東大、京大、東京科学大(理工、旧東工大)入試問題 解法のツボ

解法のツボです(Nick RitzによるPixabayからの画像)

2025年5月11日

各大学の特徴

 どの大学も難問を繰り出してきますが、ただ難しいだけではなく、大学ごとにはっきりした個性があるところが、面白いところです。

東大

 まずは東大です。東大の入試問題にはあまり奇をてらった設問は無く、威風堂々とした東の正横綱的風格があります。

 例えば、今なお難問の最高峰に君臨するキング オブ 難問 – 1998年東大 数学 後期 第3問です。手掛かりが全くないのでどう解けばよいのか全く分からないのですが、きちんとした論理構造があって、それに気が付けば思いのほか無理なく解けるようになっています。

 また、2のべき乗がいっぱい – 2020年東大 数学 第4問簡単そうで実は激ムズな3次関数問題 – 1990年東大 数学 第2問は多項式の解と係数の関係がベースの問題で、これも論理を丹念に積み上げていけば、解けるようになっています。

 整数分野も難問が目白押しですがそんなに奇をてらったところはなく、スダンダードな整数問題 – 2019年東大 数学 第1問などは標準的な手法である素因数分解と剰余類を駆使して解くことができます。

 東大は空間認識力を問う難問を繰り出してくることがあるので要注意です。その手の問題の代表格正八面体の断面に迫る – 1990年東大 数学 第3問は、図形を具体的にイメージできないと回答が厳しい難問です。八面体関連では続編のように正八面体リターンズ – 2008年東大 数学 第3問八面体 Strikes Back – 2019年東大 数学 第3問といった問題が出題されています。

 もちろん、東大の等面四面体 – 1993年東大 数学 第1問3次元空間の格子点 – 1998年東大 数学 第2問のような、オーソドックスに空間座標系を駆使する問題もあります。

 東大の問題は計算をたくさんさせることもありますが、比較的すっきりした切りのいい答えが出るようになっていて、泥沼感は少ないです。

京大

 京大の入試問題は、ワンアイデアでスマートに解けるものが多く、ひらめき重視の洗練されたイメージがあります。

 例えば、素数でアハ体験 – 2016年京大 数学 第2問は一見難解な設問ですが、ちょっとした気づきのツボを押さえれば、一気にサクッと解けます。計算量も少なく、爽快な気分が味わえます。素数問題で再びアハ体験 – 2018年京大 数学 第2問毎度おなじみ素数のべき乗問題 – 2021年京大 数学 第6問 小問1も同様の傾向の問題です。

 京大でも色々計算させる問題は出ますが、やはりそこはかとなくアカデミックな香りがします。例えば三角関数のn倍角にはド・モアブルと二項定理の奥義で立ち向かえ! – 2023年京大 数学 第6問です。三角関数n倍角問題にド・モアブルの定理と二項定理を適用すると、一見どろどろになりそうなところをスッキリまとめることができます。

 一方で、設問それ自体も短く簡潔で、垢抜けています。特にtan 1゜は有理数か? – 2006年京大 後期 数学 第6問は問題文が実にワンフレーズで、正にスタイリッシュ京大の真骨頂です。また、空間図形問題の等面四面体の問題 – 1999年京大 理系 後期 第4問も同様に問題文が短くて、かつそんなことが本当にあるのかよ的なツッコミを入れたくなる設問内容になっています。

 また、京大の過去問で忘れてはいけないのが、自分で得点を指定できる問題 – 1995年京大 後期 文系 数学 第4問です。入試問題なのに茶目っ気があるところが唯一無二の存在ですが、一見フレンドリーな問題文とは裏腹に、実際に解いてみると結構シニカルで冷徹なところがあります。しかしながら愚直に全パターン書き下せば解けるようにもなっていて、完全に突き放すだけではない親心も感じられます。

 全般にスタイリッシュでアカデミックな京大ですが、これが特色入試になると様相が一変し、高い難易度と怒涛の計算量で押しまくってきます。

 たとえば二項係数と剰余類の難問 – 2023年京大 特色入試 数学 第4問です。本問は京大の伝統に従って問題文だけは短く簡潔ですが、整数問題としては最高クラスの難易度と、回答に至るまでにものすごい量の論考が必要なため、とても時間内に回答できる気がしません。

 問題文がゴツくて理解に時間がかかるものもあります。たとえばド・モアブル大活躍 – 2016年京大 特色入試 数学 第1問です。本問は三角関数の計算がまた半端ではありません。

 これはもう、通常入試とは全く別の学校と捉えたほうが良いかもしれません。

東京科学大(理工、旧東工大)

 東工大と東京医科歯科大が合併して東京科学大が発足しましたが、入試問題は今の所、もとの大学ごとの別立てになっています。

 東京科学大(理工、旧東工大)の数学は他学問への応用を意識しているのか、計算量が多いという特徴があります。

 たとえば空間分割の無理ゲー問題 – 2019年東工大 数学 第4問です。本問は旧東工大史上最難問の呼び声も高く、計算力に加えて空間認識力も求められます。

 また、2011年東工大 数学 第4問 – Welcome to calculative jungle!確率漸化式の計算泥沼を泳ぎ切れ – 2017年東工大 数学 第4問、更には積分方程式の計算地獄問題 – 2019年東工大 数学 第2問なども、膨大な計算量のため「こりゃ無理ゲーってレベルじゃねえぞ」的な難問です。

 もちろん計算量だけと言うことはなく、論理的思考力も問われます。不定積分がわからないのに積分値の整数部分を出せ・・だと?! 2023年東工大 数学 第1問や、伝説の過去問整数値多項式を攻略する – 1993年東工大 数学 第4問などが該当します。

 かつてのAO入試問題にも論理的思考力を問う良問があります。伝説のプール問題 – 2007年東工大 数学 第1類AO型 第2問非線形関数方程式と多項式の難問 – 2011年東工大 AO 数学 Ⅱ-1あたりです。試験対策としてAO入試の過去問もさらっておくようにしましょう。

Posted by mine_kikaku