ヒントを見逃したら二項係数の力ずく計算 – 2009年東大 数学 第1問

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2023年2月27日

余談:小問3で d_m = 2 になる必要十分条件

 小問3は dm が1または2であることを証明することがお題であって、どういうときに d_m = 1 になり、どういうときに d_m =2 になるのかはどうでもよいことですが、小問3の解法1を応用すると、その条件を明らかに出来ます。

  m = 2n と置くとき、 n が奇数なら、

_{2n} \mathrm{C}_2 = n(2n-1)

なので、 _{2n} \mathrm{C}_2 は奇数であり、したがって dm = 1 であることが直ちにわかります。

 では、 n が偶数なら dm = 2 になるのかと言うと、必ずしもそうではありません。

  m = 4 のとき、

\begin{aligned}
_4 \mathrm{C}_1 & = 4 \\

_4 \mathrm{C}_2 & = 6
\end{aligned}

  m = 8 のとき、

\begin{aligned}
_8 \mathrm{C}_1 & = 8 \\

_8 \mathrm{C}_2 & = 28 \\
_8 \mathrm{C}_3 & = 56 \\
_8 \mathrm{C}_4 & = 70 \\
\end{aligned}

で、いずれの場合も dm = 2 ですが、 m = 12 のとき、

\begin{aligned}
_{12} \mathrm{C}_1 & = 12 \\

_{12} \mathrm{C}_2 & = 66 \\
_{12} \mathrm{C}_3 & = 220 \\
_{12} \mathrm{C}_4 & = 465 \\
_{12} \mathrm{C}_5 & = 792 \\
\end{aligned}

で、 d12 = 1となります。

 どうも、 m が2のべき乗、すなわち m = 2^n (n \geqq 1) であることが、 dm = 2 であることの必要十分条件になりそうです。以下、それを証明します。

m が2のべき乗のとき

m = 2^n (n \geqq 1) と置きます。このとき、任意の 1 \leqq k \leqq 2^{n-1} に対し、 _{2^n} \mathrm{C}_k が2の倍数であることを示します。

\begin{aligned}

_{2^n} \mathrm{C} _{k} & =\frac{\prod\limits_{j=0}^{k -1} (2^n - j)}{\prod\limits_{j=0}^{k -1} (k - j)} \\
 & = \frac{\prod\limits_{j=0}^{k -1} (2^n - j)}{\prod\limits_{j=1}^{k}  j} \\
& = \frac{2^n \prod\limits_{j=1}^{k -1} (2^n - j)}{k \prod\limits_{j=1}^{k-1}  j} \\
 & = \frac{2^n}{k}\prod\limits_{j=1}^{k -1} \frac{2^n-j}{j}


\end{aligned}

 ここで j を以下のように 2 のべき乗表記します。

j= \sum_{l=0}^{n-1} a_{jl }2^l

ここに a_{ij} は0か1のいずれかです。

 また、 a _{j l_0} を、0でない a_{jl} のうち、最も若番のものとします。すなわち、

\begin{aligned}
a_{jl_0} & =1  \\
a_{jl}  &= 0(0 \leqq l < l_0)
\end{aligned}

です。

 このとき、

\begin {aligned}

 & \frac{2^n  -  j}{j} \\
= & \frac{2^n  -   \sum\limits_{l=0}^{n-1} a_{jl }2^l}{ \sum\limits_{l=0}^{n-1} a_{jl }2^l} \\
= & \frac{2^n  -   \sum\limits_{l=l_0}^{n-1} a_{jl }2^l}{ \sum\limits_{l=l_0}^{n-1} a_{jl }2^l} \\
= & \frac{2^{l_0} \left (2^{n - l_0}  -   \sum\limits_{l=l_0+1}^{n-1} a_{jl }2^{l - l_0}-1 \right )}{ 2^{l_0} \left (\sum\limits_{l=l_0+1}^{n-1} a_{jl }2^{l-l_0} +1 \right )} \\
= & \frac{2^{n - l_0}  -   \sum\limits_{l=l_0+1}^{n-1} a_{jl }2^{l - l_0}-1 }{ \sum\limits_{l=l_0+1}^{n-1} a_{jl }2^{l-l_0} +1 } \\

= & \frac{ 2 \left (2^{n - l_0 -1 }  -   \sum\limits_{l=l_0+1}^{n-1} a_{jl }2^{l - l_0 -1} \right )-1 }{ 2 \left (\sum\limits_{l=l_0+1}^{n-1} a_{jl }2^{l-l_0-1} \right ) +1 } 


\end{aligned}

であり、分母も分子も奇数です。

 また、 \frac{2^n}k については、 1 \leqq k \leqq 2^{n-1} であることから、k の2の次数は n-1 以下であり、約分すると分子の2が必ず残ります。

 したがって、任意の 1 \leqq k \leqq 2^{n-1} に対し、 _{2^n} \mathrm{C}_k が2の倍数であることが示せました。

m が2のべき乗でないとき

  の素因数分解を、

m= \prod_{i=1}^I p_i^{ \alpha_i}

と表記します。ここに I > 1、 p_i は n の素因数、 \alpha_i はその次数です。

 このとき、小問3の解法その1と同様にして、m のすべての素因数 piに対し、二項係数 _{m} \mathrm{C}_l, l=1,2, \cdots, m-1 の公約数でないことが示せます。したがって二項係数は互いに素であり、 dm = 1 です。これは m が偶数(すなわち piのいずれかが2に等しい)の場合も同様です。

 ゆえに、 dm = 2 である必要十分条件は、 m が2のべき乗であることが示せました。

東大2009年

Posted by mine_kikaku