変数変換で根号退治 – 1995年東大 数学 第1問
目次
別解その2 – Cauchy-Schwarz の不等式を適用する
少々トリッキーですが、 Cauchy-Schwarz の不等式を適用するやり方も有ります。
Cauchy-Schwarz の不等式とは、2つのベクトル \vec{a} , \vec{b} に対し、
|( \vec{a},\vec{b} ) | \leqq \| \vec{a} \| \| \vec{b} \|
が成り立つというものですが、これは2つのベクトルのなす角度をθ と置くとき、内積の定義より
\cos \theta = \frac{(\vec{a},\vec{b})}{ \| \vec{a} \| \| \vec{b} \|}
であることから明らかです。
ここで、式(1)の左辺をベクトルの内積に見立てます。
\vec{a} = \begin{bmatrix} \sqrt{2x} \\ \sqrt{y} \end{bmatrix} , \vec{b} = \begin{bmatrix} \frac{1}{\sqrt{2}} \\ 1 \end{bmatrix}
と置くとき、
\begin{aligned} ( \vec{a}, \vec{b}) & = \sqrt{x} + \sqrt{y} \\ \| \vec{a} \| & = \frac{ \sqrt{6} }2 \\ \| \vec{b} \| & = \sqrt{2x + y } \end{aligned}
なので、 Cauchy-Schwarz の不等式より、
\sqrt{x}+ \sqrt{y} \leqq \frac{ \sqrt{6}}{2} \sqrt{2x +y}
が成り立ちます。
x= \frac{1}2, y =1
のとき等号が成り立つので、式(1)の k の最小値は
\frac{ \sqrt{6}} 2
であることが示せました。
解法のポイント
平方根の和というのは計算が面倒くさくなりがちですが、本稿で示したように、 \sqrt{x} それ自体を変数だと解釈することで、ぐっと楽になります。うまくすると二次不等式の問題に帰着できるので、似たような問題に遭遇した時には試してみてください。
Cauchy-Schwarz はかなりトリッキーですが、これが最もスマートな解法です。本稿のように内積の定義を持ちだせば、無証明で利用することが出来ます。このアプローチも覚えておくようにしてください。