サイコロ確率のクセ強問題 – 1990年東大 数学 第6問

1990年東大 数学 第6問 はお馴染みの、サイコロの出目の確率に関する問題ですが、相当なクセ強問題です。問題文は以下のとおりです。
1つのサイコロを続けて投げて、最初の n 回に出た目の数をその順序のまま小数点以下に並べてできる実数を a_n とおく。たとえば、出た目の数が 5,2,6,…… であれば、 a_1 = 0.5,a_2 = 0.52,a_3 = 0.526, \cdots \cdots である。実数 αに対して a_n \leqq \alpha となる確率を pn(α) とおく。
(1) \displaystyle\lim_{n \to \infty } p_n \left ( \frac{41}{333} \right ) を求めよ。
(2) \displaystyle\lim_{n \to \infty } p_n ( \alpha ) = \frac{1}2 となるのは α がどのような範囲にあるときか。
サイコロを振って出た目で数を作り、その大小評価を確率で問うというのは、ありそうでなかった問題です。しかも、確率の極限を聞いてきています。
いささか面食らいますが、落ち着いて考えれば何とかなりそうな気もします。
- 1. 1990年東大 数学 第6問 小問1の解法
- 2. 1990年東大 数学 第6問 小問2の解法
- 3. 発展
- 3.1. [latex] \alpha \in \mathscr{D} [/latex] のときの[latex] \displaystyle\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) [/latex] の収束性
- 3.2. [latex] \alpha \in \mathscr{R} [/latex] のときの[latex] \displaystyle\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) [/latex] の収束性
- 3.3. [latex] \alpha \in \mathscr{D} [/latex] が循環小数の時の [latex] \displaystyle\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) [/latex]
- 3.4. [latex] \alpha \in \mathscr{D} [/latex] が無理数の時の [latex] \displaystyle\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) [/latex]
- 4. 解法のポイント
1990年東大 数学 第6問 小問1の解法
まず、 \alpha = \displaystyle\frac{41}{333} を小数表示します。 \displaystyle\frac{41}{333} = \displaystyle\frac{123}{999} なのでソッコーわかったりもしますが、普通に割り算しても大した手間ではありません。
\frac{41}{333} = 0. \dot{1}2 \dot{3}
と、 123 が繰り返す循環小数であることがわかりました。
次に、 p_n( \alpha ) を実際に計算して、傾向を掴みます。
α の小数第1位は1なので、 a_1 = 0.1 一択です。よって p_1( \alpha) = \displaystyle\frac{1}6 です。
α の小数第2位は2なので、 a_2 \leqq \alpha となる a_2 は
0.11
0.12
の2つです。よって p_2( \alpha) = \displaystyle\frac{1}6 \times \displaystyle\frac{1}3 = \frac{1}{18} です。
同様に α の小数第3位は3なので、 a_3 \leqq \alpha となる a_3 は
0.111
0.112
0.113
0.121
0.122
0.123
の6つです。よって p_3( \alpha) = \displaystyle\frac{1}6 \times \displaystyle\frac{1}3 \times \frac{1}2 = \frac{1}{36} です。
などと考えてしまいたくなりますが、ここに本問最大の罠が仕組まれています。
この考え方を押し進めていくと、
p_{3n}(\alpha) = \frac{1}{36^n}
となり、
\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) = 0
となるはずですが、小問2の存在を考えると、これは明らかにおかしい結果です。
何がまずかったかというと、小数第3位の考え方です。 a_3 はα以下ならどんな数字でもいいので、小数第2位の値が1なら、次の小数第3位は何でも良いはずです。これを考慮すると、
\begin{aligned} p_3( \alpha) = &(a_2=0.12 \text{である確率}) \\ & \times \left ( \begin{aligned} & \text{小数第3位が}1,2,3 \\& \text{のいずれかである確率} \end{aligned} \right )\\ & +(a_2=0.11\text{である確率} )\times 1 \\ = & \frac{1}{36} \times \frac{1}2 + \frac{1}{36} = \frac{1}{24} \end{aligned}
です。
ここで注目すべきは、小数第2位が1の場合、以降のすべての試行において何が出ても、 a_n < \alpha であることです。つまり、 n ≧ 3 であるすべての n に対し、
\begin{aligned} p_n(\alpha) > & \frac{1}{36} \times \overbrace{1\times1 \times \cdots \times 1 }^{ n-2 \text{個}} \\ = & \frac{1}{36} \end{aligned}
が成り立ちます。
同様のことは、小数第2位だけではなく、すべての桁において成り立ちます。すなわち、 α の小数第 k 位の値を \alpha_k と表記し、 p(事象) をその事象が発生する確率とするとき、
p_n( \alpha) > \sum_{k=1}^n p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & (k-1) \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\& k \text{桁目で初めて} \alpha_k \text{未満になる} \end{aligned} \right)
です。
一方、 a_n の各桁の値はすべて α と一致するか、どれかの桁が α と一致しないかのいずれかなので、
\begin{aligned} p_n( \alpha) = & p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & \text{すべて} \alpha \text{と一致する} \end{aligned} \right )\\ & + \sum_{k=1}^n p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & (k-1) \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\& k \text{桁目で初めて} \\ & \alpha_k \text{未満になる} \end{aligned} \right) \\ \end{aligned}
