死角なき難問 – 1996年東大 数学 第3問
小問2の解法
基本的な考え方
l \geqq 2r のときの、各頂点からの監視エリアの網羅度を図7に示します。要は、図3と図4を合わせた図です。
全球面が漏れなく監視できていることがわかりますが、赤丸で囲まれた色の薄いところは、1つの頂点しか見えない場所です。全球面上に8か所あります。
これらの場所は実は、各頂点の「真下」に位置しています。ヤマトを衛星の真下に移動させて、直上の衛星を破壊すれば、反射衛星砲からの攻撃は届かなくなります。
これを防ぐための衛星の高度を求めるのが、小問2の主旨です。
以下の図8において、 \mathrm{DO} \geqq \mathrm{GO} ですが、 \mathrm{DO} \leqq \mathrm{GO} になれば、1頂点からしか見えない球面上の領域は無くなります。
\mathrm{DO} = 2r^2/l であったので、 \mathrm{GO} の具体的な値を求めて、 \mathrm{DO} の長さと比較します。
\mathrm{GO} の具体的な値を求める
\mathrm{A_5O} = \frac{ \sqrt{3}} {2} l 、 \mathrm{IO} = r なので、 \mathrm{A_5 I } = \sqrt{ \frac{3}{4} l^2 - r^2 } です。 \triangle \mathrm{A_5 O} I \sim \triangle \mathrm{IOE} であることから、
\mathrm{IE} = \frac{r^2}{ \sqrt{3} l} \sqrt{ 3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 }
が成り立ちます。
ちなみに \mathrm{IE} は、各頂点から球面を見下ろした時に見える円の半径です。
次に、 \triangle \mathrm{A_5 O A_6'} \sim \triangle \mathrm{JOE} \sim \triangle \mathrm{JIG} であることと、 \mathrm{A_5O} : \mathrm{A_5 A_6'} : \mathrm{A_6' O } = \sqrt{3} : \sqrt{2} : 1 であることから、
\begin{aligned} & \mathrm{GF} = \frac{\sqrt{2}} {\sqrt{3}}\mathrm{IE} \\ &= \frac{ \sqrt{2} r^2 }{ 3 l} \sqrt{ 3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 } \end{aligned}
が成り立ちます。
一方、 \mathrm{EO} は図3の \mathrm{CO} と等しく、 \mathrm{ CO } = \frac{2 r^2}{\sqrt{3} l} であることと、 \triangle \mathrm{A_5 O A_6'} \sim \triangle \mathrm{EOF} であることから、
\mathrm{FO} = \frac{1}{\sqrt{3}} \mathrm{EO} = \frac{2 r^2}{3 l}
が成り立ちます。
したがって、
\begin{aligned} & \mathrm{GO} = \mathrm{GF} - \mathrm{FO} \\ & = \frac{ \sqrt{2} r^2 }{ 3 l} \sqrt{ 3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 } - \frac{2 r^2}{3 l} \end{aligned}
です。
\mathrm{GO} \geqq \mathrm{DO} となる条件を求める
いよいよ、 \mathrm{DO} と \mathrm{GO} の大小を比較します。
\mathrm{GO} \geqq \mathrm{DO} のとき、
\frac{ \sqrt{2} r^2 }{ 3 l} \sqrt{ 3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 } - \frac{2 r^2}{3 l} \geqq \frac{2r^2}{l}
左辺第2項を右辺に移項して
\frac{ \sqrt{2} r^2 }{ 3 l} \sqrt{ 3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 } \geqq \frac{8r^2}{3l}
両辺を \frac{ \sqrt{2} r^2 }{ 3 l} で割って、
\sqrt{ 3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 } \geqq 4 \sqrt{2}
両辺を2乗して
3 \left ( \frac{l}{r} \right ) ^2- 4 \geqq 32
したがって
l \geqq 2 \sqrt{3} r
が成り立ちます。逆に l \geqq 2 \sqrt{3} r のとき、上記のプロセスを逆にたどることによって、 \mathrm{GO} \geqq \mathrm{DO} が成り立ちます。
以上、なんか高校入試みたいな計算の結果、 \mathrm{GO} \geqq \mathrm{DO} が成り立つ、すなわち S 上のすべての点から \mathrm A_1, \mathrm A_2, \cdots , \mathrm A_8 のうち少なくとも2点が見えるための必要十分条件は、 l \geqq 2 \sqrt{3} r であることが証明できました。
解法のポイント
本問を図を描いて解こうとする場合、図4の作成がポイントになります。球面上の図形を射影するのは難しいですが、斜めから見た円が楕円に見えることに注意することと、横から見た図が図3であることから、どの位置に来るかはわかると思います。
本問のように球が絡んだ空間図形の問題の場合、2方向(場合によっては3方向)からの図を描いて、イメージをつかむようにしてください。