判別式だけが頼りです – 1997年東大 数学 第2問

助けて判別式!あなただけが頼りです(PexelsによるPixabayからの画像)

2023年3月27日

1997年東大 数学 第2問 は2次不等式の係数に関する問題です。問題文は以下の通りです。

n を正の整数、 a を実数とする。すべての整数 m に対して、

m^2 - (a-1)m + \frac{n^2}{2n+1} a > 0

が成り立つような a の範囲を n を用いて表せ。

 問題を一読しただけでは、解法の方針がさっぱり思いつきません。なんか脳髄が理解を拒絶するような文面です。

1997年東大 数学 第2問 の解法

基本方針

 とはいえ、いつまでもフリーズしているわけにはいきません。何しろ1997年は、第4問に本問をもしのぐ訳分からんちん問題が控えています。本問を捨てる余裕は、実はありません。

 これがもし、すべての実数に対して設問の不等式が成り立つ条件を求めよ、というのなら話は簡単で、判別式

D = (a-1)^2 - 4\frac{n^2}{2n+1} a

が常に負になるように、 a の条件を求めればよいのですが、すべての整数と言うのがミソで、

f(x) = x^2- (a-1)x + \frac{n^2}{2n+1} a

と置く時、判別式 D が正であっても、 f(x) = 0 の2つの実数解 \alpha, \beta (\alpha \leqq \beta) の間に整数が存在しなければ良いということになります。

 そこで

[ \alpha] < \alpha  \leqq \beta < [\alpha] +1

が成り立つような a の条件を求める([]はガウスの記号)などと、さかしらに掘り下げていくと、はまります

 ここ手堅く、部分点獲得も視野に入れながら(もらえるかどうかは不明ですが)、判別式 D が負になる条件を明らかにしていきます。

判別式 D が負になる条件

 判別式 D a の2次式ととらえると、

\begin{aligned}
& D = (a-1)^2 - 4\frac{n^2}{2n+1} a \\
& = \frac{(2n+1) a^2 - (4n^2+4n+2)a + 2n+1}{2n+1} \\
& = \frac{ \{(2n+1) a-1\} \{a-(2n+1) \}}{2n+1} \\


\end{aligned}

なので、これが負になる必要十分条件は

\frac{1}{2n+1} < a < 2n+1\cdots (1)

です。 a がこの範囲の時、すべての実数 x に対して f(x) > 0 なので、当然すべての整数 m に対して f(m) > 0 です。すなわち、不等式(1) は設問の命題が成り立つための十分条件です。

a \geqq 2n+1 のときの評価

 まず、 a = 2n+1 のときにどうなるかを調べます。このとき、

f(x) = x^2- 2nx + n^2

なので、 f(n) = 0 です。 n は整数なので、設問の命題は成り立ちません。

 次に、 a > 2n+1 のとき、

\begin{aligned}
& f(n) \\
&= n^2- (a-1)n + \frac{n^2}{2n+1} a \\
& = n^2+n \\
& \text{ } +\left(-n+ \frac{n^2}{2n+1} \right )a\\
& = n^2+n - \frac{n^2+n}{2n+1} a \\
& < n^2+n -(n^2+n) = 0\\

\end{aligned}

です。 n は整数なので、やはり設問の命題は成り立ちません。

 以上をまとめると、 a \geqq 2n+1 のとき、設問の命題は成り立たないので、その対偶を取って、 a < 2n+1 は設問の命題が成り立つための必要条件です。

a \leqq \frac{1}{2n+1} のときの評価

f(0) = \frac{n^2}{2n+1} a

であることから、 a \leqq 0 のとき、 f(0) \leqq 0 となって、設問の命題が成り立ちません。すなわち、 a > 0 は設問の命題が成り立つための必要条件です。

 次に、 0 < a \leqq \frac{1}{2n+1} の場合を考えます。

 関数 f(x) x = (a-1)/2 のとき最小値を取りますが、

-1 < \frac{a-1}{2} < 0

なので、 f(-1) > 0 かつ f(0) > 0 が成り立てば、設問の命題が成り立ちます。

 ところが、 a > 0 なので明らかに f(0) > 0 です。また、

\begin{aligned}
& f(-1) = 1+ (a-1) + \frac{n^2}{2n+1} a \\
& = a + \frac{n^2}{2n+1} a > 0
\end{aligned}

です。したがって、 0 < a \leqq \frac{1}{2n+1} は設問の命題が成り立つための十分条件です。

まとめ

 以上をまとめると、以下のようになります。

a 条件
a > 0 必要条件
0 < a \leqq \frac{1}{2n+1} 十分条件
\frac{1}{2n+1} < a < 2n+1 十分条件
a < 2n+1 必要条件

 したがって、設問の命題が成り立つための必要十分条件は、

0 < a < 2n +1

です。

解法のポイント

判別式が基本です(Edward LichによるPixabayからの画像)

 2次不等式がすべての整数に対して成り立つ、というところから、変に幻惑されてしまいそうですが、オーソドックスに判別式を使って条件を導き出すことがポイントです。これだけでも十分条件は導出できます。

 その上で、すべての整数と言う条件から必要条件を求めていきますが、本問の場合は十分条件が出た段階で、その後の道筋が見えてくるような設問の建付けになっていました。

 いつもこんなにうまくいくとは限りませんが、2次の多項式の係数に関する条件を問う問題については、まずは判別式を適用するようにしましょう。

東大1997年

Posted by mine_kikaku