複素平面上のフィボナッチ数列 – 2001年東大 数学 第4問

2001年東大 数学 第4問 は複素平面上の数列問題です。この分野は入試ではポピュラーなので、本番に備えて十分な準備をしておきたいものです。
本問の大きな特徴は、あのフィボナッチ数列 a_{n+2} = a_{n+1} + a_n を複素数に適用しているところです。どんな興味深い結果が得られるか、わくわくしますが(おい)、早速見ていきます。問題文は以下の通りです。
複素数平面上の点 a_1,a_2, \cdot \cdot \cdot, a_n, \cdot \cdot \cdot を、
\left \{
\begin{aligned}
& a_1 = 1, \text{ } a_2 = i, \\
& a_{n+2} = a_{n+1} + a_n \\
& (n=1,2,\cdot \cdot \cdot) \\
\end{aligned}
\right.
により定め
\begin{aligned}
& b_n = \frac{a_{n+1}}{a_n}
\end{aligned}
とおく。ただし、 i は虚数単位である。
(1) 3点 b_1, b_2, b_3 を通る円 C の中心と半径を求めよ。
(2) すべての点 b_n \text{ } (n=1,2,\cdot \cdot \cdot) は円 C の周上にあることを示せ。
複素平面の問題なので、図形に絡めてきました。円周上にあることの証明とか、計算が大変そうな予感がしますが、どうでしょうか。
小問1の解法
図形の問題なので、セオリー通りに図に書いて、イメージをつかみます。
\begin{aligned} & a_1 = 1 \\ & a_2= i \\ & a_3 = 1+i \\ & a_4= 1+2i \\ \end{aligned}
なので、
\begin{aligned} & b_1 = i \\ & b_2= 1-i \\ & b_3 = \frac{3+i}{2} \\ \end{aligned}
です。これを図示すると、以下の通りです。

明らかに(ていうか、あからさまに)、 \triangle b_1 b_2 b_3 は直角二等辺三角形であり、その外接円 C の中心は b_1 と b_2 の中点 \frac{1}{2} 、半径は線分 | b_2 - b_1 | の長さの半分である \frac{\sqrt{5} } {2} であることが、難しい計算を要せずすぐにわかることと思います。
後述しますが、初期値 a_1 、 a_2 をどのように選んでも、こういうわかりやすい結果になるというわけではありません。出題者の細やかな配慮が感じ取れます。
小問2の解法
まず、記号の準備です。
\begin{aligned} & b_n = u_n + iv_n &(u_n,v_n \in \mathbb{R} ) \end{aligned}
と置きます。このとき、証明したいのは
(u_n-\frac{1}{2})^2+v_n^2= \frac{5}{4}
です。式を変形すると、
u_n^2- u_n+v_n^2= 1 \text{ } \cdots (1)
です。すべての自然数 n に対して式(1)が成り立つことを、数学的帰納法で証明します。
まず、 n= 1 のときは、小問1より明らかに式(1)が成り立ちます。
次に、 n= m ( m \geqq 1 ) のときに、式(1)が成り立つと仮定します。このとき、
a_{m+2} = a_{m+1} +a_m
であることから、
b_{m+1} = 1+ \frac{1}{b_m}
が成り立ちます。よって、数学的帰納法の仮定より
\begin{aligned} & u_{m+1}+iv_{m+1} = 1+ \frac{1}{u_m+iv_m} \\ & \text{ } =1+\frac{u_m-iv_m}{u_m^2+v_m^2} \\ & \text{ } =1+\frac{u_m-iv_m}{1+u_m} \\ \end{aligned}
が成り立つので
\begin{aligned} & u_{m+1} = \frac{1+2u_m}{1+u_m} \\ & v_{m+1} = -\frac{v_m}{1+u_m} \end{aligned}
が成り立ちます。したがって、
\begin{aligned} &u_{m+1}^2-u_{m+1}+v_{m+1}^2 \\ & = \left (\frac{1+2u_m}{1+u_m} \right )^2 \\ & - \frac{1+2u_m}{1+u_m} + \left (\frac{-v_m}{1+u_m} \right )^2 \\ & = \frac{1+4u_m+4u_m^2 } { (1+u_m)^2} \\ & -\frac{1+3u_m+2u_m^2 } { (1+u_m)^2} \\ & + \frac{ v_m^2 } { (1+u_m)^2} \\ & = \frac{u_m+2u_m^2 + v_m^2 } { (1+u_m)^2} \\ & = \frac{(u_m + u_m^2) + (u_m^2 + v_m^2) } { (1+u_m)^2} \\ & = \frac{ (u_m + u_m^2) + (1+u_m) } { (1+u_m)^2} = 1 \\ \end{aligned}
