魔の絶対値地獄難問 – 1994年東大 数学 第6問
必要性の表明
必要条件「 d(O, P) = d(P, Q) となるような a ≧ 0 が存在するならば、 P は図6のエリアに存在する」の対偶は、「P は図6のエリアに存在しないならば、 d(O, P) = d(P, Q) となるような a ≧ 0 は存在しない」なので、これを証明します。
図6のエリア以外を以下の図8のように4つに分割します。
各エリアの定義は以下の通りです。
\begin{aligned} & \text{エリア➀} : \{(x,y) \in \mathbb{R}^2 | y < 0 \} \\ & \text{エリア②} : \{(x,y) \in \mathbb{R}^2 | x < 0 \text{かつ} 0 \leqq y <\frac{1}2 \} \\ & \text{エリア③} : \\ &\{(x,y) \in \mathbb{R}^2 | 0 \leqq x < \frac{1}2 \text{かつ} \\ & \text{ }0 \leqq y < \frac{x^2-x+1}2 \} \\ & \text{エリア④} : \{(x,y) \in \mathbb{R}^2 | \frac{1}{2} \leqq x \text{かつ} 0 \leqq y < \frac{3}8 \} \\ \end{aligned}
P ∈エリア①のとき
\begin{aligned} d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = |x| -y\\ d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) &= |x-a|+ a^2+1 -y \\ \end{aligned}
なので
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = |x-a| -|x|+ a^2+1 \\ \end{aligned}
であり、 x < 0 のとき任意の a ≧ 0 に対して
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = a-x+x+ a^2+1 \\ & = a^2+a+1 > 0 \end{aligned}
です。
一方 0 ≦ x のとき、 x < a である a に対して
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = a-x -x+ a^2+1 \\ & = a^2+a+1 -2x \\ & > a^2+a+1 -2a \\ & = a^2-a+1 > 0 \end{aligned}
a ≦ x である a に対して
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = x- a -x+ a^2+1 \\ & = a^2-a+1 > 0 \end{aligned}
であり、 d(O, P) = d(P, Q) となるような a ≧ 0 は存在しません。
P ∈エリア②のとき
\begin{aligned} d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = -x +y\\ d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) &= a-x+ a^2+1 -y \\ \end{aligned}
なので任意の a ≧ 0 に対して
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = a^2+a+1 -2y \\ &> a^2+a \geqq 0 \end{aligned}
であり、 d(O, P) = d(P, Q) となるような a ≧ 0 は存在しません。
P ∈エリア③のとき
\begin{aligned} d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = x +y\\ d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) &= |x-a|+ a^2+1 -y \\ \end{aligned}
なので
\begin{aligned} & d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) \\ & = |x-a| + a^2+1 -x -2y \\ \end{aligned}
であり、 x < a である a に対して
\begin{aligned} &d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) \\ & = a-x + a^2+1 -x -2y \\ & = a^2+a+1 -2x-2y \\ & > a^2+a+1 -2x -x^2+x-1 \\ & = a^2 - x^2 +a-x \\ & = (a-x)(a+x+1) >0 \end{aligned}
です。
また、 x ≧ a である a に対して
\begin{aligned} & d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) \\ & = x-a + a^2+1 -x -2y \\ & = a^2-a+1 -2y \\ & > a^2-a+1 -x^2+x-1 \\ & = a^2 - x^2 -a+x \\ & = (a-x)(a+x-1) \end{aligned}
ですが、 a \leqq x < \displaystyle\frac{1}2 なので a+x-1 < 0 であり、したがって
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) > 0 \end{aligned}
です。
P ∈エリア④のとき
\begin{aligned} d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = x +y\\ d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) &= |x-a|+ a^2+1 -y \\ \end{aligned}
なので
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & = |x-a| + a^2+1 -x -2y \\ & > |x-a| + a^2+\frac{1}4 -x \end{aligned}
であり、 x < a である a に対して
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & > a-x + a^2+\frac{1}4 -x \\ & = a^2 +a+\frac{1}4 -2x \\ & > a^2 +a+\frac{1}4 -2a \\ & = (a- \frac{1}2)^2 \geqq0 \end{aligned}
です。
また、 x ≧ a である a に対して
\begin{aligned} d( \mathrm{P} ,\mathrm{Q}) -d( \mathrm{O}, \mathrm{P} ) & > x -a + a^2+\frac{1}4 -x \\ & = a^2 -a+\frac{1}4 \\ & = (a- \frac{1}2)^2 \geqq0 \end{aligned}
です。
ゆえにP は図6のエリアに存在しないならば、 d(O, P) = d(P, Q) となるような a ≧ 0 は存在しないことが証明できました。
以上、問題文の条件 (*) が成り立つ必要十分条件は点 P が図6の領域に存在することであり、それを改めて描画すると図9のとおりです(境界含む)。