級数和の極限は東大でも積分挟み撃ち – 2001年東大 数学 後期 第3問
積分挟み撃ちを適用して T_k を上から評価する
f(k) + m +\frac{\alpha}{2\pi} < c_{k,m} < f(k) +m +\frac{\beta}{2\pi}
ですが \beta - \alpha < 2 \pi なので
m-1 + \frac{\beta}{2 \pi} < m + \frac{\alpha}{2 \pi}
です。したがって、
f(k) + m -1+\frac{\beta}{2\pi} < c_{k,m} < f(k) +m +\frac{\beta}{2\pi}
です。ところが、 \frac{d f^{-1}}{dy} (y) は単調減少関数なので、
\begin{aligned} & \frac{d}{dy} f^{-1}(f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi} ) \\ < & \frac{d}{dy}f^{-1}(c_{k,m}) \\ < & \frac{d}{dy}f^{-1}(f(k) +m-1 +\frac{\beta}{2 \pi} ) \end{aligned}
が成り立ちます。
同様に、
f(k) + m -1+\frac{\beta}{2\pi} < y < f(k) +m +\frac{\beta}{2\pi}
を満たすすべての y に対して、
\begin{aligned} & \frac{d}{dy} f^{-1}(f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi} ) \\ < & \frac{d}{dy}f^{-1}(y) \\ < & \frac{d}{dy}f^{-1}(f(k) +m-1 +\frac{\beta}{2 \pi} ) \end{aligned}
が成り立つので、積分挟み撃ちによって、
\begin{aligned} & \frac{d}{dy} f^{-1}(f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi} ) \\ < & \int_{f(k) + m-1+\frac{\beta}{2 \pi}}^{f(k) + m+\frac{\beta}{2 \pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ < & \frac{d}{dy}f^{-1}(f(k) +m-1 + \frac{\beta}{2 \pi} ) \end{aligned}
が成り立ちます。
これらの不等式を使って、 T_k を上から評価します。
\begin{aligned} T_k < & \frac{L}{2\pi}\sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \frac{ d }{dy}f^{-1}( c_{k,m}) \end{aligned}
ですが、不等式の右辺の和は
\begin{aligned} & \sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \frac{ d }{dy}f^{-1}( c_{k,m}) \\ & < \sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \frac{ d }{dy}f^{-1}(f(k)+m-1 + \frac{\beta}{2 \pi}) \\ & < \sum_{m=0}^{f(k+1)-f(k)} \int_{f(k) + m-2 + \frac{\beta}{2\pi}}^{f(k) + m-1+ \frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ & = \int_{f(k) -2+ \frac{\beta}{2\pi}}^{f(k+1)-1+\frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ & < \int_{f(k) -2}^{f(k+1)} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ & = f^{-1}(f(k+1)) -f^{-1}(f(k)-2) \\ & = k+1 - f^{-1}(f(k)-2) \\ & = 1 + f^{-1}(f(k)) - f^{-1}(f(k)-2) \end{aligned}
と評価できます。
ここで再び、平均値の定理を適用します。
f(k)-2 < c_k < f(k)
を満たす c_k が存在して、
\begin{aligned} & f^{-1}(f(k)) -f^{-1}(f(k)-2) \\ = & 2\frac{df^{-1}}{dy}(c_k) \\ < & 2\frac{d}{dy}f^{-1}(f(k)-2) \\ = & \frac{2}{ \sqrt{D + 4a(f(k)-2)}} \\ = & \frac{2}{ \sqrt{D + 4a(ak^2+bk +c-2)}} \\ = & \frac{2}{ \sqrt{(2ak+b)^2 -8a}} \\ \end{aligned}
が成り立ちます。
したがって
T_k < \frac{L}{2\pi} \left \{ 1+ \frac{2}{ \sqrt{(2ak+b)^2 -8a}} \right\}
が成り立ちますが、上式の右辺は k \to \infty のとき、 \frac{L}{2 \pi} に収束します。
積分挟み撃ちを適用して T_k を下からする
同様にして、 T_k を下から評価します。
\begin{aligned} & \frac{L}{2\pi}\sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \frac{ d }{dy}f^{-1}( c_{k,m}) < & T_k \\ \end{aligned}
ですが、不等式の左辺の和は
\begin{aligned} & \sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \frac{ d}{dy}f^{-1} ( c_{k,m}) \\ & > \sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \frac{ d }{dy}f^{-1}(f(k)+m+\frac{\beta}{2 \pi}) \\ & > \sum_{m=1}^{f(k+1)-f(k)-1} \int_{f(k) + m+\frac{\beta}{2\pi}}^{f(k) + m+1+\frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ & = \int_{f(k) +1 + \frac{\beta}{2\pi}}^{f(k+1)+\frac{\beta}{2\pi}} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ & > \int_{f(k) +2}^{f(k+1)} \frac{d}{dy}f^{-1}(y) dy\\ & = k+1 - f^{-1}(f(k)+2) \\ & = 1 + f^{-1}(f(k)) - f^{-1}(f(k)+2) \end{aligned}
が成り立ちますが、平均値の定理により、
f(k) < c_k < f(k) +2
を満たす c_k が存在して、
\begin{aligned} & f^{-1}(f(k)) -f^{-1}(f(k)+2) \\ = & - 2\frac{d}{dy}f^{-1}(c_k) \\ > & -2\frac{df^{-1}}{dy}(f(k)) \\ = & -\frac{2}{ \sqrt{D + 4af(k)}} \\ = & - \frac{2}{ \sqrt{(2ak+b)^2 }} \\ = & - \frac{2}{ 2ak+b} \end{aligned}
が成り立ちます。
よって
T_k > \frac{L}{2\pi} \left \{ 1- \frac{2}{2ak+b} \right\}
が成り立ちますが、上式の右辺は k \to \infty のとき、 \frac{L}{2 \pi} に収束します。
以上の考察により、
\lim_{k \to \infty} T_k = \frac{L}{2\pi}
が証明できました。
解法のポイント
本問はまず、問題の定式化がポイントです。関数 f(x) の値が偏角になっているのでわかりにくいですが、 x が k から k+1 まで変化するときに、点 P(x) が単位円周上を何周も回るということをイメージできれば、問題文の「互いに交わらない有限個の区間の和集合」というのがすんなり腑に落ちると思います。
弧 C が第1象限と第4象限をまたがなければ、 0 \leqq \alpha < \beta \leqq 2 \pi となって、解答がもう少しすっきりしますが、またぐことを考慮すると、本稿のように少々煩雑になります。またぐ/またがない問題は、本問の本質に絡むものではないので、時間がなければ無視してしまっても、大きな減点にはならないかもしれません。
本問のような関数値の和の問題は、その関数の積分が計算できるのなら、積分挟み撃ちが強力な武器になります。そのような問題に遭遇したら、まずは適用を検討してみましょう。