が成り立つので、 n= m+1 のときに式(1)が証明できました。ゆえにすべての自然数 n に対して式(1)が成り立ち、同一円 C の周上にあることが(わりとあっさり)証明できました。
発展
b_n が同一円周上に存在するための十分条件
b_1 が式①を満たせば、小問2で示したように、すべての b_n が同一円周上に存在します。ここで
\begin{aligned} & a_n = s_n + it_n &(s_n,t_n \in \mathbb{R} ) \end{aligned}
と置く時、
\begin{aligned} & b_1 = \frac{s_2 +it_2}{s_1+it_1} \\ & = \frac{s_2s_1 +t_2t_1 } {s_1^2 + t_1^2} \\ & +i \frac{(s_1t_2-s_2t_1) } {s_1^2 + t_1^2} \end{aligned}
であるので、これを①に代入すると
\begin{aligned} & \frac{|a_2| ^2}{|a_1|^2}- \frac{s_1s_2+t_1t_2}{|a_1|^2} =1\\ \end{aligned}
分母を払って
\begin{aligned} & |a_2|^2 -( s_1s_2+t_1t_2) = |a_1|^2 \text{ } \cdots (2) \end{aligned}
を得ます。
式(2)の幾何学的な意味を考察します。式(2)を以下のように変形します。
\begin{aligned} & s_2^2 + t_2^2 -( s_1s_2+t_1t_2) = s_1^2 + t_1^2 \end{aligned}
上記式の左辺を平方完成し、余剰項を右辺に移項すると、
\begin{aligned} & (s_2-\frac{1}{2} s_1)^2 +(t_2- \frac{1}{2}t_1)^2 \\ & = \frac{5}{4}(s_1^2 + t_1^2) \end{aligned}
となります。 a_1 、 a_2 で表記すると、
|a_2- \frac{1}{2} a_1| = \frac{ \sqrt{5} }{2} |a_1|
と変形できます。すなわち、 a_2 は \frac{a_1}{2} を中心とし、半径 \frac{ \sqrt{5} } { 2} |a_1| の円周上にあります。
a_1 が与えられたとき、 a_2 をこのように選べば、 a_1 、 a_2 は式②を満たし、すべての b_n は同一円周上にあります。たとえば、
\begin{aligned} & a_1 = i \\ & a_2= 1+i \\ & a_3 = 1+2i \\ & a_4= 2+3i \\ \end{aligned}
のとき、 |a_2- \frac{1}{2}a_1 |=|1+ \frac{1}{2} i| = \frac{ \sqrt{5}} {2} となりますが、このとき、
\begin{aligned} & b_1 = 1-i \\ & b_2= \frac{3+i}{2} \\ & b_3 = \frac{8-i}{5} \\ \end{aligned}
の3点は確かに、中心 \frac{1}{2} 、 \frac{ \sqrt{5} } {2} の円周上に存在します。しかし、直角二等辺三角形のような、筋の良い形にはなっていません(図2)。

もしこんな形で出題されていたら、小問1は大分苦労したことでしょう。本問に関しては、まことに出題者に感謝です。
b_n が同一円周上に存在するための必要条件
今度は逆に、 b_n が同一円周上に存在したとき、初期値 a_1,a_2 が満たすべき条件を考察します。
先ほどと同じように、
\begin{aligned} & a_n = s_n + it_n &(s_n,t_n \in \mathbb{R} ) \end{aligned}
と置きます。また、二次方程式
x^2-x-1=0
の2つの解をそれぞれ、 \alpha 、 \beta ( \alpha < \beta ) と置きます。このとき、自然数 n に対し、
\begin{aligned} & s_{n+2} = s_{n+1} +s_n \\ & t_{n+2} = t_{n+1} +t_n \\ \end{aligned}
なので、よくある漸化式の解法により、一般項
