ネイピア数の定義を再確認する – 2016年東大 数学 第1問
2016年東大 数学 第1問 は、いわゆる「ネイピア数」に関する問題です。
ネイピア数とは自然対数の底のことですが、学校ではこの名称で習わなかったため、今一つなじみがありません。ティッシュペーパー?、とか、西洋剣のレイピア?、とか、ボケをかましたくなります。
そんなネイピア数に関する問題。以下の通りです。
e を自然対数の底、すなわち e = \lim_{t \to \infty} (1 + \frac{1}{t} )^t とする。すべての正の実数 x に対し、次の不等式が成り立つことを示せ。
(1+ \frac{1}{x} )^x < e < (1+ \frac{1}{x} )^{x + \frac{1}{2} }
問題文に、ネイピア数の定義が現れました。これを使って証明しなければならないのか、とか、証明に e の基本的な性質、 \frac{d} {dx} e^x = e^x とか \frac{d} {dx} \log x = \frac{1} {x} を使っていいのか、トートロジーになってしまうのではないか、などと心配になります(実際は、そんなこと気にしなくてよいようです)。
七面倒くさいことは考えずに、とりあえず淡々と進めます。
不等式左側の解法
まずは、
\left ( 1+ \frac{1}{x} \right )^x < e
の証明です。問題文に、「 e を自然対数の底」とあるので、自然対数 \log およびその性質は、所与のものとします。
であれば当然、両辺の対数を取って
x \log ( 1 + \frac{1}{x} ) < 1
が証明すべきターゲットとなります。
t = \frac{1} {x} と変数変換します。
\frac{1}{t} \log ( 1 + t ) < 1
0 < x < \infty なので、 t も 0 < t < \infty です。
ところが、 \log(1+t) は 0 \leqq t < \infty の範囲で連続なので、平均値の定理より、すべての t > 0 に対して、ある実数 c \in (0, t ) が存在して、
\begin{aligned} & \text{不等式の左辺} \\ & = \frac{ \log( 1+ t) - \log1 } { t} \\ & = \frac{1}{1+ c} < 1 \end{aligned}
が成り立つので、不等式の左側は証明できました。