です。ここで明らかに、
\begin{aligned} & p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & \text{すべて} \alpha \text{と一致する} \end{aligned} \right ) = \frac{1}{6^n}\\ \end{aligned}
です。
あとは、 a_n の各桁の数字が k 桁目で初めて \alpha_k 未満になる確率を求めれば、 p_n(\alpha) を具体的に計算できます。
まず、 k = 3m+1 (m=0,1,2,…)の場合です。 \alpha_{3m+1} = 1 なので、 \alpha_k 未満の賽の目はありません。よって
\begin{aligned} p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & (k-1) \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\& k \text{桁目で初めて} \alpha_k \text{未満になる} \end{aligned} \right) = 0 \\ \end{aligned}
です。
次に、 k = 3m+2 (m=0,1,2,…)の場合です。 \alpha_{3m+2} = 2 なので、 \alpha_k 未満の賽の目は1のみです。よって
\begin{aligned} p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & (k-1) \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\& k \text{桁目で初めて} \alpha_k \text{未満になる} \end{aligned} \right) = \frac{1}{6^{3m+2}} \\ \end{aligned}
です。
最後に、 k = 3m+3 (m=0,1,2,…)の場合です。 \alpha_{3m} = 3 なので、 \alpha_k 未満の賽の目は1と2です。よって
\begin{aligned} p \left ( \begin{aligned} & a_n \text{の各桁の数字が} \\ & (k-1) \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\& k \text{桁目で初めて} \alpha_k \text{未満になる} \end{aligned} \right) = \frac{1}3 \cdot \frac{1}{6^{3m+2}} \\ \end{aligned}
です。
したがって、 l ≧ 1 のとき、
\begin{aligned} p_{3l}(\alpha) = & \frac{1}{216^l} + \sum_{m=0}^{l -1}(\frac{1}{6^{3m+2}} + \frac{1}3 \cdot \frac{1}{6^{3m+2}} ) \\ = & \frac{1}{216^l} +\frac{1}{27} \sum_{m=0}^{l -1} \frac{1}{216^m} \\ = & \frac{1}{216^l} +\frac{1}{27} (\frac{1-\frac{1}{216^l}}{1- \frac{1}{216}}) \\ = & \frac{1}{216^l} +\frac{8}{215}(1- \frac{1}{216^l}) \end{aligned}
が成り立つので、
\lim_{l \to \infty} p_{3l}( \alpha) = \frac{8}{215}
です。
n が3の倍数のとき、 \displaystyle\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) = \frac{8}{215} なので、すべての n について \displaystyle\lim_{n \to \infty} p_n( \alpha) = \frac{8}{215} だと言ってしまいたいですが、一般にそれは成り立たないので、最後にもうひと踏ん張りします。
p_1( \alpha) = \displaystyle\frac{1}6 ,p_2( \alpha) = \frac{1}{18} ,p_3 = \frac{1}{24} とだんだん減るので、一般に p_n( \alpha) > p_{n+1} ( \alpha) が成り立つかも知れません。そこでこれを確認します。
\begin{aligned} & p_n( \alpha) - p_{n+1}( \alpha) \\ = & \frac{1}{6^n} - \frac{1}{6^{n+1}} \\ & - p \left ( \begin{aligned} & a_{n+1} \text{の各桁の数字が} \\ & n \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\& n+1\text{桁目で初めて} \alpha_{n+1} \text{未満になる} \end{aligned} \right) \\ = & \frac{5}{6^{n+1}} \\ & - p \left ( \begin{aligned} & a_{n+1} \text{の各桁の数字が} \\ & n \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\ & n+1\text{桁目で初めて} \alpha_{n+1} \text{未満になる} \end{aligned} \right) \\ \end{aligned}
ですが、
\begin{aligned} &p \left ( \begin{aligned} & a_{n+1} \text{の各桁の数字が} \\ & n \text{桁まで} \alpha \text{と一致し} \\ & n+1\text{桁目で初めて} \alpha_{n+1} \text{未満になる} \end{aligned} \right) \\ = & \left \{ \begin{aligned} \\ & 0 ( n \equiv 1\mod 3) \\ & \frac{1}{6^{n+1}}(n \equiv 2 \mod 3) \\ & \frac{2}{6^{n+1}}(n \equiv 0 \mod 3) \\ \end{aligned} \right . \\ \end{aligned}
なので、すべての自然数 n に対し、
p_n(\alpha) > p_{n+1}( \alpha)
が成り立ちます。
よってすべての自然数 n に対し、
p_{3([\frac{n}3]+1)} ( \alpha) < p_n( \alpha) \leqq p_{3[\frac{n}3]} ( \alpha)
が成り立ちます。ここに [] はガウスの記号です。ところが明らかに
\lim_{n \to \infty}p_{3([\frac{n}3]+1)} ( \alpha) = \lim_{n \to \infty}p_{3[\frac{n}3]} ( \alpha) = \frac{8}{215}
が成り立つので、
\lim_{n \to \infty}p_{n} ( \alpha) = \frac{8}{215}
が成り立ちつことが証明できました。