多項式の恒等的正負判定には平方完成! – 1994年東大 数学 第1問
1994年東大 数学 第1問は多項式の正負や解の個数に関する問題です。問題文は以下のとおりで、東大第2次試験問題からの引用です。
\begin{aligned} f(x) & = x^4 + x^3 +\frac{1}2 x^2 +\frac{1}6 x + \frac{1}{24 }\\ g(x) &= x^5 + x^4 +\frac{1}2 x^3 + \frac{1}6 x^2 + \frac{1}{24} x + \frac{1}{120} \end{aligned}
とする。このとき,以下のことが成り立つことを示せ。
(1) 任意の実数 x に対し,f(x) > 0 である。
(2) 方程式 g(x) = 0 はただひとつの実数解 α をもち,−1 < α < 0 となる。
次数が大きいですがセオリー通り導関数の挙動を見ることで答えを出せそうです。また、意味有りげな係数が何かの役に立つかもしれません。それでは見ていきましょう。なお、本稿の内容は東大が発表したものではありません。
1994年東大 数学 第1問 小問1の解法
ずっと正だというのを証明するので、微分する前にまず、平方完成で何とか出来ないか考えて見ましょう。その際、偶数次項と奇数次項を分けて
\begin{aligned} f(x) &= (x^4 + \frac{1}2 x^2+ \frac{1}{24 }) +( x^3+\frac{1}6 x ) \\ & = (x^2+ \frac{1}4) ^2- \frac{1}{16 } + \frac{1}{24 } +( x^3+\frac{1}6 x ) \\ &= (x^2+ \frac{1}4) ^2- \frac{1}{48 } +( x^3+\frac{1}6 x ) \\ \end{aligned}
などとやってしまうと、奇数次項の3次式の扱いに困ってしまうので、最初の3項を x2 でくくって
f(x) = x^2(x+a)^2 + (bx+c)^2 +d
みたいに変形できないか、考えてみます。
ところが
\begin{aligned} f(x) & = x^2(x^4 + x +\frac{1}2 ) +\frac{1}6 x + \frac{1}{24 } \\ &= x^2 \left \{ \left (x+\frac{1}2 \right)^2 + \frac{1}4 \right \} +\frac{1}6 x + \frac{1}{24 } \\ & = x^2 \left (x+\frac{1}2 \right)^2 + \frac{1}4 x^2 + \frac{1}6 x + \frac{1}{24 } \\ & = x^2 \left (x+\frac{1}2 \right)^2 + \frac{1}4 \left ( x+\frac{1}3 \right )^2 + \frac{1}{72} \end{aligned}
と、いい感じに平方完成できました!したがって任意の実数 x に対し,f(x) > 0 です。