変数変換で根号退治 – 1995年東大 数学 第1問
1995年東大 数学 第1問 は、不等式に関する問題です。問題分は以下のとおりです。
任意の正の実数 x,y に対して \sqrt{x}+ \sqrt{y} \leqq k \sqrt{2x+y} が成立するような実数 k の最小値を求めよ。
代数の問題では一番嫌な、根号の和が現れています。このため、この手の問題では定番の、両辺を2乗して云々という手法が使えません。ここは思案のしどころです。
1995年東大 数学 第1問 の解法
k の符号に関する考察
問題文では、 k の符号について何も言及していませんが、式を満たす k があるとすれば k > 0 なので、以降、 k > 0 であるとして論を進めます。
変数変換で攻める
解答の方針として、両辺を \sqrt{2x +y} で割って微分と最大値の問題に帰着させるという方法もありそうですが、入試問題だし、もう少し楽に攻めたいところです。
そういうわけで、まずは根号をひとつ残らず駆逐してやることを目指します。
すると、
\begin{aligned} X & = \sqrt{x} \\ Y & = \sqrt{y} \end{aligned}
という変数変換が、自然に思いつけることと思います。このとき、すべての x,y > 0 に対して
\sqrt{x}+ \sqrt{y} \leqq k \sqrt{2x+y} \cdots (1)
が成り立つことと、すべての X,Y > 0 に対して
X+ Y \leqq k \sqrt{2X ^2 +Y^2} \cdots (2)
が成り立つことは、明らかに同値です。
式(2)の両辺を2乗すると
(X+ Y)^2 \leqq k^2 (2X ^2 +Y^2) \cdots (3)
を得ますが、明らかに式(2)と式(3)は同値です。
式(3)の両辺を Y2 で割ります。すると、
\left ( \frac{X}Y+ 1 \right)^2 \leqq k^2 \left \{2 \left ( \frac{X}{Y} \right) ^2 +1\right \}
を得ますが、ここで
t = \frac{X}Y
と変数変換します。このとき、すべての t > 0 に対して
(t+ 1)^2 \leqq k^2 (2t ^2 +1) \cdots (4)
が成り立つことと、すべての X,Y > 0 に対して式(3)が成り立つことは同値です。
したがって、すべての t > 0 に対して式(4)を満たす k の最小値が、求める値です。根号を完全に無くして、二次不等式に帰着させることが出来ました。
不等式を満たす k の範囲を求める
あとは式(4)を解くだけです。 2 k^2 -1 \ne 0 のとき、式(4)を
\begin{aligned} (2k^2-1) \left (t- \frac{1}{2k^2-1} \right ) ^2 - \frac{D'}{2k^2-1} \geqq 0 \\ \cdots(5) \end{aligned}
と変形します。ここに D' は判別式
\begin{aligned} D' & = 1 -(2k^2−1)(k^2−1) \\ & =-k^2(2k^2-3) \end{aligned}
です。
2 k^2 -1 > 0 のとき、 t > 0 の範囲における式(5)左辺の最小値は
- \frac{D'}{2k^2−1} =\frac{k^2(2k^2-3)}{2k^2−1}
なので、すべての t > 0 に対して式(5)が成り立つための必要十分条件は
2 k^2 - 3 \geqq 0
です。
2 k^2 -1 <0 のとき、t > 0 が十分に大きいと、式(5)の左辺は負の値になります。したがって、すべての t > 0 に対して(5)が成り立つ k は存在しません。
2 k^2 -1 =0 のとき、式(4)は
2t+\frac{1}2 \leqq 0
と変形できますが、これは t > 0 のとき成り立ちません。
ゆえにすべての t > 0 に対して式(4)が成り立つための必要十分条件は 2k^2 -3 \geqq 0 すなわち
k \geqq \frac{\sqrt{6}}{2}
であり、すべての x,y > 0 に対して式(1)が成り立つ時の k の最小値は
\frac{\sqrt{6}}{2}
です。