1+2i \\
& a_4= 2+3i \\
\end{aligned}

のとき、 |a_2- \frac{1}{2}a_1 |=|1+ \frac{1}{2} i| = \frac{ \sqrt{5}} {2} となりますが、このとき、

\begin{aligned}
& b_1 = 1-i \\
& b_2= \frac{3+i}{2} \\
& b_3 = \frac{8-i}{5} \\
\end{aligned}

の3点は確かに、中心 \frac{1}{2} \frac{ \sqrt{5} } {2} の円周上に存在します。しかし、直角二等辺三角形のような、筋の良い形にはなっていません(図2)。

2001年東大 数学 第4問 初期3点が直角二等辺三角形にならない場合
図2

 もしこんな形で出題されていたら、小問1は大分苦労したことでしょう。本問に関しては、まことに出題者に感謝です。

b_n が同一円周上に存在するための必要条件

 今度は逆に、 b_n が同一円周上に存在したとき、初期値 a_1,a_2 が満たすべき条件を考察します。

 先ほどと同じように、

\begin{aligned}
& a_n = s_n + it_n &(s_n,t_n \in \mathbb{R} )
\end{aligned}

 と置きます。また、二次方程式

x^2-x-1=0

の2つの解をそれぞれ、 \alpha \beta ( \alpha < \beta ) と置きます。このとき、自然数 n に対し、

\begin{aligned}
& s_{n+2} = s_{n+1} +s_n \\
& t_{n+2} = t_{n+1} +t_n \\
\end{aligned}

なので、よくある漸化式の解法により、一般項

\begin{aligned}
& s_n = & \frac{1}{\sqrt{5}} \{ (\beta^{n-1} - \alpha^{n-1}) s_2  \\
&& + (\beta^{n-2} - \alpha^{n-2}) s_1 \}  \\
& t_n   =  & \frac{1}{\sqrt{5}} \{ (\beta^{n-1} - \alpha^{n-1}) t_2  \\
& &+ (\beta^{n-2} - \alpha^{n-2}) t_1 \} 
\end{aligned}

を得ます。ここで、  \beta - \alpha = \sqrt{5} \alpha \beta = -1 であることを使っています。

 定義より、

\begin{aligned}
 & b_n = \frac{a_{n+1}}{a_n} \\
& = \frac{ s_{n+1} + it_{n+1}} { s_n + it_n} \\
& = \frac{ s_{n+1} s_n+ t_{n+1}t_n } { s_n^2 + t_n^2 } \\
& + i \frac{  s_nt_{n+1} - s_{n+1}t_n} { s_n^2 + t_n^2 } \\
\end{aligned}

なので、

\begin{aligned}
& b_n = u_n + iv_n &(u_n,v_n \in \mathbb{R} )
\end{aligned}

と置く時、

u_n =  \frac{ s_{n+1} s_n+ t_{n+1}t_n } { s_n^2 + t_n^2 }
v_n= \frac{ s_nt_{n+1} - s_{n+1}t_n} { s_n^2 + t_n^2 } 

となります。いささかうんざりする計算を行った結果、

\begin{aligned}
u_n^2 -u_n + v_n^2 = \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG}  \\
\\ 
\cdots (3)
\end{aligned}

ここに

\begin{aligned}
&F_n = \beta^{2n-4}(\beta s_2+s_1)^2 \\
& \text{ } +\alpha^{2n-4}(\alpha s_2+s_1)^2 \\
& \text{ } +\beta^{2n-4}(\beta t_2+t_1)^2 \\
& \text{ } +\alpha^{2n-4}(\alpha t_2+t_1)^2 \\
& G =  |a_2|^2 -( s_1s_2+t_1t_2) - |a_1|^2

\end{aligned}

を得ます。

 式(1)が成り立つとき、すべての n \in \mathbb{N} に対し、

 \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} = 1

が成り立つので、 G = 0 が成り立ちます。すなわち、 b_n が同一円周上に存在するための必要条件は、初期値 a_1,a_2 式(2)を満たすことです。

 これは十分条件でもあったので、以上をまとめると、 b_n が同一円周上に存在するための必要十分条件は、初期値 a_1,a_2 式(2)を満たすこととなります。

b_n は黄金比に収束する

2001年東大 数学 第4問 フィボナッチ数列のイメージ
フィボナッチ数列と言えば黄金比(Thanks for your Like • donations welcomeによるPixabayからの画像)

