相加相乗平均と関数の凸性を使う – 1999年京大 理系 後期 第2問

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2023年2月28日

1999年京大 理系 後期 第2問 は三角関数の問題です。問題文は以下の通りです。

α,β,γ \alpha, \beta, \gamma α>0,β>0,γ>0,α+β+γ=π \alpha >0, \beta>0, \gamma > 0, \alpha+\beta + \gamma = \pi を満たすものとする。

 このとき、 sinαsinβsinγ \sin \alpha \sin \beta \sin \gamma の最大値を求めよ。

 ぱっと見、加法定理関係や微分を使えば、さくっと解けそうな気がします。

1999年京大 理系 後期 第2問 の解法

相加相乗平均を適用してみる

 とは言え、与式が対称式になっているし、値が正なので、相加相乗平均が使えそうな気もします。

 試しに式を書いてみます。

sin3α+sin3β+sin3γ3sinαsinβsinγ\begin{aligned} & \frac{\sin^3\alpha + \sin^3\beta +\sin^3\gamma }{3} \\ & \geqq \sin \alpha \sin \beta \sin \gamma \end{aligned}

  sinα=sinβ=sinγ \sin \alpha = \sin \beta = \sin \gamma のときに等号が成立し、その時の値が最大値だ!と言いたいところですが、世の中そんなに甘くありません。

 相加相乗平均を使って最大値を求める場合には、上の不等式の左辺が定数になるとか、少なくとも左辺が上から抑えられる必要があります。

sinx \sin x の凸性を利用する

 そこで、 sinx \sin x が上に凸な関数であることを利用します。

 相加相乗平均を sinx \sin x の三乗根に適用することによって、

 

sinα+sinβ+sinγ3sinαsinβsinγ3\begin{aligned} & \frac{\sin\alpha + \sin\beta +\sin\gamma }{3} \\ & \geqq \sqrt[3]{\sin \alpha \sin \beta \sin \gamma } \end{aligned}

ですが、 sinx \sin x が上に凸な関数であることから、

sin(α+β+γ3)sinα+sinβ+sinγ3\begin{aligned} & \sin \left (\frac{ \alpha+\beta + \gamma }{3} \right ) \\ & \geqq \frac{\sin\alpha + \sin\beta +\sin\gamma }{3} \end{aligned}

が成り立ちます。実際、

sin(α+β+γ3)=sin(12(2α+β3)+12(β+2γ3))12sin(2α+β3)+12sin(β+2γ3)12(2sinα+sinβ3)+12(sinβ+2sinγ3)=sinα+sinβ+sinγ3\begin{aligned} & \sin \left (\frac{ \alpha+\beta + \gamma }{3} \right ) \\ & = \sin \left ( \frac{1}{2}(\frac{ 2\alpha+\beta }{3}) +\frac{1}{2}(\frac{ \beta + 2\gamma }{3}) \right ) \\ & \geqq \frac{1}{2} \sin \left ( \frac{ 2\alpha+\beta }{3} \right ) +\frac{1}{2} \sin \left ( \frac{ \beta + 2\gamma }{3} \right ) \\ & \geqq \frac{1}{2} \left ( \frac{ 2 \sin\alpha+\sin \beta }{3} \right ) \\ &+\frac{1}{2} \left ( \frac{ \sin \beta + 2 \sin \gamma }{3} \right ) \\ & = \frac{ \sin \alpha + \sin \beta + \sin \gamma }{3} \end{aligned}

となります。

最大値を求める

  α+β+γ=π \alpha+\beta + \gamma = \pi であることから、

32=sinπ3=sin(α+β+γ3)sinα+sinβ+sinγ3sinαsinβsinγ3\begin{aligned} & \frac{\sqrt3}{2} \\ & = \sin \frac{\pi}{3} \\ & =\sin \left (\frac{ \alpha+\beta + \gamma }{3} \right ) \\ &\geqq \frac{\sin\alpha + \sin\beta +\sin\gamma }{3} \\ & \geqq \sqrt[3]{\sin \alpha \sin \beta \sin \gamma} \end{aligned}

 両辺を3乗して

338sinαsinβsinγ\begin{aligned} & \frac{3\sqrt3}{8} \geqq \sin \alpha \sin \beta \sin \gamma \end{aligned}

を得ます。

 ところが、 α=β=γ=π3 \alpha = \beta = \gamma = \frac{\pi}{3} のとき、

sinαsinβsinγ=338\begin{aligned} & \sin \alpha \sin \beta \sin \gamma = \frac{3\sqrt3}{8} \end{aligned}

となるので、 sinαsinβsinγ \sin \alpha \sin \beta \sin \gamma の最大値は

338\frac{3\sqrt3}{8}

です。

1999年京大 理系 後期 第2問 の別解

 加法定理や微分を使ったやりかたです。

変数を減らす

α+β+γ=π \alpha+\beta + \gamma = \pi なので γ=παβ \gamma = \pi - \alpha - \beta です。これを代入して

sinαsinβsinγ=sinαsinβsin(παβ)=sinαsinβsin(α+β)\begin{aligned} & \sin \alpha \sin \beta \sin \gamma \\ &= \sin \alpha \sin \beta \sin (\pi - \alpha -\beta) \\ & = \sin \alpha \sin \beta \sin (\alpha + \beta) \\ \end{aligned}

