死角なき難問 – 1996年東大 数学 第3問
赤道方向の検証
図3の \mathrm{PO} と図4の \mathrm{RO} の大小を比較します。
図5に示すように、 \triangle \mathrm { A_1 O B } \sim \triangle \mathrm{BOC} であり、 \mathrm{A_1 O } = \frac{\sqrt{3}} {2} l 、 \mathrm{BO} = r なので、 \mathrm{ CO } = \frac{2 r^2}{\sqrt{3} l} です。
ところが、 \triangle \mathrm{A_1 O A_2' } \sim \triangle \mathrm {DOC} \sim \triangle \mathrm{OPC} であり、 \mathrm{A_1 O} : \mathrm{A_1 A_2'} : \mathrm{O A_2' } = \sqrt{3} : \sqrt{2} : 1 なので、
\begin{aligned} & \mathrm{PO} = \sqrt{2} \frac{r^2}{l} \\ & \mathrm{DO} = 2 \frac{r^2}{l} \end{aligned}
が成り立ちます。
一方、 \mathrm{ RO} = \mathrm{ PQ } が成り立ちます。図4の \mathrm R の射影元の球上の点を \mathrm R' とするとき、これを「横から見る」と、 \mathrm { RR' = PO } であることがわかります(図6)。
\mathrm R' が球 S 上の点なので、 \mathrm{R'O} = r です。したがって、3平方の定理より、 \mathrm{ RO = PQ } が成り立ちます。
ゆえに、
\begin{aligned} & \mathrm{RO} = \mathrm{PQ} = \sqrt{ r^2 -\left (\sqrt{2} \frac{r^2}{l} \right )^2 } \\ & \text{ } = \frac{r} {l}\sqrt{ l^2 -2r^2 } \end{aligned}
となりますが、 l \geqq 2r のとき、 \mathrm{RO} \geqq \mathrm{PO} が成り立つので、 \mathrm{P} および、ひし形の横方向のもう1つの頂点は、図4の図形に含まれます。
極方向の検証
l > 2r のとき、 \mathrm{DO} = 2r^2 / l < r で、 \mathrm{D} は球の「北極」に到達しませんが、図6からわかるように、図4のエリアは北極を超えて、平面 H の「裏側」に回り込んでいます。したがって、 \mathrm{D} およびひし形の縦方向のもう1つの頂点は、図4の図形に含まれます。
l = 2r のとき、 \mathrm{DO} = r となり、 \mathrm{D} は球の「北極」に一致します。一方、図4のエリアの縁も北極を通るので、 \mathrm{D} およびひし形の縦方向のもう1つの頂点は、図4の図形に含まれます。
以上の考察により、 l \geqq 2r のとき、図3のひし形の4つの頂点がすべて、図4の図形に常に含まれることがわかりました。楕円が凸な図形であることから、ひし形は常に図4の図形に含まれ、死角は存在しません。
すなわち、 l \geqq 2r は、 S 上のすべての点から \mathrm A_1, \mathrm A_2, \cdots , \mathrm A_8 のうち少なくとも1点が見えるための十分条件です。
ゆえに、 S 上のすべての点から \mathrm A_1, \mathrm A_2, \cdots , \mathrm A_8 のうち少なくとも1点が見えるための必要十分条件は
l \geqq 2r
です。
l = 2r は立方体が球に外接している状態です。立方体全体が球の外側にあれば、頂点から見た死角はなくなるということを意味しています。