初期値 a_1,a_2 をどのように選んでも、 b_n \beta = \frac{1+ \sqrt{5} }{2} に収束します。これはいわゆる黄金比です。

\begin{aligned}
& b_n = u_n + iv_n &(u_n,v_n \in \mathbb{R} )
\end{aligned}

とおいたとき、まず v_n が0に収束することを示します。

\begin{aligned}
& b_n = 1 + \frac{1} {b_{n-1} }

\end{aligned}

なので、

\begin{aligned}
& u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\
&v_n = - \frac{v_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2}

\end{aligned}

が成り立ちますが、明らかに u_n > 0 なので、 n \geqq 2 のとき、

u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} > 1

が成り立ちます。したがって n \geqq 2 のとき、

\begin{aligned}

u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2}  \\
< 1 + \frac{1}{u_{n-1}} < 2

\end{aligned}

が成り立ちます。

 一方、

\begin {aligned} & |v_n| = \frac{ |v_{n-1}| } {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\ & \text{ } < \frac{ |v_{n-1}| } {1+v_{n-1}^2} \leqq \frac {1}{2} \end {aligned}

なので、 n \geqq 2 のとき、

\begin {aligned} & u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\ & \text{ } > 1+ \frac{1} { 4+v_{n-1}^2} \\ & \text{ } \geqq 1+ \frac{1} { 4+\frac{1}{4}} \\ & \text{ } = \frac{21}{17} > \frac{7}{6} \end {aligned}

が成り立ちます。

 以上の準備の下に、

\begin{aligned} &|v_n| = \frac{ |v_{n-1}| } { u_{n-1}^2+v_{n-1}^2 } \\ & \text{ } <\frac{ |v_{n-1}| } { u_{n-1}^2 } <\frac{36} {49} |v_{n-1}| \\ & \text{ } < \left ( \frac{36} {49} \right )^{n-1} |v_{1}| \\ \end{aligned}

なので、 n \nearrow \infty のとき、 v_n は0に収束します。

 次に、 u_n を評価します。

 \beta^2-\beta -1 = 0

なので、これを式(3)から辺々引くと、

\begin{aligned}

 & (u_n- \alpha)( u_n - \beta) + v_n^2 +1 \\
& = \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} \text{ } \cdots  (4)

\end{aligned}

を得ます。ここで、 \alpha = 1 - \beta であることを利用しました。

 式(4)から直ちに、

 \begin{aligned}
 & u_n - \beta  \\
&=\frac{1}{u_n-\alpha}  \\ 
& \times \left ( \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG}  -1-v_n^2 \right ) \\
& \text{ } \cdots (5)
\end{aligned}

を得ますが、ここで式(5)の右辺を評価します。

  |\beta | > 1 |\alpha| < 1 であることから、 \lim_{ n \to \infty } F_n = + \infty が成り立ちます。したがって、

\lim_{n \to \infty}  \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} = 1 

が成り立ちます。

 また、先に見たように、 \lim_{ n \to \infty } v_n = 0 であり、さらに、 u_n > \frac{7} {6} \alpha < 0 であることから、

0 < \frac{1}{ u_n - \alpha} < \frac{6}{7}

であるので、式(5)の右辺は、 n \nearrow \infty のとき、0に収束します。したがって、 u_n \beta に収束することが示せました。

 もともとの条件のように、初期値 a_1,a_2 式(2)を満たす場合は、もう少し簡単に収束を証明できます。

解法のポイントと今後の学習方針

複素平面はしっかり押さえておきましょう(klimkinによるPixabayからの画像)

 小問1は、図を描くことでソッコー解答にたどり着くことが出来ました。実際の試験で、この時間短縮効果は非常に大きいです。図形の問題に限らず、複素数物でもできるだけ、図を書いてイメージをつかむようにしてください。

 小問2は特にひっかけもなく、題意に沿って素直に計算していけば、比較的短時間で証明ができると思います。帰納法の仮定である式(1)をうまく適用できるよう、常に考えながら計算を進めてください。

 本問で極限値を求める設問が無かったのは、大いなる謎です。しかしこれは、変に時間を取られる要素が無くなったという意味で、実際に試験を受けた人にはチャンスだったはずです。本問のように素直に答えが出せる問題は、取りこぼしなくきっちり回答し、併せて他の問題を解くための時間を捻出しましょう。

 複素平面物は、2次元ベクトル物の特徴を持ちながら、数字としての四則演算や、複素数特有の「共役」の概念もあって、ちょっととっつきにくいところがあります。

 しかしながら、特に本問のように数列と絡めた問題は鉄板なので、苦手な人は専門の問題集を購入して、じっくり取り組むことをお勧めします。

東大2001年

Posted by mine_kikaku