級数和の極限は東大でも積分挟み撃ち – 2001年東大 数学 後期 第3問

ぐるぐる回ります(Mehmet Turgut KirkgozによるPixabayからの画像)

2023年2月27日

積分挟み撃ちを適用して T_k を上から評価する

 f(k) + m +\frac{\alpha}{2\pi} < c_{k,m} < f(k) +m +\frac{\beta}{2\pi}

ですが \beta - \alpha < 2 \pi なので

m-1 + \frac{\beta}{2 \pi} < m + \frac{\alpha}{2 \pi}

です。したがって、

 f(k) + m -1+\frac{\beta}{2\pi} < c_{k,m} < f(k) +m +\frac{\beta}{2\pi}

です。ところが、 \frac{d f^{-1}}{dy} (y) は単調減少関数なので、

 \begin{aligned}
& \frac{d}{dy} f^{-1}(f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi} ) \\
<  & \frac{d}{dy}f^{-1}(c_{k,m}) \\
< & \frac{d}{dy}f^{-1}(f(k) +m-1 +\frac{\beta}{2 \pi} )

\end{aligned}

が成り立ちます。

 同様に、

 f(k) + m -1+\frac{\beta}{2\pi} < y < f(k) +m +\frac{\beta}{2\pi}

を満たすすべての y に対して、

 \begin{aligned}
& \frac{d}{dy} f^{-1}(f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi} ) \\
<  & \frac{d}{dy}f^{-1}(y) \\
< & \frac{d}{dy}f^{-1}(f(k) +m-1 +\frac{\beta}{2 \pi} )

\end{aligned}

が成り立つので、積分挟み撃ちによって、

 \begin{aligned}
& \frac{d}{dy} f^{-1}(f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi} ) \\
< &  \int_{f(k) + m-1+\frac{\beta}{2 \pi}}^{f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\
< & \frac{d}{dy}f^{-1}(f(k) +m-1 + \frac{\beta}{2 \pi} )

\end{aligned}

が成り立ちます。

 これらの不等式を使って、 T_k を上から評価します。

\begin{aligned}
 
 T_k   < & \frac{L}{2\pi}\sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \frac{ d }{dy}f^{-1}( c_{k,m})
\end{aligned}

ですが、不等式の右辺の和は

\begin{aligned}
& \sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \frac{ d }{dy}f^{-1}( c_{k,m}) \\

& < \sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \frac{ d }{dy}f^{-1}(f(k)+m-1 + \frac{\beta}{2 \pi}) \\
 
& < \sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \int_{f(k) + m-2 + \frac{\beta}{2\pi}}^{f(k) + m-1+ \frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\

& =  \int_{f(k) -2+ \frac{\beta}{2\pi}}^{f(k+1)-1+\frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\

& <  \int_{f(k) -2}^{f(k+1)} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\

& =  f^{-1}(f(k+1)) -f^{-1}(f(k)-2)  \\
& =  k+1 - f^{-1}(f(k)-2)  \\
& =  1 + f^{-1}(f(k)) - f^{-1}(f(k)-2)

\end{aligned}

と評価できます。

 ここで再び、平均値の定理を適用します。

f(k)-2 < c_k < f(k)

を満たす c_k が存在して、

\begin{aligned}
& f^{-1}(f(k)) -f^{-1}(f(k)-2)  \\
= & 2\frac{df^{-1}}{dy}(c_k) \\
< & 2\frac{d}{dy}f^{-1}(f(k)-2)  \\
= & \frac{2}{ \sqrt{D + 4a(f(k)-2)}} \\
= & \frac{2}{ \sqrt{D + 4a(ak^2+bk +c-2)}} \\
= & \frac{2}{ \sqrt{(2ak+b)^2 -8a}} \\
\end{aligned}

が成り立ちます。

 したがって

T_k < \frac{L}{2\pi} \left \{ 1+ \frac{2}{ \sqrt{(2ak+b)^2 -8a}} \right\}

が成り立ちますが、上式の右辺は k \to \infty のとき、 \frac{L}{2 \pi} に収束します。

積分挟み撃ちを適用して T_k を下からする

 同様にして、 T_k を下から評価します。

\begin{aligned}
 & \frac{L}{2\pi}\sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \frac{ d }{dy}f^{-1}( c_{k,m}) 
< & T_k  \\
 
\end{aligned}

ですが、不等式の左辺の和は

\begin{aligned}
& \sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \frac{ d}{dy}f^{-1} ( c_{k,m}) \\

& > \sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \frac{ d }{dy}f^{-1}(f(k)+m+\frac{\beta}{2 \pi}) \\ 

& > \sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \int_{f(k) + m+\frac{\beta}{2\pi}}^{f(k) + m+1+\frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\

& =  \int_{f(k) +1 + \frac{\beta}{2\pi}}^{f(k+1)+\frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\

& >  \int_{f(k) +2}^{f(k+1)} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\

& =  k+1 - f^{-1}(f(k)+2) \\
& = 1 + f^{-1}(f(k)) - f^{-1}(f(k)+2) 

\end{aligned}

が成り立ちますが、平均値の定理により、

f(k) < c_k < f(k) +2

を満たす c_k が存在して、

\begin{aligned}
& f^{-1}(f(k)) -f^{-1}(f(k)+2)  \\
= & - 2\frac{d}{dy}f^{-1}(c_k) \\
> & -2\frac{df^{-1}}{dy}(f(k))  \\
= & -\frac{2}{ \sqrt{D + 4af(k)}} \\

= & - \frac{2}{ \sqrt{(2ak+b)^2 }} \\
= & - \frac{2}{ 2ak+b}
\end{aligned}

が成り立ちます。

 よって

T_k >  \frac{L}{2\pi} \left \{ 1- \frac{2}{2ak+b} \right\}

が成り立ちますが、上式の右辺は k \to \infty のとき、 \frac{L}{2 \pi} に収束します。

 以上の考察により、

 \lim_{k \to \infty} T_k = \frac{L}{2\pi} 

が証明できました。

解法のポイント

積分挟み撃ちが強力な武器(Steve BuissinneによるPixabayからの画像)

 本問はまず、問題の定式化がポイントです。関数 f(x) の値が偏角になっているのでわかりにくいですが、 x k から k+1 まで変化するときに、点 P(x) が単位円周上を何周も回るということをイメージできれば、問題文の「互いに交わらない有限個の区間の和集合」というのがすんなり腑に落ちると思います。

 弧 C が第1象限と第4象限をまたがなければ、 0 \leqq \alpha < \beta \leqq 2 \pi となって、解答がもう少しすっきりしますが、またぐことを考慮すると、本稿のように少々煩雑になります。またぐ/またがない問題は、本問の本質に絡むものではないので、時間がなければ無視してしまっても、大きな減点にはならないかもしれません。

 本問のような関数値の和の問題は、その関数の積分が計算できるのなら、積分挟み撃ちが強力な武器になります。そのような問題に遭遇したら、まずは適用を検討してみましょう。

東大2001年

Posted by mine_kikaku