\begin{aligned} & s_n = & \frac{1}{\sqrt{5}} \{ (\beta^{n-1} - \alpha^{n-1}) s_2 \\ && + (\beta^{n-2} - \alpha^{n-2}) s_1 \} \\ & t_n = & \frac{1}{\sqrt{5}} \{ (\beta^{n-1} - \alpha^{n-1}) t_2 \\ & &+ (\beta^{n-2} - \alpha^{n-2}) t_1 \} \end{aligned}
を得ます。ここで、 \beta - \alpha = \sqrt{5} 、 \alpha \beta = -1 であることを使っています。
定義より、
\begin{aligned} & b_n = \frac{a_{n+1}}{a_n} \\ & = \frac{ s_{n+1} + it_{n+1}} { s_n + it_n} \\ & = \frac{ s_{n+1} s_n+ t_{n+1}t_n } { s_n^2 + t_n^2 } \\ & + i \frac{ s_nt_{n+1} - s_{n+1}t_n} { s_n^2 + t_n^2 } \\ \end{aligned}
なので、
\begin{aligned} & b_n = u_n + iv_n &(u_n,v_n \in \mathbb{R} ) \end{aligned}
と置く時、
u_n = \frac{ s_{n+1} s_n+ t_{n+1}t_n } { s_n^2 + t_n^2 }
v_n= \frac{ s_nt_{n+1} - s_{n+1}t_n} { s_n^2 + t_n^2 }
となります。いささかうんざりする計算を行った結果、
\begin{aligned} u_n^2 -u_n + v_n^2 = \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} \\ \\ \cdots (3) \end{aligned}
ここに
\begin{aligned} &F_n = \beta^{2n-4}(\beta s_2+s_1)^2 \\ & \text{ } +\alpha^{2n-4}(\alpha s_2+s_1)^2 \\ & \text{ } +\beta^{2n-4}(\beta t_2+t_1)^2 \\ & \text{ } +\alpha^{2n-4}(\alpha t_2+t_1)^2 \\ & G = |a_2|^2 -( s_1s_2+t_1t_2) - |a_1|^2 \end{aligned}
を得ます。
式(1)が成り立つとき、すべての n \in \mathbb{N} に対し、
\frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} = 1
が成り立つので、 G = 0 が成り立ちます。すなわち、 b_n が同一円周上に存在するための必要条件は、初期値 a_1,a_2 が式(2)を満たすことです。
これは十分条件でもあったので、以上をまとめると、 b_n が同一円周上に存在するための必要十分条件は、初期値 a_1,a_2 が式(2)を満たすこととなります。
b_n は黄金比に収束する

初期値 a_1,a_2 をどのように選んでも、 b_n は \beta = \frac{1+ \sqrt{5} }{2} に収束します。これはいわゆる黄金比です。
\begin{aligned} & b_n = u_n + iv_n &(u_n,v_n \in \mathbb{R} ) \end{aligned}
とおいたとき、まず v_n が0に収束することを示します。
\begin{aligned} & b_n = 1 + \frac{1} {b_{n-1} } \end{aligned}
なので、
\begin{aligned} & u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\ &v_n = - \frac{v_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \end{aligned}
が成り立ちますが、明らかに u_n > 0 なので、 n \geqq 2 のとき、
u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} > 1
が成り立ちます。したがって n \geqq 2 のとき、
\begin{aligned} u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\ < 1 + \frac{1}{u_{n-1}} < 2 \end{aligned}
が成り立ちます。
