多項式の恒等的正負判定には平方完成! – 1994年東大 数学 第1問

単純でかつすっきり!(BRRTによるPixabayからの画像)

小問2の別解

 赤本に載っていたのですが、小問1と同様平方完成でお手軽に解けます。

\begin{aligned}

g'(x)  &= 5x^4 + 4x^3 +\frac{3}2 x^2 + \frac{1}3 x + \frac{1}{24} \\
 & = 5x^2(x +\frac{2}5) ^2 -\frac{4}{5} x^2 + +\frac{3}2 x^2 + \frac{1}3 x + \frac{1}{24} \\ 
 & = 5x^2(x +\frac{2}5) ^2  +\frac{7}{10} x^2 + \frac{1}3 x + \frac{1}{24} \\ 
& = 5x^2(x +\frac{2}5) ^2  +\frac{7}{10} (x + \frac{5}{21})^2 + \frac{5}{504} > 0\\ 
\end{aligned}

なので、関数 g(x) は単調増加であり、かつ g(1) > 0 , g(-1) < 0 なので、 g(x) = 0 は -1 < x < 0 の範囲に唯一の実数解 α を持ちます。

うんちく – テイラー展開

  x = a を含む適当な開区間で無限回連続微分可能(何回でも微分できて、微分した結果がその区間で連続関数になっている)な関数 f(x) において無限級数

\sum_{n= 0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(a)}{ n!} (x-a)^n

f(x) に収束するとき、これを関数 f(x) のテイラー展開といいます。

 無限回微分できたからと言って必ずしもテイラー展開可能ではありませんが、おなじみの三角関数や指数関数、対数関数はテイラー展開可能です。

 指数関数 f(x) = exx = 0 におけるテイラー展開は、 f(n)(0) = 1 (n = 0,1,2,…) であることから

f(x) = e^x=  \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} x^n

ですが、これを知っていると本稿の h(x) を思いつけるでしょう。

 そうは言っても、学校で習いもしない知識が前提になっているのは、いかがなものかと思います。

解法のポイント

単純なやり方が最も楽ちん(Omar MedinaによるPixabayからの画像)

 小問1のように偶数次の多項式がずっと正であることを証明せよと言われたときは、まず平方完成できないか考えてみましょう。うまく行けば手間と時間を大きく節約できます。

 小問2も同じやり方で解けることに気が付かなかったのは筆者の不覚でしたが、小問1の結果を何とか適用してみようと変に気張らず、まずは虚心坦懐に平方完成を試してみましょう。

 小問2をオーソドックスに微分だけで解こうとするとドロドロになるので、本稿で示した

h(x) =  \sum_{n=0}^5 \frac{1}{n!} x^n

を適用してみようと思いつくことが非常に重要です。指数関数 ex のテイラー展開を知らずにこれを思いつくのはしんどそうなので、そういうものがあるということを頭の片隅に置いておいてください。

 また、 log(x+1) のテイラー展開

\log(x+1) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n} x^n

もよく見かけます。特に x = 1 を代入した

\log 2 = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n}

の右辺が収束することを知っておくと、何かと重宝です。問題を解くにあたって当たりをつけるのに役立つことでしょう。

東大1994年

Posted by mine_kikaku