β \beta を固定して α \alpha の関数と見立て、それを fβ(α) f_{\beta}(\alpha) と表記します。すなわち、

fβ(α)=sinαsinβsin(α+β)f_{\beta}(\alpha) = \sin \alpha \sin \beta \sin (\alpha + \beta)

です。

一方の変数を固定して最大値を求める

 これを α \alpha で微分します。

ddαfβ(α)=cosαsinβsin(α+β)+sinαsinβcos(α+β)=sinβ{cosαsin(α+β)    +sinαcos(α+β)}=sinβsin(2α+β)\begin{aligned} & \frac{d}{d \alpha} f_{\beta}(\alpha)\\ & = \cos \alpha \sin \beta \sin (\alpha + \beta) \\ & + \sin \alpha \sin \beta \cos (\alpha + \beta) \\ & = \sin \beta \{ \cos \alpha \sin (\alpha + \beta) \\ & \text{    }+ \sin \alpha \cos (\alpha + \beta) \} \\ & = \sin \beta \sin (2 \alpha + \beta) \end{aligned}

  β<π \beta < \pi なので sinβ>0 \sin \beta > 0 、また、 2α+βπ 2 \alpha +\beta \leqq \pi のとき sin(2α+β)0 \sin (2 \alpha + \beta) \geqq 0 2α+β>π 2 \alpha +\beta > \pi のとき sin(2α+β)<0 \sin (2 \alpha + \beta) < 0 なので、 fβ(α) f_{\beta}(\alpha) α=πβ2 \alpha= \frac{\pi - \beta}{2} のとき最大値を取ります。

 ここで β \beta の関数 f(β) f(\beta) を、

f(β)=fβ(πβ2)=sin(πβ2)sinβsin(πβ2+β)=sin(πβ2)sinβsin(π+β2)=cos2β2sinβ=(1+cosβ2)sinβ=12sinβ+14sin2β\begin{aligned} & f(\beta) = f_{\beta} (\frac{\pi - \beta}{2}) \\ & = \sin (\frac{\pi - \beta}{2}) \sin \beta \sin (\frac{\pi - \beta}{2} + \beta) \\ & = \sin (\frac{\pi - \beta}{2}) \sin \beta \sin (\frac{\pi + \beta}{2} ) \\ & = \cos^2 \frac{\beta}{2} \sin \beta \\ & = (\frac{1+ \cos \beta}{2})\sin \beta \\ & = \frac{1}{2} \sin \beta + \frac{1}{4} \sin 2\beta \end{aligned}

とおくとき、これの最大値が求める値となります。

最大値 of 最大値を求める

  f(β) f( \beta) を微分します。

ddβf(β)=12cosβ+12cos2β=12cos3β2cosβ2\begin{aligned} & \frac{d}{d\beta} f(\beta) \\ & = \frac{1}{2} \cos \beta + \frac{1}{2} \cos 2\beta \\ & = \frac{1}{2} \cos \frac{3\beta}{2} \cos \frac{\beta}{2} \end{aligned}

 これより、 f(β) f(\beta) の増減は以下のようになります。

β \beta<π3< \frac{\pi}{3} π3 \frac{\pi}{3} π3< \frac{\pi}{3} <
ddβf(β) \frac{d}{d\beta} f(\beta) +0
f(β) f(\beta) \nearrow 338 \frac{3 \sqrt{3}}{8} \searrow

 ゆえに、求める最大値は

338\frac{3 \sqrt{3}}{8}

です。

解法のポイント

凸関数の性質を利用しよう(Damir BelavićによるPixabayからの画像)

 対称式を連想させる設問なので、相加相乗平均を使ってみようという発想は自然に浮かんでくると思います。問題は上限をどのように抑えるかですが、ここで sinx \sin x の凸性を利用しようと思いつくことがポイントです。

 本稿の最初の解法では、上に凸であるという以外の三角関数の性質は使っていません。すなわち、上に凸ならどんな関数でも、本問の不等式は成り立ちます。たとえば上に凸な関数

f(x)=x(1x)f(x) = x(1-x)

に対し、α,β,γ \alpha, \beta, \gamma α>0,β>0,γ>0,α+β+γ=1 \alpha >0, \beta>0, \gamma > 0, \alpha+\beta + \gamma = 1 を満たす場合、

f(α)f(β)f(γ)f(\alpha)f(\beta)f(\gamma)

の最大値は、本稿の最初の解法と同様の論考により、

8243\frac{8}{243}

であることがわかります。

 凸関数と言うのは線形性に準じる重要な性質なので、応用範囲も広いです。不等号を扱う問題で、係数の和が1になって、

f(kakxk)kakf(xk)(kak=1)\begin{aligned} f( \sum_k a_k x_k) \geqq \sum_k a_k f(x_k) \\ (\sum_k a_k=1) \end{aligned}

みたいなものを証明したい場合は、関数 f(x) f(x) が上に凸になっていないか、確認するようにしましょう。不等号が逆向きでも同じです。そのときは関数が下に凸になっていないかどうか、確認しましょう。

京大1999年

Posted by mine_kikaku