曲線の媒介変数はいつも一つ! – 1992年東大 数学 第4問

1992年東大 数学 第4問 は、空間図形に関する問題です。問題文は以下のとおりです。
xyz空間において,x軸と平行な柱面
A= \{ (x,y,z)|y^2+z^2= 1,x,y,z は実数 \}
から,y軸と平行な柱面
B=\{(x,y,z)|x^2− \sqrt{3}xz +z^2= \displaystyle\frac{1}4,x,y,z は実数 \}
により囲まれる部分を切り抜いた残りの図形をCとする。図形Cの展開図をえがけ。ただし点(0, 1, 0)を通りx軸と平行な直線に沿ってCを切り開くものとする。
鉄パイプAを鉄パイプBで横方向からぶちぬき、鉄パイプAを軸方向に切り裂いたらどんな形になっていますか、といった内容の問題です。
よくこんな変な問題を思いつくものですが、柱面Bの断面がおそらく楕円だろうと予想はつくものの、3面図を書いてみる的な幾何学的アプローチでは難しそうです。ここは代数的手法で攻めることにします。
1992年東大 数学 第4問 の解法
柱面Bの断面形状に拘泥しない
柱面Bの断面の具体的な形が明らかになれば、それを柱面Aにプロットすればよいのではないか、と思ったりしますが、円柱面に何かをプロットするというのが結構難しいですし、柱面Bの具体的な方程式が与えられているので、ここは柱面Bの断面形状にこだわらず、代数的な手法によって、柱面Aと柱面Bの交線の式を具体的に求める、という方針で行くのが良さそうです。
3次元空間の曲線は1つの媒介変数で表される
3次元空間の直線は一般に、
\frac{x-a}{p} = \frac{y-b}{q} = \frac{z-c}{r}
といった式で表されますが、媒介変数 t を用いて
(pt+a,qt+b,rt+c)
と表すことも出来ます。
同じように、3次元空間の曲線も、媒介変数 t と t の連続関数 x(t),y(t) , z(t) が存在して、
(x(t), y(t), z(t) )
と表せます。要は、3次元空間の曲線とは、3次元空間 \mathbb{R}^3 に値を取る1変数の連続関数です。
柱面Aと柱面Bの交線の媒介変数を決める
3次元空間の曲線は媒介変数の連続関数として表現できるので、柱面Aと柱面Bの交線について、適当な媒介変数を決めて、それの具体的な関数として表現することを目指します。これができれば、求める展開図を描くことも可能でしょう。
その際、ヒントになるのが各柱面の方程式です。交線の各点は以下の連立方程式
\left \{ \\ \begin{aligned} & y^2+z^2= 1 \\ & x^2− \sqrt{3}xz +z^2= \frac{1}4 \end{aligned} \right.
の解なので、例えば z を媒介変数として扱い、 x,y を z の関数として表現しても良いのですが、それだと計算が面倒くさそうなので、別の媒介変数を探します。
ここで、 (y,z ) が yz平面の単位円周上に存在していることに着目します。これを極座標表示することで、
(y,z) = (\cos \theta,\sin \theta) \\ (0 \leqq \theta < 2 \pi)
と、 y,z が1つの変数 \theta の関数として表現できました。
あとは、 x を \theta の関数として具体的に表現できれば、交線の媒介変数表示が出来たことになります。
交線の具体的な式を求める
そこで、
x^2− \sqrt{3}xz +z^2= \frac{1}4
に z = \sin \theta を代入します。これを x について解くと、 x を \theta の関数として表現できたことになります。
ところが、解と係数の公式により、
\begin{aligned} x &= \frac{ \sqrt{3} \sin \theta \pm \sqrt{3 \sin^2 \theta -4(\sin^2 \theta - \frac{1}4)} }{2} \\ & = \frac{ \sqrt{3} \sin \theta \pm \sqrt{3 \sin^2 \theta -4\sin^2 \theta +1 } }{2} \\ & = \frac{ \sqrt{3} \sin \theta \pm \sqrt{1 - \sin^2 \theta } }{2} \\ & = \frac{\sqrt{3} \sin \theta \pm \cos \theta}{2} \\ & = \sin ( \theta \pm \frac{ \pi }6 ) \end{aligned}
と、思っていたよりずっとすっきりと表現できました。
よって交線の媒介変数表示は、
(x,y,z) = (\sin( \theta \pm \frac{ \pi}6), \cos \theta, \sin \theta) \\ ( 0 \leqq \theta < 2 \pi)
です。なお、 x の値が2つあるのは、柱面Bが筒状になっているからです。
展開図を描く
図形Cを点(0, 1, 0)を通りx軸と平行な直線に沿って切り開く、とあるので、横軸に \theta 、縦軸に x を取ると、要求通りに展開図を描くことが出来ます。
その座標医系で、柱面Aと柱面Bの交線は2つのサインカーブとして現れますが、それらに挟まれた領域が柱面Bの内側なので、求める図はサインカーブの外側、すなわち
\begin{aligned} x \leqq & \min( \sin(\theta+ \frac{\pi}6),\sin(\theta- \frac{\pi}6)) \text{ または} \\ & \max( \sin(\theta+ \frac{\pi}6),\sin(\theta- \frac{\pi}6)) \leqq x \end{aligned}
の範囲となります。