存在領域の難問 – 1988年東大 数学 第3問

曲線の軌跡の面積を求めます(Gordon JohnsonによるPixabayからの画像)

2023年2月28日

方程式が3つの実数解を持つための条件

 ここで a の関数 g_{s,t}(a)

  g_{s,t}(a) =\frac{3}{4}a^3 -3sa^2+3s^2a +s-s^3 +t 

と定義します。

  このとき、 a = 0 g_{s,t}(a) = 0 の解ではないので、 g_{s,t}(0) \ne 0 、すなわち

t \ne s^3 -s

です。

 よって、方程式 g_{s,t}(a)=0 s-1 \leqq a \leqq s+1 の範囲に0以外の3つの異なる実数解を持つための必要十分条件は、

t \ne s^3 -s
かつ
s-1 < a < s+1 の範囲内に極大値、極小値を取る
かつ
g_{s,t}(s-1) \leqq 0
かつ
g_{s,t}(s+1) \geqq 0
かつ
極大値>0
かつ
極小値<0

 です(図2)。

図2

Pの座標が満たすべき条件

  g_{s,t}(a) a で微分すると、

\begin{aligned}
\frac{d}{da}g_{s,t}(a) &=\frac{9}{4}a^2 -6s+3s^2 \\
& =\frac{3}{4}(3a-2s)(a-2s)

\end{aligned}

なので、関数 g_{s,t}(a) s \ne 0 のとき a = \frac{2}{3}s および a = 2s のときに極値を取ります。

  s = 0 のとき、 g_{0,t}(a) は単調増加関数になり、 g_{0,t}(a) = 0 は高々1個しか実数解を持ちません。よって、 s = 0 は除外します。

  g_{s,t}(a) s-1 < a < s+1 の範囲内に極大値、極小値を取るので、これを具体的な不等式に表現すると、

 s-1 < \frac{2}{3}s,2s < s+1 

です。よって、 s の範囲は、

 -1 < s < 1 

ですが、 s=0 を除外するので

 -1 < s < 0, \text{または} 0< s<1 

となります。

 極値の値は g_{s,t}(\frac{2}{3}s),g_{s,t}(2s) ですが、ここで気をつけなければならないのは、 s の正負によって、それらのどちらが極大値になり、どちらが極小値になるかが入れ替わることです。

  s > 0 のとき、 \frac{2}{3}s < 2s なので、 g_{s,t}(\frac{2}{3}s) が極大値、 g_{s,t}(2s) が極小値です。

  s < 0 のとき、 2s < \frac{2}{3}s なので、 g_{s,t}(2s) が極大値、 g_{s,t}(\frac{2}{3}s) が極小値です。

 以上をまとめると、方程式 g_{s,t}(a)=0 s-1 \leqq a \leqq s+1 の範囲に0以外の3つの異なる実数解を持つための必要十分条件は、 (s,t) が以下の連立不等式を満たすことです。

\left \{
\begin{aligned}

  -1 < s < 0, & \text{または} 0 < s < 1 & \cdots(1) \\
t  & \ne s^3-s  &\cdots(2)\\
g_{s,t}(s-1) & \leqq 0 &\cdots(3)\\
g_{s,t}(s+1)  &  \geqq 0 & \cdots(4)\\
g_{s,t}(\frac{2}{3}s) &> 0(s>0) &\cdots(5)\\
g_{s,t}(\frac{2}{3}s) &< 0(s<0) &\cdots(5) \\

g_{s,t}(2s) &< 0(s>0)& \cdots(6) \\
g_{s,t}(2s) &> 0(s<0) &\cdots(6) \\
\end{aligned}

\right .

東大1988年

Posted by mine_kikaku