一方、
\begin {aligned}
& |v_n| = \frac{ |v_{n-1}| } {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\
& \text{ } < \frac{ |v_{n-1}| } {1+v_{n-1}^2} \leqq \frac {1}{2}
\end {aligned}
なので、 n \geqq 2 のとき、
\begin {aligned}
& u_n = 1+ \frac{u_{n-1}} {u_{n-1}^2+v_{n-1}^2} \\
& \text{ } > 1+ \frac{1} { 4+v_{n-1}^2} \\
& \text{ } \geqq 1+ \frac{1} { 4+\frac{1}{4}} \\
& \text{ } = \frac{21}{17} > \frac{7}{6}
\end {aligned}
が成り立ちます。
以上の準備の下に、
\begin{aligned}
&|v_n| = \frac{ |v_{n-1}| } { u_{n-1}^2+v_{n-1}^2 } \\
& \text{ } <\frac{ |v_{n-1}| } { u_{n-1}^2 } <\frac{36} {49} |v_{n-1}| \\
& \text{ } < \left ( \frac{36} {49} \right )^{n-1} |v_{1}| \\
\end{aligned}
なので、 n \nearrow \infty のとき、 v_n は0に収束します。
次に、 u_n を評価します。
\beta^2-\beta -1 = 0
なので、これを式(3)から辺々引くと、
\begin{aligned} & (u_n- \alpha)( u_n - \beta) + v_n^2 +1 \\ & = \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} \text{ } \cdots (4) \end{aligned}
を得ます。ここで、 \alpha = 1 - \beta であることを利用しました。
式(4)から直ちに、
\begin{aligned} & u_n - \beta \\ &=\frac{1}{u_n-\alpha} \\ & \times \left ( \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} -1-v_n^2 \right ) \\ & \text{ } \cdots (5) \end{aligned}
を得ますが、ここで式(5)の右辺を評価します。
|\beta | > 1 、 |\alpha| < 1 であることから、 \lim_{ n \to \infty } F_n = + \infty が成り立ちます。したがって、
\lim_{n \to \infty} \frac{F_n-3(-1)^nG} {F_n+2(-1)^nG} = 1
が成り立ちます。
また、先に見たように、 \lim_{ n \to \infty } v_n = 0 であり、さらに、 u_n > \frac{7} {6} 、 \alpha < 0 であることから、
0 < \frac{1}{ u_n - \alpha} < \frac{6}{7}
であるので、式(5)の右辺は、 n \nearrow \infty のとき、0に収束します。したがって、 u_n は \beta に収束することが示せました。
もともとの条件のように、初期値 a_1,a_2 が式(2)を満たす場合は、もう少し簡単に収束を証明できます。
解法のポイントと今後の学習方針

小問1は、図を描くことでソッコー解答にたどり着くことが出来ました。実際の試験で、この時間短縮効果は非常に大きいです。図形の問題に限らず、複素数物でもできるだけ、図を書いてイメージをつかむようにしてください。
小問2は特にひっかけもなく、題意に沿って素直に計算していけば、比較的短時間で証明ができると思います。帰納法の仮定である式(1)をうまく適用できるよう、常に考えながら計算を進めてください。
本問で極限値を求める設問が無かったのは、大いなる謎です。しかしこれは、変に時間を取られる要素が無くなったという意味で、実際に試験を受けた人にはチャンスだったはずです。本問のように素直に答えが出せる問題は、取りこぼしなくきっちり回答し、併せて他の問題を解くための時間を捻出しましょう。
複素平面物は、2次元ベクトル物の特徴を持ちながら、数字としての四則演算や、複素数特有の「共役」の概念もあって、ちょっととっつきにくいところがあります。
しかしながら、特に本問のように数列と絡めた問題は鉄板なので、苦手な人は専門の問題集を購入して、じっくり取り組むことをお勧めします。